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【インタビュー】三菱自動車の新型コンパクトSUV「エクリプス クロス」開発責任者の山内裕司氏に聞く

Impress Watch 4/18(火) 16:41配信

 三菱自動車工業は、4月15日~16日に東京 お台場で開催された「モータスポーツジャパン2017フェスティバル イン お台場」において、3月のジュネーブショーで世界初公開したばかりの新型コンパクトSUV「エクリプス クロス」(海外仕様)を日本初公開した。

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 エクリプス クロスは、スタイリッシュなクーペフォルムとダイナミックなSUVのデザインを融合させた同社の世界戦略車で、今秋から欧州で出荷を開始。その後日本、北米、豪州、その他地域への展開を予定している。

 シャシーは「アウトランダー」と共用で、ホイールベースは2670mm。ボディサイズはオーバーハングを削ることで現行アウトランダー PHEVよりも290mm短く、5mm広く、25mm低い4405×1805×1685mm(全長×全幅×全高)とした。

 エクステリアでは近年同社が推し進めるフロントデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を採用するとともに、ベルトラインやボディサイドの強いキャラクターラインによるウェッジシェイプ(前傾姿勢)、前傾したリアウィンドウ、テールゲートを直線的に落とし込みオーバーハングを切り詰めたリアエンド、アスリートが持つ力強さをイメージしたという大きく張り出した前後フェンダー、高い位置に配したワイドなテールランプと前傾したリアウィンドウを上下に2分することで立体的で個性的なデザインにしたリアまわりなどが、デザイン上のポイントになっている。

 パワートレーンについては、新開発の1.5リッター直噴ターボと8速スポーツモード付CVTの組み合わせと、専用開発の2.2リッターディーゼルターボと新開発の8速ATの組み合わせを設定。いずれも走行状況や路面状態により後輪へ伝達するトルクを常に適切に配分する電子制御4WDを組み合わせるとともに、AYC(Active Yaw Control)ブレーキ制御を追加した車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」を採用することで走破性を高めている。

 また、インテリアでは水平基調のインストルメントパネルと立体的なシルバー加飾によってスポーティさと上質な室内空間を両立させるとともに、薄型のスマートフォン連携ディスプレイオーディオやヘッドアップディスプレイなどを搭載。「Apple CarPlay」「Android Auto」に対応し、ラジオなどのオーディオ機能操作や「Apple CarPlay」の操作に対応するタッチパッドコントローラーを備えている。

 そうした特徴を持つエクリプス クロスについて、開発主査を務めるプログラム・ダイレクター(C&D-seg)工学博士の山内裕司氏にインタビューする機会を得たので、その模様をお伝えする。

――クーペライクなSUVということで車名に「エクリプス」が入ったと思いますが、採用された理由を教えてください。

山内氏:やはりクーペライクなSUV、我々は“クーペSUV”と呼んでいますが、そのなかで我々が昔アメリカで使っていた名前を使うのが一番しっくりくるのかなと思いました。ただ、名前を決めるのはかなり苦労しました。社内でも色々な意見がありましたので。

――いろいろな地域で販売されるかと思いますが、各地の販売時期についてと、生産拠点について教えてください。

山内氏:生産の基本的なメインは日本(岡崎製作所)です。日本で生産したものを全世界に出したいと思っています。販売のタイミングですが、まずは欧州向けが先頭で今年の後半ぐらいを考えています。日本は2018年のはやい時期です。今年の東京モーターショーで右ハンドル仕様をお見せできるかと思っています。

――日本ではSUVが人気で、このクラスに参入するにはやや出遅れ感がありますが、どのあたりの層を狙ってどのくらいのボリュームを獲得する予定ですか? また、他社のSUVとは「ここが違う」という点を教えてください。

山内氏:日本でのターゲット層は、具体的に言うと子育てが済んだ40代後半から50代の夫婦です。子育ての時代はミニバンなどを使って自分たちのお金を子供たちに費やしてきた。だけど自分たちを自己表現するにはやはり我慢してきたところがあるはずなので、それをいっきに開放してあげてこのクルマとともに第2の人生を楽しめるような人、人とはちょっと違うこだわりを持った人がターゲットです。最近こだわりを持った人がだんだん増えてきているのかなと思っていまして、やはりそういうニーズのお客様に応えていきたいと。とはいえ、アンケート調査などを行なっていると意外と30代の若いカップルなどにもエクリプス クロスは受けがいいので、そういう層にアプローチできるプロモーションができたらと思っています。台数的な規模は現時点で言いづらいですが、国内に関してはもう少し見極める必要があります。

 我々三菱自動車は、何かこだわりの持ったクルマを提供したいという思いがあり、エクリプス クロスは「ただあればいい」「ただのゲタでいい」ではないクルマだと思っています。

 一番のセールスポイントは、やはりデザインですね。見ていただいて、乗っていただいてだんだんご理解いただきたいと思いますが、ここまでデザインにこだわって割り切ってやってきたクルマはほかにはないかなと。

――エクリプス クロスで一番見てほしいポイントを教えてください。

山内氏:やはりデザインですね。このクルマが新しい三菱自動車のデザインの方向性を示すキープロダクトだと思っています。サイドのキャラクターラインのように彫刻のように彫の深いダイナミクスなどは、今後の我々のデザインのなかの1つのコアとして示しています。

――エクリプス クロスはこのデザインありきで開発されたのでしょうか?

山内氏:とにかくデザインにはこだわりました。デザインを優先するためにほかで頑張れというか。例えばリアまわりでは、ドアのパーテーションラインを後ろにどこまでもっていったら斜め後方視界がよくなるかとか、リアまわりではダブルガラスを使用していますが、中央(一直線に発光するチューブ式LEDテールランプと中央のハイマウントストップランプの部分)をどうしたら薄くできるかなど、とにかくこのデザインを実現するためにエンジニアは苦労したと思います。三菱車でここまでデザインにこだわったのはないのではないかと(笑)。

 SUVでありながらデザインにこだわってクーペタイプにしたい。そうするとSUVでありながら荷室が少々狭くなるし、後席も狭くなりがちになる。そうしたこともあり、このクルマでは後席にスライド機構を備え、荷室を広く使いたい人はリアシートを前に持っていけるといった工夫を盛り込んでいます。とにかくこのデザインを実現するために徹底的に考えました。

――設計的に苦労した点はどこでしょう?

山内氏:一番苦労したのは後方視界とこのデザインの両立です。インテリアではコクピットでややタイトさを感じるかもしれませんが、包まれ感があるというか、お客様に乗っていただいた瞬間にワクワクしていただき、“早く走りに行きたい”というところを演出しました。こうした点もデザインありきですが、その一方で実用性というところが犠牲になりがちになるので、そのバランスに苦労しました。

 また、室内では薄型ディスプレイやタッチパッドコントローラーなどを装着しています。これらはドライバーディストラクションがないように、レイアウトなどはデザイナーやエンジニアたちのしのぎ合いというか、ケンカの仕合いでしたね。

――ボディカラーの赤色はイメージカラーですか? マツダのソウルレッドクリスタルメタリックはエクストラフィー(7万5600円)が必要ですが、価格はいかがでしょう。

山内氏:はい、イメージカラーです。この色もだいぶ苦労しまして、お客様の手が届く価格で量産しようとすると、やはり簡単ではなかったです。おそらくエクストラフィーをいただくことになると思います。(マツダのソウルレッドクリスタルメタリックの価格については)参考にしています。

 色出しについては上塗りを2回行なっています。焼き付けして上塗りしてまた焼き付けして、ここが難しかったですね。色々と考え方はあると思うのですが、この色を出そう、この深みを出そうとするとこの方法が一番かなと考えています。

――トヨタ自動車「C-HR」と近い部分もあるかと思いますが、C-HRと違う点はどのようなところでしょうか。また直接的なライバルはどのようなモデルですか?

山内氏:C-HRよりもエクリプス クロスの方がひとまわり大きなクルマです。いい意味でライバルになるのかなという気はしていますが、その点に関しては世界的にもう少し分析がいるかもしれません。我々のエクリプス クロスに対する基本的な考え方はSUVです。お客様がSUVに期待するところをしっかりと詰め込み、そのうえでよりかっこいいSUVということでエクリプス クロスが生まれています。一方で、C-HRはSUVというところにあまりこだわらなかったのかなと思っていまして、そこはこれから分析するところです。

 具体的なライバルというのはなかなか難しいですね(笑)。ただ、技術的に参考にしたクルマはいくつかありまして、当然いろいろと見ましたが、たとえば日産自動車「キャシュカイ」とか、ヒュンダイ「ツーソン」、キア「スポルテージ」、マツダ「CX-5」など。技術的に色々ベンチマークにしながら開発してきました。ただ、お客さまが見たときにどのクルマと競合するかというとなかなか挙げづらいです。新しいものを提案したかったので、エクリプス クロスと真っ向から対抗するクルマというのは正直まだピンときていないです。このサイズ感でスタイリッシュなSUVというのはそうそうないかなと。

――日本では1.5リッター直噴ターボ、2.2リッターディーゼルターボの両方を展開されるのでしょうか。

山内氏:日本でどのパワートレーンを導入するか、まだ決めきれていないです。両方入れる可能性もありますし、片方だけの可能性もあります。欧州向けについては、まず1.5リッター直噴ターボから導入します。ちなみに(現状では駆動方式は4WDのみ発表されているが)2WDの導入も考えています。

――インフォテイメントシステムについて、スマホ接続にかなり割り切っています。

山内氏:はい、スマホ連携が第一になっています。もちろんカーナビの設定もあるのですが、このタイプは徹底的に割り切ってスマホ連携ディスプレイにしました。現在ではスマホをお持ちの方がだいぶ増えてきているのと、スマホアプリの性能がよくなってきているので、こうしたタイプの方がお客様に安く提供できるのかなというのがあります。

――燃費問題後、おそらく1発目の新型車になると思いますが、かなりの重責を担われたと思います。やはりプレッシャーはありましたか?

山内氏:プレッシャーはすごいものでした。クルマを開発している佳境の時期にああいう問題を起こしてしまったので、やはりエンジニアたちもモチベーションが下がりました。私にとってもびっくりする出来事でしたが、そういう意味では(今回の出来事で)社員一丸となったというのもあります。ただ、ああいうことが起きたからこそ、クルマを誠実に作らないとならないという気持ちが一層高まりました。

Car Watch,編集部:小林 隆

最終更新:4/18(火) 16:41

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