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あなたの実家は貸せない&売れない!?アラサーのうちに考えておくべき不動産問題

4/18(火) 11:10配信

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今年のお正月、埼玉県の実家に帰省しました。私が高校1年生の頃に両親が新築で買った、郊外の分譲マンションも、もう築14年~15年が経ちます。聞けば、部屋の壁紙や畳などが老朽化してきたので、リフォームを検討しているとのこと。リビングのフローリングも、昨年リフォームをして新しくなっていました。

すでに実家を出て、別の賃貸マンションに暮らしている私。ふと思ったのが、「この実家、将来は誰が住むのかな?」ということ。今は両親も元気ですが、いつか親がいなくなった時、この家はどうなるんだろう?と、少しだけ不安に。

そこで、DAILY ANDS編集長のくすいともこさんと一緒に、『図解 実家の空き家問題をズバリ解決する本』(PHP研究所)を執筆された、不動産コンサルタントの牧野知弘さんを尋ねました。

■「実家の空き家問題」には、誰もが直面する

――なぜ今回、「実家の空き家問題」というテーマの本を出したのでしょうか?

実は最近、私の周りでも、親が亡くなったり高齢者施設に入ったりなど、実家の空き家問題に悩む人が増えています。「空き家」というとボロボロの朽ち果てた家を想像するかもしれませんが、実はそうではなく、自分たちが生まれ育った実家はいつか必ず空き家になります。私はよく講演依頼をいただきますが、講演のテーマが「実家の空き家問題」だと、すごく人が集まります。

でも、誰もが心の片隅で「親の家=実家」についてモヤモヤしつつ、いざ直面した時には、どうすればよいか分からない。また、その解決策や選択肢などについて詳しく書かれている本はこれまでになかったため、今回、実家の空き家問題が発生した時にどうすればよいか、具体的な行動や方法などについて書きました。

実家の空き家問題は、誰しもがいつか必ず考えなくてはいけないことです。空き家になった実家は、もれなく子どもに相続されてしまうのに、実家の空き家問題について無関心な人があまりにも多すぎると感じています。

■空き家になった実家を“放置”!?

――確かに、私もつい最近、はじめて自分の実家について考えました。昔は「家」というと、財産として価値が高いものだったようなイメージがあります。現代はどうなのでしょうか?

昔は、「不動産」すなわち実家の家は、親の死後に兄弟で骨肉の相続争いになるほど価値があるものでした。今はそうではないし、実家を高く売れる・貸せる、ということもありません。ですから、みんな「空き家になった実家はいらない」と言っています。とはいえ、空き家になった実家を放置していても、毎年支払わなければいけない固定資産税をはじめ、各種税金や維持費などがかかってしまいます。

また、現代は長寿社会ですから、例えば親が90歳くらいまで長生きをして亡くなった時、子どもも50代後半~60代で高齢に差しかかっていることが多いですよね。子ども自身も歳を取ったために、残された実家の家財道具の片付けなどが進まず、例えば、仏壇などもどう処理していいか分からない。その結果、実家を放置プレイ……というケースも珍しくありません(笑)。

■実家は「売れない」「貸せない」可能性も

――空き家になった実家を放置プレイ……正直、その気持ちは少しわかる気がします。牧野さんご自身のご実家は、どのような状況ですか?

私の実家は、神奈川県の港南台からバスで20分の場所にある、丘の上の住宅地です。両親は高齢で健在なのですが、親がいなくなった後の実家をどうするか、私も考えていました。

今年のお正月に実家へ帰省し、同じく帰省していた兄にそれとなく「この家って、将来は兄貴が相続するんだよね?」と聞いたところ、「俺はいらないよ。お前が住めばいいじゃん」と言われてしまいました(笑)。私も兄もすでに結婚していて持ち家もあり、将来自分たちの実家に住む予定はありません。

私の実家は駅から遠く不便な場所なので、売る・貸すということも、おそらくできないだろうと考えます。実家の近所にあった学校も統廃合し、スーパーなども潰れてしまいました。今は共働き世帯が主流ですから、私の実家のように、夫婦ともに通勤に時間がかかる場所にわざわざ住みたがる人はいないと思います。

私の知り合いの先輩にも、住宅地の戸建てに住んでいる人がいます。歳を取って子どもも独立したため、利便性のよいタワーマンションに夫婦で住み替えようと、自分たちの家を売りに出そうとしたところ、購入時は1億4000万~5000万円もした戸建てが、なんと3000万ほどの価値しかないと言われ愕然としたそうです。さらに、売りに出しても、1年間、問い合わせすらなかったそうです。結局、タワーマンションに住むことはあきらめ、元の家にずっと住みつづけざるを得ない……という状況です。

また、私の別の知り合いの女性も親の実家を相続し、400万~500万円ものお金をかけて実家を綺麗にリフォームして賃貸に出したのですが、全く借り手がついていない、というのが現状です。

■将来、実家の分譲マンションを相続すると?

――空き家になった実家の価値って、かなり低いんですね……。私を含め、DAILY ANDSの読者層である、アラサー世代の実家の傾向などはありますか?

おそらく、アラサー世代のみなさんの親御さんが家を買った頃は、「家を買って住む人の数」が、すごく多かったんですよね。とはいえ都心は高いですから、首都圏の郊外に家を買う人が多かった。戸建てだけでなく、分譲マンションを買った人もたくさんいらっしゃいます。

分譲マンションは、住みはじめてから最初の10年くらいはよいのですが、20年くらい経つと建物は老朽化してきますし、住人の価値観の違いや高齢化などから揉めごとが起きやすくなります。「共用施設は直さなくていい」「管理費を下げろ」などと言い出す人や、中には管理費を滞納する人も出てきます。

例えば、アラサー世代のみなさんが将来、実家の分譲マンションを引きついだとします。その頃にはすっかり建物も傷み、周りの住人はみな高齢で誰も買い手・借り手がつかない状況なのに、たとえ実家に住まなくても、管理費は毎月払わないといけない、という事態になりかねません。

――すでに価値のない空き家に、毎月の管理費を払い続ける……。ちょっと、自分の実家の将来が怖くなってきました。

■実家を売る時の秘策は「お隣さん」

――本の中で、空き家になった実家をどうするかの具体的な方法について、「売る」「貸す」「更地にして売るor貸す」「別荘にする」の、4つの選択肢が書かれていました。この中で、牧野さんがオススメなのはどの方法ですか?

まず、実家を買ってくれる人がいて売れるなら、それが一番いいと思います。今後の日本は人口減少、高齢化社会になっていくため、資産価値が下がるエリアが大半ですからね。

実家を売る時の秘策に「お隣さん」の存在があります。これは戸建ても、マンションも同じ。「高齢になってきたため、息子や娘夫婦と近居・同居がしたい」「家の庭を広くしたいから、隣の家の土地が欲しい」などというニーズは、実は多いです。実家を売る時には、まずお隣さんに声をかけてみるといいかもしれませんね。分譲マンションなら、同じ棟の人に声を掛けるのもアリです。

――お隣さんは盲点でした!確かに、ニーズはありそうです。他の選択肢はどうでしょうか?

賃貸は借り手はつくかもしれませんが、下手をすると、入居後2年で出ていかれてしまう可能性があることは、考慮しておいた方がよいと思います。

最も避けるべき選択肢は、売る・貸すあてがないのに更地にすることですね。家を更地にしてそのままにしていると、固定資産税の軽減措置がなくなるため、毎年支払う税金が家があった時の約6倍も上がってしまいます。

地方に実家がある場合は、空き家になった実家を別荘として持つケースも多いですね。ただし、固定資産税や維持費はかかるため、その費用負担をどうするかなどについて兄弟間で話し合うことは必要です。

私が今住む家は、神奈川県の鵠沼海岸のすぐ近くでサーファーなどが集まるような環境です。私がいなくなって空き家になったら、例えば海の家にしたりと、ヨットやサーフィンなどをやる自分の子どもたちに使ってもらってもいいかな、と思っています。

――本の中には、親が生きているうちに実家という財産を子どもに譲る「生前贈与」や、親が生きているうちに、実家の管理を子どもに任せる「家族信託」という選択肢もある、と書かれていました。こういう選択肢も、視野に入れておいた方がいいでしょうか?

贈与税などがかからない家族信託という選択肢も、いいと思います。ただし、家族信託をする場合は、家族全員の同意、信託業務ができることが必要などの手間はかかります。

生前贈与は、実家の固定資産税評価額が2500万円以下の場合、贈与税はかかりませんが、登録免許税や不動産所得税はかかります。また、家族全員の同意は必要ありません。

相続以外の方法を選ぶ際には、これらの注意点について、事前に知っておくとよいでしょう。

■親と1対1で会話すれば、親の考えがわかる

――実家をどうするかについて、親と話したことがまだありません。実家の空き家問題について、親が元気なうちに準備しておいた方がよいことなどはありますか?

親と「1対1」で話をしておくことをおすすめします。私自身も去年、母に誘われ、仙台の母の実家に行った際、初めて親子2人で旅行をしました。

夜に母と2人で食事をした際、「財産をどうしたいと思っているか」「今、父はこういう考えを持っている」など、母の思いを全部私に話してくれました。親の考えを知ることができる、とてもよい機会になりました。

実家への帰省などで家族全員が集まっても、そういう話をする機会はなかなかないでしょうから、「親との2人旅行」はおすすめですね。旅行が難しくても、例えば食事や買い物、ドライブなど、親と1対1で面と向かって話す機会を作るとよいと思います。親の考えがわかれば、心の準備もできますからね。

――親と1対1で話す。実家を離れると、意外とその機会はなくなりますよね。親が生きている間に、やっておいてもらった方がよいことはありますか?

いらない家財道具は、早めに処分してもらうとよいでしょう。また、実家の自治体のごみ出しについてなど、生活に関するルールを書いたものを残しておいてもらうと安心です。財産関係も、通帳や印鑑、必要書類などを整理しておいてもらうとよいと思います。元気なうちから「いざという時」のための準備を、前もってしてもらうのが望ましいでしょう。

■実家について、親や兄弟と話し合っておこう

――最後に、いつかは実家の空き家問題について対峙する、アラサー世代の読者にメッセージをお願いします!

今の時代は、兄弟姉妹全員が「将来、自分の実家には住みたくない」「相続したくない」と思っているのが現実です。みんな、「家はいらないから、現金で欲しい」という考えです。実の子ども全員が住みたくない家ということは、残念ながら、ほかの人も住みたくない家なのだということを知っておく必要があります。

さらに、自分たちの親が思っているほど、親が買った家の価値というのは高くはありません。実家を買ってくれる人がいるのならなるべく早めに売るべきだと私は思います。

例えばみなさんの親が、ファミリータイプの郊外の分譲マンションに住んでいて、子どもが独立して夫婦2人になったため、実家を手放して賃貸への住み替えなどを考えているなら、ぜひ薦めた方がよいと思いますね。特に、郊外の家の価値は下がりっぱなしですから、親にその気(実家を手放す気)があるなら、早い段階で売りに出すことをおすすめします。

――実家が老朽化する前に「買ってくれる人に売る」というのも、よい選択肢に思えてきました。

また、親が高齢者施設に移るときに実家を売って処分する、というのも、理想的だと思います。私の知り合いの女性のお母さんも、高齢者施設に移る時に実家を売り、家財道具もきれいさっぱり処分しました。子どもに迷惑もかからないですし、潔くていいですよね。

いずれにしても、親がまだ元気で頭がはっきりしているうちに、実家に対する親の意思を確認しておくのは大事なことです。ただ、実家について話し合う時期が早すぎても、親の意見が今後変わることもあるので、その点には注意しましょう。親だけでなく兄弟・姉妹間でも、自分たちの実家を将来どうするのか、話し合っておくとよいですね。

■「自分の実家は売れる」という発想は捨てよう

牧野さんのお話を聞いて、私たちが実家を相続する頃には、実家の価値は想像以上に下がっている可能性が高いということに、とても驚きました。

確かに、私の実家の分譲マンションも、あと20年、30年と経てば、建物の老朽化や住人の高齢化は避けられません。「実家は空き家になっても売れるはず」という発想は捨てた方がいいんだな……と、実感しました。

今すぐではないものの、いつかは必ず来る「実家の空き家問題」。私も近いうちに、実家について親と話す機会を持ってみようと思います!

■今回、お話を伺ったのは…

牧野 知弘(まきの・ともひろ)さん
不動産アドバイザー、オラガ総研代表。東京大経済学部卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、リノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事。06年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。主な著書に『空き家問題』(祥伝社新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)など。テレビ、新聞などメディア出演多数。

Y子
大学卒業後、出版社勤務等を経てフリーライターに。インタビューや取材、記事制作などを行う。20代の終わりが近づき、ただ漠然と貯金をすることに疑問を感じ「投資」に関心が出てきた。

(提供:DAILY ANDS)

最終更新:4/18(火) 11:10
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