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安価な燃料電池へ前進、”世界最高”の水酸化物イオン伝導性ナノシート

スマートジャパン 4/18(火) 7:10配信

■「世界最高」の酸化物イオン伝導性

 クリーンなエネルギー変換技術として注目されている燃料電池。電解質として水素イオン伝導体(Nafionなど)を用いる方式が主流であるが、強酸性環境中での動作となるため、使える触媒が白金系金属に限定されるなどの制約がある。

【ナノシートのイオン伝導率と温湿度の関係性】

 水素イオンの代わりに水酸化物イオンを用いる方式も可能である。アルカリ性環境中での動作となり、遷移金属元素を触媒として使用できるため、コストを大幅に低減することが期待できる。しかし既存の水酸化物イオン伝導体は、水酸化物イオンの伝導率が10-3~10-2S/cmと低いことが大きな課題となっているという。

 実用化には、水素イオン伝導体に匹敵する10-1S/cm前後のイオン伝導率を持つ材料が求められる。物質・材料研究機構(NIMS)の馬仁志氏、佐々木高義氏らの研究グループは、層状復水酸化物ナノシートが10-1S/cmに達する高い酸化物イオン伝導性を示すことを発見した。無機アニオン伝導体の中で「世界最高」の数値であり、固体電解質としてアルカリ燃料電池や水電解装置など応用が期待できる。

 同研究グループは、層状復水酸化物を層1枚にまで剥離して得られる単層ナノシートに注目した。ナノシートは厚さが分子レベルだが、横方向にはその数百倍以上の拡がりを持つ2次元物質であり、大きな表面積を有する。そのためシート面上をイオンが高速で伝導する可能性が期待されていた。

 作製したナノシートをくし形微小電極に堆積させ、シート面内方向に沿ってイオン伝導特性を測定。抵抗値からイオン伝導率を求めたところ、ナノシートのイオン伝導率は温度と相対湿度の増大とともに増加し、80%RHと60℃の環境下でほぼ10-1S/cmに達した。実用化済みの燃料電池に用いられているNafionのプロトン伝導率に匹敵する。

 一方で剥離する前の層状複水酸化物板状結晶をくし形電極上に堆積し、その横方向に沿って測定された伝導率はナノシートより1~3桁小さいことから、剥離してナノシート化したことがイオン輸送特性の向上に大きく寄与していることは明らかである。またナノシートの厚み方向の伝導率は非常に低く、約10-6S/cm程度という。

 同研究グループは「シート横方向のイオン輸送は垂直方向よりはるかに早く、ナノシート独特の究極的2次元構造に起因していると考えられる」とコメントした。

■燃料電池、水電解装置の開発へ

 イオン伝導性の材料では、周囲の温度および湿度などによってイオンの移動速度が変化することが知られている。水酸化物イオン伝導性も下記の図から分かる通り、温度および湿度の影響を強く受けることが実証されている。活性化エネルギーは湿度の増加により減少し、水の存在が水酸化物イオン伝導を促進していることが分かる。

 ナノシートの場合、剥離により表面が最大限に露出していることにより、シート表面に水分を含ませて、豊富な面上イオン伝導チャンネルを提供すると考えられる。層が幾重にも積み重なった構造を有する層状復水酸化物と比べて、単層ナノシートの表面がより多くの水分を吸着し、水酸化物イオンが自由に動くことが可能となる。それに応じてイオン輸送特性が、著しく向上されることが考えられるという。

 「層状化合物を層1枚にまで剥離したナノシートにすることで、新奇な物理的および化学的特性をもたらす可能性をあらためて示す結果といえる」(同研究グループ)

 同研究グループは今後、ナノシートを固体電解質材料として効率的に電気を発生する燃料電池、水を電気分解する水電解装置の開発を重点的に行う予定とした。

最終更新:4/18(火) 7:10

スマートジャパン