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<警察犬>不明の障害男性発見 夜の農道、自慢の鼻で 山形

毎日新聞 4/18(火) 10:33配信

 今月10日に山形県南陽市内で行方不明になった記憶障害の60代男性を発見した嘱託警察犬・アポロニア(シェパード、雌2歳)と指導手の白井実さん(66)=同県米沢市城南4=に17日、同県警南陽署から感謝状が贈られた。当時は夜間で、気温は5度前後とみられる。捜索は困難が予想されたが、アポロニアは白井さんと鍛えた自慢の嗅覚を生かし、寒さで凍える男性の居場所を迅速に突き止めた。

 「至急、出動願います」。10日午後7時40分ごろ、白井さんの自宅に南陽署から電話が入った。7年ほど前にくも膜下出血を患い記憶障害のある60代男性が、午後3時すぎに市内の実家を出たまま戻らない。同6時40分ごろに家族が近くの交番に届け出た。

 「さあ、仕事だ」。1人と1頭は男性が最後に目撃された現場に向かった。国道113号沿いの歩道で、午後5時ごろに男性が交通取り締まり中の署員に寺の行き方を尋ねていた。当時は行方不明の届け出がなく、受け答えもしっかりしていたことから見過ごされた。

 アポロニアは男性が使用した枕カバーの臭いをかぎ、午後8時半ごろには現場周辺の捜索を開始。周囲は田んぼで街灯がなく、「人の目では到底分からない。この子の鼻だけが頼り」(白井さん)。その35分後、開始地点の北約500メートルの農道で、地面の臭いをかいでいたアポロニアが突然顔を上げた。

 「近いぞ」。白井さんが目をこらすと、20メートル先の街灯下にかすかに人影が見えた。紺色のジャンパーに白いズボンの男性が歩いている。即座に駆け寄ると、男性は「探し出してくれたのか」と声を絞り出す。近くの寺へと散歩していたが道に迷ってしまったと、そこまでの経緯を語った。

 白井さんは自動車販売業などを営みながら、約10年も嘱託警察犬の育成に携わってきた。アポロニアは宮崎県国富町の警察犬訓練所で育てられ、16年6月に県警の嘱託犬に任命された。毎朝5時ごろから、臭いの付いた布や割り箸を探し出す地道な訓練を積んできた。

 行方不明者の発見は初めてで、白井さんは「甘えん坊だが、最後まであきらめない、しつこい性格が実を結んだ」と振り返り、同署の沼沢正樹署長は「周囲は田んぼで側溝に転落するなどの危険もあった」と称賛する。アポロニアには感謝状に加え、好物のジャーキー2袋も贈られた。【二村祐士朗】

最終更新:4/18(火) 10:33

毎日新聞