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久保裕也に見える変化と課題とは?ヘント移籍でスケールアップしたアタッカーとしての能力/コラム

GOAL 4/18(火) 19:11配信

スイスのヤングボーイズから今冬ベルギーの名門ヘントに移籍した久保裕也はデビュー戦から“4人抜きゴール”など7試合5得点をあげて日本代表に合流すると、最終予選でも大一番として注目されたアウェイのUAE戦で決勝点となるA代表初ゴールを決め、さらに今野の追加点をアシスト。ホームのタイ戦では1得点2アシストとMOM級の活躍を見せて一躍“ハリルジャパン”の新エースとして注目されるまでになった。

もっともベルギーでは上位6クラブによる優勝プレーオフこそが本当の勝負。久保はクラブ・ブルージュとの初戦に続き、アンデルレヒト戦でもゴールできなかったが、フル出場したシャルルロワ戦では彼が唯一あげたゴールが決勝点となった。ここまでヘントは2勝1分けで勝ち点を32に伸ばし(レギュラーシーズンの勝ち点を半分に割り、プレーオフの勝ち点を加算する計算方式)、2位に付けている。

クラブ史上最高額でヘントに加入した久保だが、さらなるゴールを積み重ねてヘントを2シーズンぶりのリーグ優勝に導けば、目標とする4大リーグ移籍に向け視界が広がる。日本代表の2試合とその後の3試合を振り返り、さらなるステップアップのための課題を考察する。

▽3月23日(木) アジア最終予選 UAE戦

試合結果:2-0(勝ち)

78分(途中交代)

評価:7.5

[4-3-3]の右サイドで先発した久保はスタートから積極的な飛び出しでUAEのディフェンスを突いた。前半14分のゴールは左SBの内側に生じたスペースを抜け出し、角度の無いところから狭いニアを破った。「誰もいなかったですし、意外と自分がフリーだったので、打とうと思いました」と振り返るシュートまでの流れはスタートから意識していた様だ。

後半7分のクロスからのアシストは吉田麻也のフィードを大迫勇也が久保サイドに落とす流れに見事に連動し、縦に仕掛ける素振りから切り返しでファーサイドに走り込む今野泰幸に合わせる見事な形だった。1点リードした状況で、前半の終わりから後半の立ち上がりにかけてUAEが攻勢を強めていた時間帯という意味でも貴重だ。

守備の局面で相手SBに背後を取られるシーンもあったが、アタッカーとしては十分に精力的なディフェンスを交代時間まで継続していた。交代の少し前から疲れも見られたが、チームの戦術的な要求に応えながら持ち味を発揮し、2つのゴールに絡むという文句が付けようのないパフォーマンスで重要な勝利を引き寄せた。




▽3月28日(火) アジア最終予選 タイ戦

試合結果:4-0(勝ち)

84分(途中交代)

評価:7.0

UAE戦に引き続くスタメン出場に2戦連発のゴールとクロスからの2つのゴールで応えた。タイの積極的なプレーによりスリリングな試合展開となったが、久保が右サイドでボールを持てば高い確率でチャンスになり、その中の3つがゴールに結び付いたことは特筆に値する。2つのアシストも同じクロスだが、前半8分のシーンはドリブルから、前半19分は鋭い飛び出しから上げる形で記録しており、チャンスメーカーとしての才能も見せ付けた形だ。

それでも圧巻だったのは後半12分のゴールで、スローインの流れからタイミングよく酒井宏のパスを引き出し、インに入り込みながら正確な左足のシュートをゴール右隅に決めた。この日も途中交代だったが、終盤に3枚目のカードで下がる形であり、久保本人にも余裕が感じられた。最終予選では力が最も落ちると見られたタイとのホームゲームながら、2試合にして代表の主力に躍り出たことを印象付ける試合だった。




▽4月2日(日) ジュピラーリーグ・優勝プレーオフ クラブ・ブルージュ戦

試合結果:2-1(勝ち)

71分(途中交代)

評価:5.5

タイ戦から長距離移動を挟んで中4日でプレーオフの初戦を迎えたこともあってか、[4-2-3-1]のトップ下に配置された久保は相手の厳しいマークにあい、全体的なプレーに精彩を欠いた。相手が中盤にタイトな守備を敷いたこともあるが、動きが味方のボール保持者と合わず、前を向いてドリブルを仕掛けるシーンが限られた。チームは鮮やかなカウンターから逆転に成功し、最後は10人でブルージュの猛攻をしのいで勝利を掴んだが、久保個人は内容も結果も物足りなさの残る試合だった。




▽4月9日(日) ジュピラーリーグ・優勝プレーオフ アンデルレヒト戦

試合結果:0-0(引分け)

85分(途中交代)

評価:6.5

ブルージュ戦に続きトップ下で先発した久保は相手の守備的MFレアンデル・デンドンカーにほぼマンマークされる形となった。それでも鋭い動き出しで高い位置に起点を作ると、後半には2シャドー気味のポジションから飛び出してクロスにボレーで合わせるなど、前半よりゴールに迫った。55分には左サイドから得意のドリブル突破でミドルシュートに持ち込むが、相手DFのブロックに阻まれた。

最も惜しかったシーンは70分。後方からのパスをペナルティエリア内で受け、相手DFのタイミングを外してゴールを狙ったが、惜しくも枠を捉えることができなかった。両チームが手堅く試合を進め、全体的には膠着した試合展開の中で久保は最も存在感を見せた。ゴールという結果でチームを勝利に導くことはできなかったが、敵も味方も認めるヘントの中心選手であることを示す内容だったことは確かだ。

▽4月17日(月) ジュピラーリーグ・優勝プレーオフ シャルルロワ戦

試合結果:1-0(勝ち)

90分(フル出場)

評価:7.0

敵地でシャルルロワの5バックに苦しんだヘントだが[4-2-3-1]のトップ下に入った久保がこう着状態を打開する圧巻の個人技で、唯一のゴールをこじ開けた。FWカリファ・クリバリが競り落としたボールを拾った久保は強引に仕掛けてペナルティエリア内に侵入すると、厳しい角度からGKとポストのわずかな隙間を突き破るシュートを決めた。

後半には4バックにして攻撃を立て直したシャルルロワの反撃を受けたが、久保を起点としたカウンターを繰り出しながら時間を消費させたヘントがそのまま勝利。守備陣の奮闘も目立ったが、前半のゴールと攻守のハードワークで貴重な勝ち点3をもたらした久保は文句無しのMOMと言っていいだろう。

■今後の課題




「そういうのをもっと磨けると思うし、やっていきたいですけどね。チーム帰って」と久保が答えたのはタイ戦後に個人技での打開について聞かれた時だ。ゴール数に関しては「取れるだけ取りたい」と慎重に語ったが、形については強いこだわりを持って臨んでいることを強く感じさせた。

ヤングボーイズではタイミングよくディフェンスラインの裏に飛び出して1タッチないし2タッチで決めるシーンが多かった。もちろん、そうしたプレーも状況に応じてトライするが、ボールを持って仕掛けるシーンを増やすことで周囲の選手は久保にボールを預けようとする。裏だけだと、はまった時はいいが、ボールに絡むシーンは限られてしまう。ヤングボーイズとヘントの攻撃スタイルの違いもあるが、新しい環境で新たなことにチャレンジすることで、アタッカーとしてのスケールがアップしている。

もともと右足でも左足でも力強く正確なシュートを打てることが持ち味で、彼が前を向いてボールを持つと相手DFは的を絞りにくかった。現在はそこに思い切りの良さと少々の当たりでは倒れない強さが加わり、危険性はさらに高まった感がある。クラブでは主にトップ下を担う久保に対し、対戦相手は明らかに“久保対策”でマークを強めているが、それもさらなるスケールアップのための良い意味での試練になっている様だ。

個の仕掛けについてはさらに研ぎ澄ませて伸ばしていくはず。強いて他の課題をあげるなら、マークを背負ったところでシンプルに味方を使い、そこから高い位置でボールを受ける流れを作ること、あとは個の仕掛けと飛び出しの使い分け、そしてゴール前での狭いエリアでの精度などはよりハイレベルなステージに向けてレベルアップしていく必要がある。

ただし、現在の久保にとって何より大事なのはトップリーグで初のタイトル獲得を経験することだ。ヤングボーイズ時代は惜しくも手の届かなかったタイトルに自らのゴールで導く。その経験と自信こそが代表でもクラブレベルでのステップアップに向けても大きな財産となるはずだ。

文=河治良幸

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最終更新:4/18(火) 19:11

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