ここから本文です

アジアV平野美宇も中国で覚醒 有望選手に海外修行の勧め

日刊ゲンダイDIGITAL 4/18(火) 9:26配信

 その瞬間、会場が静まり返った。

 女子卓球の平野美宇(17)は卓球のアジア選手権(中国・無錫)シングルス準々決勝で、世界ランク1位でリオ五輪個人・団体金の丁寧(26・中国)を破ると、準決勝では同2位、決勝も同5位の中国選手に3-0のストレート勝ちで優勝。日本勢としては、96年の小山ちれ以来、21年ぶりの頂点に立った。

 リオ五輪で補欠だった平野は、昨年10月のW杯(米国)を大会史上最年少となる16歳で制覇。同月には中国スーパーリーグに参戦し、中国全土を転戦。強豪相手に10戦して3勝を挙げた。平野はこの武者修行で、自分に何が足りないのかを知り、中国選手と生活することで手が届かないと思っていた強敵たちとの距離も縮まったという。

 平野が中学1年で入校したJOCエリートアカデミーは、将来、五輪などの国際大会で活躍できる選手を育成するために日本オリンピック委員会(JOC)が設置した組織だ。

 学校の部活や地域のクラブチームとは全く別の、「国営トレーニング場」での技術指導や栄養管理なども身になっているわけだが、2020年に東京五輪を開催するこの国では、現場では信じられない指導が今も行われているのだ。

 それだけではない。「国内スポーツを取り巻くおかしな環境もまだまだ改善されていない」と、スポーツライターの武田薫氏がこう指摘する。

「選手は近年、プロ化や国際的な動きに敏感です。一方、競技団体の幹部はそれがわかっていないし、わかっていても変化に対応できない。例えば、日本のテニス協会には、大ざっぱに学校派とクラブ派があり、代表の強化を巡って対立してきた。世界のプロツアーの現場を知らない学校派の者が協会の要職に就いている。低迷しているマラソンは、実業団の駅伝重視が常に問題視されながら何も変わっていない。国内のマラソン大会のバックには新聞やテレビがついているので、五輪の選考レースも大胆な改革ができない。実業団は選手の移籍にも縛りがあり、会社や指導者の嫌がらせに泣く選手もいるのです」

■学閥や指導者による嫌がらせも…

 実業団の陸上選手は、所属するチームの退部証明書が交付されなければ移籍できない。つまり、円満退部でなければ移籍先で実業団主催の大会に出場できない。この点について大学箱根駅伝で3連覇した青学大の原晋監督は、「職業選択の自由があるのだし、選手が指導者を選べない制度はおかしい」と改革を求めている。

 日本のスポーツは学閥や多々のしがらみがあり、指導者は、選手の個性を伸ばすより、短期的な視点による成績を重視する。それを知っている錦織の父親は、「学校の部活では個性を大事にしてくれるとは思えなかった」といって、息子を渡米させて大正解だった。もしも中学、高校と国内の学校で過ごしていれば、ここまでの選手になっていたか、大いに疑問が残る。

「今年の世界陸上(ロンドン・8月)の男女マラソン代表6人のうち、3人は、実業団駅伝を走らない選手です。実業団陸上のあり方を考えるいいきっかけにして欲しい。スポーツを利用してきた企業や学校は今こそ変わるべきです。プロ野球からメジャーへ移籍した野茂英雄が象徴的だが、結果を見て手のひらを返すマスコミも同じです。とはいっても、国内スポーツ界にはびこる悪しき慣習や制度、スポーツメーカーやマスコミとの関係も簡単には変えられない。日本は組織から飛び出す者に冷たい国ですが、一流を目指す選手はチャンスがあれば、どんどん海外に出ていけばいい。それが自分自身のためです」(前出の武田氏)

 1964年に東京五輪が開催されてから53年。この国はまだまだスポーツ後進国なのだ。

最終更新:4/18(火) 9:26

日刊ゲンダイDIGITAL