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吉田沙保里は後継者になれるのか。栄コーチに聞く名将の流儀

ニュースイッチ 4/18(火) 10:57配信

耐え忍ぶことができる人こそ、組織をまとめていける

 2016年夏、リオデジャネイロ五輪では史上最多のメダルラッシュに日本中が歓喜に沸いた。レスリングのメダルは男女合わせて金4個、銀3個。この輝かしい成績の立役者が栄氏だ。メダリストの肩車で喜ぶ姿はすっかり五輪の風物詩に。なぜ五輪という大舞台で、選手たちは好成績を残せたのか。それを監督としてどのように支え、導いたのか。知られざる五輪の舞台裏と、個人や組織の力を最大限に発揮させるためのコーチングの流儀を日本レスリング協会強化本部長の栄和人氏に聞いた。

 ─リオ五輪は、どんな五輪でしたか。
 女子レスリングは他国がどんどん強くなってきており、簡単にはメダルを取れなくなっています。4連覇を果たした伊調馨選手も、リオ五輪前のヤリギン国際大会の決勝で負けています。ひょっとしたらリオでは金メダルがゼロの可能性もありました。

 こうした金メダルを100%保証できない中、男子の強化本部長も兼務しました。男子は2015年の世界選手権で5位以内に入賞できなかったためにアジア予選から出場枠獲得に挑まざるを得ませんでした。その頃、監督交代の意見も上がったのですが、それでも私はリオ五輪の最後まで責任を取り東京につなげたかったのです。

 リオで男子がメダルを取れなかったら、これまで男子レスリングで五輪のメダルを取り続けてきた歴史が途絶えてしまう─。リオは、危機感も重圧もすべて背負って戦った五輪でした。だから、グレコローマンスタイル59キロ級で太田忍選手が銀メダルを獲得した時、「歴史を守れた」と安堵して涙が止まりませんでした。

 五輪は初出場の登坂絵莉選手には、「最初から全力で気持ちも体も前にでていけ!」と送り出し、女子で第1号の金メダルを取りました。当初、金5個を目標に掲げていましたが、結果は金4個、銀3個。逆転勝ちも多く、内容も素晴らしい試合ばかりで金5個以上の結果だったと思います。

 ─監督、選手ともに苦しい戦いの五輪だったのですね。そうした中でも結果を出せた要因は。
 リオはレスリング協会が1つになって戦いました。五輪を迎えた時、1人ひとりに「何も心配するな」と送り出しました。絶対に負けられないという危機感や勝たせたいという想いが伝わって、選手たちも勝ちたいという強い想いで辛く厳しいトレーニングに耐えてきた結果です。

<ネガティブをポジティブに変える力>

 ─プレッシャーをどのように乗り越えられているのでしょうか。
 実は、私は神経質で小心者。まともに6時間も寝られたことがありません。眠れなくて2時間くらいで起きてしまうこともしばしば。だから電車移動などのちょっとした時間に睡眠をとっています。プレッシャーに耐えかねて、吐き気を催したこともあります。

 昔は髪がフサフサだったんですが、40歳前から、髪の毛がどんどんなくなって─。これも、たぶんストレスからくるものだと思います。40歳を過ぎたら、すっかり髪がなくなってしまいました(笑)。

 こんなふうに自分のネガティブな面を冗談として話し、ポジティブに変えること。私は人を笑わせることが好きなんです。これが私のストレス解消法と言えます。

 そしてレスリングへの想いは恋愛と同じ感情かもしれません。恋愛って時々悩んだりして苦しいこともあるでしょう?でも、恋をしていると楽しい。だから、私はレスリングに自分のすべてを捧げることができるのです。

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最終更新:4/18(火) 10:57

ニュースイッチ