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消費者の「こだわり」が複雑に…新たなニーズを見出す調理家電

ニュースイッチ 4/18(火) 11:17配信

『面倒』『嫌い』『体験』で付加価値

 家電メーカー各社が調理家電の開発に力を入れている。日本などの先進国では消費者の食生活が多様化し、調理への関心やニーズも複雑になっている。このため調理家電は消費者の“こだわり”が色濃く表れる。調理機能への要求が一段と緻密になる中、各社は新たな付加価値や差異化した機能を追求し画期的な製品を打ち出している。

<共働きが増加>

 近年、共働き所帯が増え、調理家電の自動化ニーズが高まっている。そこで三菱電機は製品機能の需要を世帯ごとに明確化し、ファミリー向けには調理の手間を減らせるIHクッキングヒーターを投入した。鍋の中にあるカレーやシチューなどに対し、自動で対流が発生する機能を搭載。液体物が自動で流動するため、焦げ付く心配がなく、こまめにかき混ぜる必要がない。三菱電機ホーム機器(埼玉県深谷市)の花田英一郎取締役は「ファミリー所帯では子育てや洗濯など複数の作業の合間に調理しているため、自動化が求められる」と自信を示す。

 また製品性能ではなく、家電による“体験”を重視するメーカーもある。バルミューダ(東京都武蔵野市)が展開する高級トースターなどのキッチン家電は本格的な味わいに加え、洗練された外観や機能美も追求。高級トースターで調理する工程を含め、優雅な時間を演出している。

 寺尾玄社長は「ぜいたくな体験を味わうために統一感が重要」と話し、トースターとセットとなる電気ケトルも開発した。消費者のこだわり体験に応えるため今後は炊飯器やオーブンレンジなどの製品を投入する計画だ。

<新事業に挑戦も>

 調理家電で蓄積したマーケティングの情報を生かし、新たな事業に挑戦する動きもある。パナソニックはIoT(モノのインターネット)技術と調理家電を活用。英国のベンチャーと共同で「スマートコーヒー焙煎(ばいせん)機」を開発。家庭で本格焙煎が楽しめるコーヒーサービス「ザ・ロースト」を提供する。パナソニック事業開発センターの岩井利明所長は「食に関連するニーズは多岐に広がっている。その中で家庭でもプロの味のコーヒーを楽しみたいという声は多い」と分析している。

 日本能率協会総合研究所(東京都港区)が公表した2016年の「家事スタイルに関する調査」によると、例えば食器洗い機の保有率や使用率は増えているが、依然として食器を手洗いする比率は9割以上と高く、横ばいで推移する。食生活の多様化に伴い食器も多種多様になり、自動で洗浄できない食器が増えているためだ。このため「洗浄できない食器の手洗いを『面倒・嫌い』と感じる人が増加している」とされる。ここに調理家電の新たなニーズがある。

 調理家電は人々を便利にするだけでなく、こだわりを実現するツールでもある。メーカー各社にとっては、そうしたニーズに応えつつ、新たな取り組みを行う“試金石”にもなる。今後も付加価値を見いだすため、各社の知恵と工夫が問われる。

日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太

最終更新:4/18(火) 11:17

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