ここから本文です

中国「金権外交」、またバルカンに布石

4/18(火) 16:20配信

ニュースソクラ

セルビアの国有石化事業を買収か

  4月初旬に米フロリダ州で開催された米中首脳会談の数日前、セルビア共和国のニコリッチ大統領が中国を訪問し、習近平国家主席と会談した。

 「一帯一路」と呼ばれるシルクロード経済圏構想を推し進める習政権にとり、中央アジアと欧州大陸をつなぐバルカン半島に位置するセルビアは、地理的にも重要な国の一つだ。こうした状況下、セルビアを取り込みたいとする中国が、セルビア国営の石油化学事業を近く買収するとの観測が急浮上している。

 習主席との会談に臨んだニコリッチ大統領は3月30日、インフラ整備やエネルギー分野を中心に中国からの積極的な投資を呼びかけたとされる。

 一方、ニコリッチ大統領が習主席と北京で会談した同日、セルビアの首都ベオグラードでは、ディンキッチ財務・経済相が国営石油化学プラントの売却を投資家らに提案したという。売却対象となるのはIP-Petrohemija、HIP-Azotara、MSK Kikindaの国有企業3社だ。

 セルビアはなぜ、このタイミングで売却話を持ち出したのか。セルビア政府は2014年11月、国際通貨基金(IMF)との間で、財政の健全化、金融部門の安定性・信頼性の向上、包括的構造改革を骨子とするプログラムを遂行することで合意。2015年2月、IMFはセルビアに対し約12億ユーロの融資を承認し、その後、融資を実施した。

 セルビアは、2018年の返済期限を前に国営企業を売却することで負債低減を急ぐとされる。習主席がトランプ米大統領との初の首脳会談に臨む直前にニコリッチ大統領が訪中したのも「国有資産の売却でセルビアは習主席から確約を取り付けたかったのではないか」(金融系のアナリスト)とみられている。

 中国は2009年、セルビアと戦略的パートナーシップ協定を締結。昨年6月には、習主席がベオグラードを訪問し、ニコリッチ大統領との間で、両国関係を全面的戦略パートナーシップに格上げすることで合意した。

 セルビアへの経済支援を打ち出すことで、同国への進出を加速させようとする中国政府の意図が透けて見える。セルビアのブチッチ首相は当時、石油化学業界への積極的な投資を中国側に要請したと伝わる。

 「一帯一路」は、中国西部から中央アジア、バルカン半島を経由して欧州大陸に至る広大な中華経済圏を築く構想で、習政権が国家プロジェクトと位置付ける。4月10日には、ミャンマーのティン・チョー大統領が訪中し、北京で習主席と会談。現地からの報道によると、同大統領は「一帯一路」を支持したうえで、参加を表明したという。

 経済支援を露骨にちらつかせる手法で支配権を握ろうとする中国の手法は後々、当該国との間で大きなしこりを残すかもしれない。セルビアの国家指導者たちは、目先の経済苦境からの脱却といった近視眼的な判断だけで国有資産を売却しようとするならば、いずれ思わぬしっぺ返しにあうことも覚悟しなければならないだろう。

■阿部 直哉(リム総研・エネルギーコンフィデンシャル担当)
1960年、東京生まれ。慶大卒。ブルームバーグ・ニュースの記者・エディターなどを経て、リム情報開発のリム総研に所属。1990年代、米国シカゴに駐在。
著書に『コモディティ戦争―ニクソン・ショックから40年―』(藤原書店)、『ニュースでわかる「世界エネルギー事情」』(リム新書)など。

最終更新:4/18(火) 16:20
ニュースソクラ