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「水、食料どこにあるか」誤算続き 熊本激震…最前線ドキュメント

西日本新聞 4/17(月) 12:01配信

 昨年4月16日午前1時25分、最大震度7の「本震」が発生。被害は熊本県央・県南の全域に広がり、18万人が避難所に押し寄せた。県の備蓄は、前震対応でほぼ枯渇していた。「水、食料はどこにあるのか」。知事公室長の田嶋徹(60)は、市町村長からのSOS対応に忙殺された。

 知事の蒲島は政府に、被災地の要請を待たずに物資を送り込む「プッシュ型支援」を要請した。官房長官の菅義偉(68)は同日夜、記者会見で「非常災害対策本部に物資調達班を設置し、90万食を供給する準備を進めている」と述べた。

 実際は誤算続きだった。物資の集積拠点に想定していた益城町の大型展示場グランメッセ熊本が被災して使えなかった。国は急きょ、佐賀県鳥栖市の民間物流センターを集積拠点にした。農林水産省が食料を調達、民間業者が配送する手はずだったが、高速道や国道は寸断されていた。

 県が政府現地対策本部に物資が届く場所を尋ねても「業者に任せている」との回答しか得られなかった。しびれを切らした陸上自衛隊OBの県危機管理防災企画監、有浦隆(59)が依頼し、陸自の車両が鳥栖市に向かったが「内閣府の許可がなければ駄目だ」と引き渡しを拒まれる一幕もあった。

 17日夜、物資が被災各地の拠点に届き始めると、新たな障害が起こった。「ラストワンマイル」問題だ。せっかく届いた大量の物資が各地の集積拠点に滞留し、その先にある避難所に行き渡らなかった。

 市町村は避難所対応に人手を割かれ、荷受けや仕分けの人手が不足していた。田嶋は「混乱が収まるまで約1週間かかった」と振り返る。東日本大震災を機に制度化されたプッシュ型支援で、国は「市町村の拠点まで国の責任で運ぶ」と明言していたが、初の「実戦」は多くの課題を残した。

プッシュ型支援

 大規模災害で緊急を要する場合、被災地からの要請を待たずに必要な物資を送ること。2012年改正の災害対策基本法に明記され、熊本地震では昨年4月17日~5月6日に278万食(一部はプッシュ型以外も含む)を国が供給した。国は今年4月に改定した防災基本計画で、熊本地震の教訓を踏まえ「自治体、物流事業者などが物資の配送・到着状況を把握するため、情報共有できるシステムの整備に努める」とした。

 ※敬称略、肩書は当時、年齢は現在

=西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:4/17(月) 12:01

西日本新聞