ここから本文です

「長時間労働の是正」で経済成長を 日本の労働生産性は低い

4/18(火) 18:06配信

ZUU online

OECD(経済協力開発機構)は4月13日、日本に対する「経済審査報告書」を公表した。その中では特に、長時間労働に対する是正が強く求められていた。日本は果たして変革できるのか、労働環境の改善についての提言を中心に見ていきたい。

■OECDの指摘事項 日本の4つの課題

「経済審査報告書」は、OECDが加盟国の現状について分析した結果をまとめたものだ。同報告書では、日本の経済成長率は高まったが、依然として多くの課題があると指摘している。

経済成長が高まった理由としては、雇用創出が挙げられている。一方、課題としては、①人口減少、②賃金格差の拡大、③生産性の低迷、④政府債務残高比率が高いことなどが挙げられている。

(1)人口減少
高齢化の進展で、日本の人口は2010年から2050年の間に 25%近く減少し、1億人を切ると予想されている。同時に、高齢者(65 歳以上)の比率は、2015年の約26%から、約40%に高まり、OECD諸国中最も高い水準となる見通しだ。有効求人倍率は1を超え、人手不足は深刻化していると指摘している。

(2)賃金格差の拡大
非正規雇用の増大によって賃金格差が拡大していると指摘している。非正規雇用者の割合は1994年では雇用者全体の20.3%だったものが、2016年には37.5%にまで上昇している。さらに、非正規雇用者は、雇用が不安定なため技能を修得しにくく、生産性を高められない原因になっていると分析している。

(3)生産性の低迷
日本は、パフォーマンスの悪い企業が市場にいつまでも居残り、生産性の悪い活動をしているため、生産性が低いと指摘している。また、起業家精神が弱く、免許制度・許可制度が複雑であるため起業の障害になっていることも生産性の低迷につながっていると分析している。

(4)政府債務残高比率が高い
2014年の消費税増税と歳出抑制によって2014年から2015年の基礎的財政赤字は縮小したものの、政府債務残高は、GDP(国内総生産)の216%(2015年)となっており、OECD加盟国の中で最悪になっている。現在の国債利回りは低いため問題は生じていないが、金利が上昇した場合には日本の財政についてリスクが顕在化すると指摘している。

■OECDからの提言「経済成長には長時間労働の是正」が必要

これらの課題を踏まえ、経済成長を続けるためには、長時間労働を是正し、ワークライフバランスを改善することが必要であるとしている。深刻な労働力不足が日本経済の重石なっており、正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差や長時間労働が女性などの雇用の障害になっていると見ている。

そのため、雇用環境を改善し、女性や高齢者の労働参加を促進すべきであるとの提言だ。また、海外の優秀な人材を獲得するためにも外国人材が活躍できる環境を整備すべきであるとしている。

(1)保育施設の充実
女性の雇用を確保するためには、保育施設の充実が欠かせない。ところが、日本の幼児教育・保育支出は、対GDP比0.5%と欧州に比べ低い。

主要な都市圏の子育て施設は不足しており、政府もこの問題について取り組んでいるが、依然として待機児童の解消には至っていない。公立保育で不足している分は、民間保育で補完されるべきであり、民間企業や非営利組織の参入を阻害する制度を緩和すべきであるとしている。また、保育士の資格保有者で働いていない人の職務復帰をさらに促進することで保育士不足に対処すべきであると提言している。

(2)税制・社会保障の変革
女性の雇用確保の障害になっているのが、税制や社会保障の制約である。103万円の壁があるため、パートタイムで働く要因を与えているとして税と社会保障制度を改革すべきであると提言している。

(3)長時間労働の是正
過去数十年間、正規雇用者の超過勤務時間数は上昇を続けており、企業経営者と労働組合が超過勤務時間を無制限と合意することも可能な仕組みになっている。

政府は、超過勤務時間の上限を定めるべきであると提言している。そうすることにより、女性の就労が容易になるだけでなく、出生率についても高まるとしている。そして、仕事文化、習慣を変えていくため、政府はよいお手本となるべきであるとも言っている。

(4)高齢者や外国人雇用の促進
高齢者雇用の問題に対しては、定年制度を廃止すべきとの提言がなされている。

年齢ではなく能力に基づく柔軟な雇用と賃金システムへの移行を奨励すべきであるとしている。また、外国人労働者数は、2013年の70万人から、2016年に初めて100万人を越えた。しかし、依然、外国人労働者は労働力人口の1.6%に過ぎず、OECD諸国で最も低い水準にとどまっている。

移民の受け入れは、税収や社会保障拠出を増やし、働いている人口割合を高め、技能の差異や特定のボトルネックを埋めてくれる可能性を持っている。

OECDの指摘や提言は、いずれも、もっともなことで、政府も長時間労働の上限を定めるなどの取り組みを始めている。しかし、最も大事なのは、個々人の意識変革であるように思う。本報告書でも「日本の労働生産性は低い」と指摘されているように、日本人は時間当たりの生産性をあまり意識していない。

期限内に仕事を終わらせるのがプロであるはずなのに、サラリーマンだけは定時に帰ることが評価されず、残業している人が一生懸命であるとして評価されてきた。この考え方を変えることができるかが、労働環境の変革ができるかどうかの鍵ではないだろうか。(ZUU online 編集部)

最終更新:4/18(火) 18:06
ZUU online