ここから本文です

「魔法のような」IoT調光ガラス、旭硝子が惚れた技術とは

4/19(水) 6:10配信

スマートジャパン

■IoT調光ガラス「Halio」

 「Halio(ヘイリオ)」は、まるで魔法のような製品――Kinestral Technologies(キネストラル テクノロジー、以下Kinestral)のCEOであるS.B. Cha氏はこう語る。同社はIoT調光ガラスHalioを2016年12月に発表した。Halioは従来の調光ガラスと違い、透明からダークグレイまで色の表現が豊かで、その変わる時間が速いのが特長だ。

【Halioの構造イメージ】

 Kinestralの技術にいち早く目を付け、2012年からパートナーシップを築いてきたのがガラス世界最大手の旭硝子(AGC)である。Cha氏が「5年間全てのステップを一緒に歩んできた」と語るほど信頼関係が強い両社は、量産化に向けて次の舵を切った。

 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の子会社で、ディスプレイ技術などを手掛けるGTOC(G-Tech Optoelectronics Corporation)とパートナーシップを締結。GTOC敷地内にある工場跡地を活用して、Halio専用の製造工場を建設する。工場建設費は旭硝子とGTOCが共同で出資した。2018年半ばから生産が本格化される予定だ。

 Cha氏と旭硝子ビルディング・産業ガラスカンパニー 戦略・企画室の副社長兼スマートプロジェクトリーダーの工藤雅司氏にインタビューを行った。

■クラウドに接続することで自動的に調整

 Halioは透明からライトグレー、ダークグレーまで色のトーンを電気で調整できる。透明状態では、一般的な窓ガラスに近い70%以上の透過率を実現。透明からダークグレーの変化までに要する時間は約3分という。ダークグレーでは紫外線を100%カット、光も99.9%遮るためプライバシーの保護に有効だ。色の変更に電力を使用するが、その維持に電力を必要とせず、停電したとしても色は変わらない。

 またIoT調光ガラスと呼ぶように、Halioに搭載されているドライバーからゲートウェイを経由し、Kinestralが開発したクラウドと接続することで「より快適な環境を自動的に提供する」(Cha氏)。

 サードパーティー製のIoTデバイスとの連携が容易としており、音声やスマートフォンによる操作をはじめ、温度や気候、時間に合わせて光を自動的に調整できる。例えば寝室にHalioを設置し、起きる時間に自然光が入るよう調整するなどの活用方法が考えられる。オフィスにおいても、パーテーションやブラインドの代わりに活用可能だ。

 このように光の調整で部屋の温度を快適に保つことは、冷暖房を必要とする時間を減らすため、省エネにつながるとCha氏は指摘する。政府が普及促進を目指す「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」実現に有効な手段となるかもしれない。

 IoTプロダクトはセキュリティが問題視されるが、Cha氏は「銀行レベルのセキュリティ対策を行っているため、他のシステムとシームレスに統合可能」とする。

■エレクトロクロミック技術

 Halioの調光には「エレクトロクロミック」技術が用いられている。エレクトロクロミックでは金属イオンに電気を流すことで化学変化が起こり、色が可逆的に変化する。液晶やSPD(Suspended Particle Device)といった調光技術もあるが、それらと比較して太陽熱や紫外線を遮断できるのが特長である。

 工藤氏によると、エレクトロクロミックは約30年前から存在する技術で、複数のメーカーが調光ガラスとして既に製品化していた。しかし従来製品は、透明状態からダークグレーまで変わるのに約20分かかってしまう。歩留まりも悪く、コストも高かったため、市場に多く普及することはなかったという。旭硝子でも独自技術として約20年にわたりエレクトロクロミックの開発をしていたが、コストや技術面での課題をクリアできず、市場に展開できなかったという。工藤氏は「扱うのが非常に難しい技術」と語る。

 Halioの調光が速いのは、Kinestralが特許を持つ「Gradient TCO」によるものである。傾斜抵抗をITO(Indium Tin Oxide)導電膜につける技術で、パネルの左右端から着色するのを防ぎ、全体を均一に着色できる。これにより着色が早くなるとする。

 また従来製品は透明な状態でも黄色みが残ったり、曇り気味に見えたりする場合があった。Halioは一般的なガラスと変わらない透明状態を実現。Cha氏は「当社のコア技術は“ケミストリー(科学)”である。従業員約100人(2017年1月時)のうち、約20人は科学者である。これはソフトウェアエンジニアと同じ規模だ」と語る。

■住環境のプラットフォームとして展開か

 約20年エレクトロクロミックを開発していた旭硝子だったが、2012年にKinestralと出会ったことから、両社は関係性を深めていく。工藤氏は、当時の様子を「長年開発していた知識を基に見ても、Kinestralの技術は非常に優れていた」と語る。

 2017年1月には、旭硝子がKinestralに対して総額6500万米ドルの出資を行うことを発表した。Kinestralに旭硝子の取締役1人を派遣し、パートナーシップを強化する。2018年半ばの量産化に向けて、GTOCも含めた3社で協業していくという。

 Cha氏は、今後の展開について「さまざまなビジネスモデルを検討する」と語る。例えばクラウドのAPIを公開して照明やエアコンと連携し、住環境のプラットフォームとなることで、月額課金制モデルの導入が考えられるう。いかなるモデルになったとしても、Cha氏は「人々の生活をより良くすることを目指す」と強調した。