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なぜコロワイドは「かっぱ寿司」を買ってしまったのか

ITmedia ビジネスオンライン 4/18(火) 7:10配信

 外食大手のコロワイドといえば、事実上の創業者の蔵人金男会長が2017年2月下旬に社内報で、「個人的に張り倒したい輩が何人もいる」「生殺与奪の権は、私が握っている」などと過激発言したことで「コロワイドはブラック企業か」と、ネットで大炎上する騒ぎが起こった。

【これまでのM&A・売上推移(出典:コロワイド公式サイト)】

 この社内報が発行される少し前、傘下の「かっぱ寿司」(カッパ・クリエイトが運営)が、17年3月期で59億円の大赤字を出すという決算予想を発表した。

 この結果、親会社のコロワイドも17年3月期の連結最終損益で19億6800万円の赤字を計上する見込みになった。蔵人会長はかっぱ寿司の予想外の大赤字に激怒、上述のような過激発言につながったようだ。蔵人会長はこの後、カッパ・クリエイトの四方田豊社長(当時)を就任からわずか8カ月で解任、新しく取締役の大野健一氏を社長に就けた。大野氏はコロワイド傘下のバンノウ水産社長を務めた鮮魚のプロだ。

 コロワイドがかっぱ寿司を買収してからまだ2年3カ月程度だが、蔵人会長はその間にカッパ・クリエイトの社長を3回も交代させている。それだけかっぱ寿司の再生に苦戦しているわけだが、これは異常事態である。このままかっぱ寿司の経営不振が続けば、コロワイドの屋台骨が揺るぎかねない状況だ。コロワイドはかっぱ寿司の再生で読み間違いか、大誤算を冒したようだ。

●M&A戦略による事業再生がコロワイドの成功モデル

 コロワイドはもともと甘味処(甘い味の菓子を出す飲食店)だった。蔵人会長が77年に居酒屋業界に進出し、手作り居酒屋「甘太郎」を開業。80年代からチェーン展開を本格化させた。もうけを新店舗に再投資、また出店する地域にセントラルキッチンを設置し、食材調達から食材加工、商品開発などを川上から川下まで一貫して行うマーチャンダイジング(MD)を志向した。

 コロワイドは99年に株式店頭公開(現ジャスダック)、00年に東証2部上場、02年に1部に昇格した。コロワイドが急成長のきっかけをつかむのは02年に、居酒屋「北海道」などを展開する平成フードサービスを買収し連結子会社化してからだ。この後、コロワイドはM&A戦略を駆使し、現在までに計17回の買収劇を実現してきた。コロワイドの歴史はM&A戦略と、連結子会社化、会社の商号変更の歴史だといっても過言ではない。コロワイドの成功はM&A戦略による企業再生のビジネスモデルを構築したところにある。

 現在、コロワイド傘下の主要事業会社はコロワイドMD、アトム、レインズインターナショナル、カッパ・クリエイトの4社である。ちなみに直営店舗数は1517店舗、FC店舗を含めた総店舗数は2740店舗を数える。売上高は2350億円(2017年3月期通期連結業績予想)で、外食企業の売上高ランキングでゼンショーホールディングス、すかいらーくに次ぎ、第3位に位置する。

 コロワイドの蔵人会長は時代の変化に敏感な経営者だ。5年頃から「祖業である居酒屋事業の将来は暗い」と非居酒屋事業にカジを切ってきた。12年に「牛角」などを展開するレインズインターナショナルを買収して、面目を一新した。この頃から都市部の同一エリア内の飲食ビルを一棟借りし、3~5業態を出店する「多業態ドミナント戦略」を展開、1カ所で顧客のさまざまなニーズに応える「総合外食産業」を打ち出した。

 さて、蔵人会長の最も優れた点は、M&A戦略で買収したチェーン本部とコロワイド本部との「一体化」を進めるのがうまかったことだ。コロワイドは買収した会社のチェーン本部を例外なく、本社が入居する横浜ランドマークタワーに集め、親会社、子会社また新卒、中途入社、学歴など差別なく大部屋で一緒に仕事をさせた。とにかく寄り合い所帯で、新卒、中途社員などさまざまな社風にもまれてきた人たちが一カ所に集まって仕事をする。

 コロワイドでは「実力主義」「信賞必罰」「被買収社員との差別なし」といった経営方針で経営の求心力は保った。蔵人会長は実績を上げれば被買収会社の社員でも出世させた。そのため30~40代で事業本部長や社長に就くケースもあって、人事は活性化していた。蔵人会長は「同じ釜の飯を食う仲間」としての意識を植え付けて、「全社員の一体化」を図ったことが企業再生の成功につながってきた。

●おごりと過信による失敗

 13年11月、3期連続赤字に陥ったかっぱ寿司は、回転寿司チェーン「元気寿司」が“救済合併”するような形で業務提携を結んだ。両社の筆頭株主に就いていたコメ卸最大手の神明(神戸市)の藤尾益雄社長がこの提携を推進した。

 だが、コロワイドの蔵人会長は神明が進める経営統合がうまく運ばないのを見て、かっぱ寿司の買収に乗り出した。

 「かっぱ寿司はコロワイドへの身売りが3回目。『安かろう、まずかろう』という悪いイメージが定着していて、買収するメリットよりリスクの方がはるかに大きい案件でした」(関係者)

 それほどひどい案件だったのに、コロワイドはレインズインターナショナルの「牛角」チェーンとのバランスで、回転寿司チェーンのかっぱ寿司を欲しがった。蔵人会長は「コロワイドの総合力を活用すれば、かっぱ寿司は1~2年で立て直しできる」と踏んでいた。これまでM&A戦略を10数回成功させてきたという自信が、「おごり」と「過信」を生んでいたようだ。コロワイドは14年10月、銀行から借り入れた300億円を投じ、社運をかけてかっぱ寿司を買収したのだ。

 回転寿司業界は「はま寿司」(ゼンショーホールディングス)、「スシロー」「くら寿司」の3強が角逐する修羅場だ。かつて業界トップだったこともあるかっぱ寿司だが、経営不振に陥る中、合理化ばかり進め原材料費を削ったため「安かろう、まずかろう」のイメージを定着させてしまった。

 コロワイドはかっぱ寿司再建のシナリオとして15年に既存の郊外型店舗とは全くコンセプトの異なる、回らない都市型新型店の第1号店「鮨ノ場」青山オーバルビル店(30席、120円~420円)を開業。表参道、浅草など都心部に出店した。タッチパネルで注文を受けてから職人が握り、2段の高速レーンを使って提供するシステムだ。

 かっぱ寿司再生のけん引車となると見られたが、逆に足を引っ張ることになった。寿司が出て来るまでに時間がかかり過ぎて、評判が悪かったからだ。

●コロワイドにとって正念場

 かっぱ寿司再生の切り札として、16年6月に社長に抜てきされた四方田氏は「安かろう、まずかろう」といった悪いイメージの払拭(ふっしょく)にとりかかった。しかし、うまくはいかなかった。

 「四方田社長はメイン銀行からメニュー、看板やロゴ、内外装などを刷新するように求められていたので、すぐに実施しました。かっぱ寿司の看板からカッパを封印、白い看板に赤と金の皿を重ねたシンプルなデザインにしたのです。『安っぽい』というイメージを払拭しようとしたのですが、これが逆効果。カッパの図柄は子供たちに大人気で、かっぱ寿司創業の地、長野県などでは総スカンを食い、コアなファンの客離れが起こりました。商品力を強化するのが先で、店舗刷新は後回しにすべきだったのではないか。人気だったカッパの図柄をもっと明るく楽しいものに変えるとか、もう少しロゴの変更を工夫できなかったのかと悔やまれます」(関係者)

 四方田氏は新生かっぱ寿司のテレビCMなども流し、販促をかけた。だが一朝一夕に客足は戻らなかった。かっぱ寿司は来客数の減少、商品廃棄ロスの増加、人件費の増加などに苦しんだ。新たに収益が低下した105店舗については、固定資産の減損損失として13億2200万円の特別損失を計上、結果的に59億円もの巨額赤字を出す見込みになった。

 社長を解任された四方田氏は00年レインズインターナショナル入社、同社のオーナー社長の西山知義氏(現ダイニングイノベーション社長)に信頼され、09年に専務に就任。12年に同社がコロワイドに売却された後も執行役員、コロワイド東日本(現コロワイドMD)社長を経て、16年6月にカッパ・クリエイトの再建を託されて社長に就任した。なお、四方田氏の解任に伴い、平林徹都市型事業本部長と相沢敏之営業本部長の取締役2人も2月28日付で退任。なお、「牛角」のFCオーナーによると、「3人ともダイニングイノベーションの西山社長に迎えられた」といわれる。

 かっぱ寿司は3代目社長の大野健一氏の下で、「かっぱの改新」を進めている。「商品力の強化」を前面に打ち出し、100円寿司にとどまらないグルメ志向の寿司を投入。「安かろう、まずかろう」のイメージを刷新しようとしている。

 コロワイドはこれまでM&A戦略による事業再生モデルで、大きく成功してきた。M&A戦略もチェーンストア理論と同じで、成功の連鎖が成長の原動力になるが、社運をかけたかっぱ寿司の再生ではまだ先行きが不透明である。ちなみにコロワイドの借入金は860億円、自己資本比率は16%と落ち込んでいる。

 コロワイドはここに来てかっぱ寿司という“お荷物企業”を抱えて苦戦が続く可能性が出てきた。ただし、17年2月のかっぱ寿司全店の売上高は、前年対比で100%を少し超えた。これが続くかどうか――。今期(18年3月期)も赤字を出すようだと、かっぱ寿司の4度目の売却が現実化するだろう。コロワイドにとって正念場である。


(中村芳平)

最終更新:4/18(火) 7:10

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