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<熊本地震1年>マンション復旧・修繕 高い壁

毎日新聞 4/19(水) 8:00配信

 ◇保険会社に「一部損」と判定 資金難が要因

 熊本地震の発生から1年以上が経過したが、損傷した分譲マンションの復旧・修繕はなかなか進んでいない。

 熊本県マンション管理組合連合会が2016年12月~17年1月、当時加盟していた熊本市内の71管理組合にアンケートしたところ、連絡が取れなかった7組合を除くと、罹災(りさい)証明に伴う市の被害認定調査で全壊6▽大規模半壊4▽半壊16▽一部損壊38--と判定されていた。

 このうち修繕工事をしたり、工事の見積もりを終えたりしたのは3割ほどしかない。連合会によると、保険会社に一部損と判定され、補償額が少ないために修繕に着手できないケースが目立つ。

 損壊したマンションが建て替えが必要なのか、修繕で居住可能なのかの判定作業も遅れている。日本建築防災協会の講習を受講した建築士が調査して判断する「被災度区分判定」があるが、阪神大震災で約370棟のマンション再建を支援した福岡大工学部の古賀一八教授(建築防災学)は「この仕組みも十分に周知されておらず、復興の遅れにつながっている」と指摘する。

 連合会の堀邦夫会長は「『修繕したいが、積立金が少なく、資金を工面できない』との相談が寄せられている。資金が足りずに修繕工事を一部にとどめるケースもある」と話す。

 古賀教授は「地震保険は半損と一部損で補償額にかなりの差がある。損害の実態に合うよう査定方法の見直しも必要だ。地震による被災は全国どこでも起きうる問題なので、住民同士の結びつきを普段から作っておくことが最も大切だ」と話している。【土田暁彦、柿崎誠】

 ◇公的制度フル活用で成功 合意形成、住民力で

 熊本地震で損壊し、熊本市の被害認定調査で「大規模半壊」と判定され、4月末に復旧・修繕工事を終える同市中央区の分譲マンションがある。分譲マンションは修繕費用が高額で住民の合意形成に時間がかかる。費用面から修繕を一部にとどめて工事を終えるケースもあるといい、熊本県マンション管理組合連合会は「大規模半壊で住民が望んだ修繕工事を終えるのは県内で初めてではないか」と話している。

 このマンションは1991年完成。鉄筋コンクリート14階建てと5階建ての2棟に73世帯が入居していた。熊本地震で壁や廊下に亀裂が入り、住民のほぼ半数は、自治体が民間住宅を借り上げた「みなし仮設」に避難している。

 建物の被災状況の研究で現地入りした専門家の判定で、建て替えでなく修繕したうえで居住可能と判明したが、課題は費用と住民合意だった。地震保険は保険会社が当初、補償が保険金額の5%しかない「一部損」と判定。その後、住民が新たに見つけた亀裂などの被害を保険会社にアピールし、50%補償される「半損」になった。

 自治体判定の「大規模半壊」の建物を住民が修繕して居住する場合、被災者生活再建支援法に基づき1世帯当たり最大150万円の支援金が出るほか、災害救助法に基づく応急修理制度で、1世帯当たり57万6000円を上限に修理費が補助される。

 こうした公的制度も活用すれば、管理組合の積立金のほかに1世帯当たり50万円支出すれば修繕費1億数千万円を賄えるめどがたった。大規模修繕には住民の4分の3以上の同意が必要になるが、この分譲マンションでは日ごろから夏祭りなどイベントなどで交流しており、管理組合副理事長の稲田雅嘉さん(57)は「日ごろの活動が今回のスピーディーな合意形成に生きた」と振り返る。

 管理組合は昨年7月末の臨時総会で修繕に合意し、同10月上旬に着工。耐震性が高い壁やドアなどへの改修を進め、現在は仕上げの段階に入っている。【柿崎誠、土田暁彦】

最終更新:4/19(水) 8:00

毎日新聞