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環境発電で長距離通信可能なセンサーシステム

EE Times Japan 4/18(火) 18:10配信

■NTT東日本経由で商用化

 IoTが徐々に普及する中、工場やビル、家などの屋内ではセンサーの活用が進んでいる。それに比べると、屋外でのセンサーの利用は防水防じんの他、電源確保の難しさや通信距離などの問題があって、あまり広まっていない。だが、インフラ設備のスマート化、災害の事前通知、農作物の最適栽培など、屋外でセンサーが活躍する余地はいくらでもある。

 EnOceanが環境モニタリング用のエネルギーハーべスティング長距離無線通信センサーソリューションを開発したのには、そのような背景がある。EnOceanはNTT東日本とともに2013年から同ソリューションの技術評価試験を重ねてきたが、このたび商用化に踏み切った。EnOceanが基幹部品を供給し、同社とパートナーシップを組むサイミックスが筐体を組み立て、NTT東日本がユーザーに提供する。

 エネルギーハーべスティング長距離無線通信センサーソリューションは、送信モジュール「EMOS 100 L」と受信モジュール「EMOT 100 L」、各種センサーで構成される。送信モジュールと受信モジュール間は、EnOceanの925MHz無線を使用する。太陽光や温度差から電力を確保できるため、長期間メンテナンスフリーで動作可能なスマートシティー、スマート農業アプリケーションの開発に道を開く可能性を秘めている。

■太陽光なしでも約1カ月動作

 送信モジュールであるEMOS 100 Lの主な動力源は今のところ、内蔵のソーラーパネル経由で取得する太陽エネルギーだ。このデバイスは、1日に最低6時間1000ルクス以上の明るさがあれば動作し続けられるため、太陽光を浴びられる場所であればどこにでも設置できる。また、1回電力供給を受ければ3~4週間は動作できるため、太陽光がない場所でも用途によっては活用することが可能だ。

 将来的には、太陽光による充電だけでなく、温度差を活用した充電にも対応する。例えば、熱をためやすいというコンクリートの性質を利用し、周囲との温度差をもとに電力を生み出す。この技術自体は既に2013年に確立しており、現在は実用化に向かっている段階である。

■最大通信距離7km超え

 長距離無線通信の評価試験は、2013年11月に日本国内で実施した。発信地に選んだ場所は、千葉県流山市にある常磐自動車道流山インターチェンジ付近。多少の障害物はあるが、比較的見通しの良いところだ。同地からどこまで届くか試した結果、モノポールアンテナ使用時の通信距離は約3~4km、パネル型の指向性アンテナ使用時の通信距離は7km以上ということが明らかになった。

 もちろん、通信経路にビルや山などの障害物があると通信距離は短くなる。同じ2013年11月に、企業や商業ビルなどが多い東京都の日比谷で試験したところ、円形状に安定して通信できたのは500m程度だった。しかし、これはモノポールアンテナ使用時の通信距離だ。同試験において、指向性アンテナを使用した場合、1km以上の通信距離を確保できることが確認されている。

■最低でも10年の動作

 送信モジュールのEMOS 100 Lと受信モジュールのEMOT 100 Lは、アルミニウムのダイカストによる堅固なハウジングで保護されている。そのため、厳しい天候の影響を受けることなどなく、屋外で10年以上は故障せずに動作できるそうだ。センサーなどを接続するコネクターが3カ所あるが、いずれも気密性は高い。また、エアベントが付いており、ハウジングの中と外で圧力差が生じたとき、水分の侵入を防ぐ。

 現時点で供給中のセンサーは、温湿度センサー、照度センサー、土壌湿度センサー、穀温計、人感(害獣)センサー、超音波センサー(最大到達距離7.5m、精度1cm)など。今後、ミリ波センサー(最大到達距離40m)、二酸化炭素センサー、水圧センサー、磁気センサー、傾斜センサーなどの提供も開始する予定だ。これら対応予定のセンサーを送信モジュールに接続する場合も、フォームウェアをアップデートする必要はない。

 EnOceanが提供するセンサーソリューションは、1km以上の長距離通信、電源ケーブルや電池なしでの電力の確保、天候の影響を受けない堅固さなど、屋外でのセンシングに必要な要件をそろえている。応用の仕方次第で、農業、水位レベル、構造体監視の他、駐車、セキュリティ、自動販売機、メーター監視などのさまざまなスマートアプリケーションの開発につながることが期待できる。

最終更新:4/18(火) 18:10

EE Times Japan