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動画カメラ“台風の目” プロも注目、4K/60pの世界をパナソニック「GH5」で撮る

Impress Watch 4/19(水) 8:10配信

■プロも注目の動画カメラ

 昨年9月のフォトキナで開発発表された「LUMIX DC-GH5」。今年1月のCESでは早くも実動機の展示が行なわれ、この3月下旬からもう店頭に並ぶというスピード展開である。

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 機能の目玉となる4K/60pの技術的な部分はCESレポートでもお伝えしたところだが、今回は実際に撮影しながら、その魅力に迫ってみたい。

 デジタルカメラとしての進化点も多いところだが、GH5は「プロフェッショナル動画性能」を前面に謳う製品だ。GH4でもかなりプロユーザーへの導入が進んだところではあるが、動画性能をプロフェッショナル向けとして打ち出したのは、GHシリーズでは本機が初めてとなる。

 何を以てプロ仕様とするかには色々な切り口があるが、まず大きく2点を挙げておきたい。「4K/60p撮影」と「4:2:2/10bit出力」である。出力に関しては、今回外部レコーダとモニターを用意できなかったので、また夏のファームアップなどのタイミングで、機会があればテストしてみたい。

 今回はカメラ単体で実現できる機能を中心に試してみよう。3月23日から発売が開始されており、価格はオープンプライス。実売はボディのみで24万円前後、標準ズーム「LUMIX G VARIO 12-60mm / F3.5-5.6 ASPH. / POWER O.I.S. (H-FS12060)」が付属するレンズキット「DC-GH5M」は27万円前後だ。

■プロに寄せたミラーレス

 まずGH5のボディだが、前作GH4に比べると115%サイズアップしているのは既報の通りだ。デザイン的には、ヘッド部分が前へ垂れ下がるようなデザインとなり、GH4のような「とんがったヘッド部」という印象はなくなった。これはポップアップフラッシュの搭載を諦めて、放熱のためにヘッド部分を利用しているからだ。

 重量はボディのみで約725g。標準ズームキットレンズを加えると約935gで、ギリギリ1kgを切るが、同倍率でも「LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm/F2.8-4.0 ASPH.」を付けると1,082gと、1kg越えとなる。ミラーレスとは言え、かなり大型のシステムとなる。

 センサーは4/3型で、新開発の総画素数2,177万画素、有効画素数2,033万画素のLive MOSセンサー。ローパスフィルターレスである。読み出し速度の高速化により、GHシリーズとしては初の4K/60p撮影を可能にする。GH4では4K撮影時にフル領域で読み出せなかったため、4K撮影だけテレ側へシフトしていた。

 本機では動画用の電子手ぶれ補正がOFFならレンズどおりの画角、補正ONでも多少テレ側にシフトするのみとなっている。また画質の低下を抑えてテレ側にシフトするEXテレコンも装備しており、1本のレンズでかなりのレンジがカバーできるようになっている。

 端子類は左側に集中しており、外部マイク入力、モニター用イヤホン端子のほか、HDMIのフル端子、PCなどとの接続用にUSB-C端子がある。

 反対側はSDカードのデュアルスロットになっている。1番2番がズレた位置にあるのがユニークだ。なおデュアルスロットの動作としては、リレー記録、バックアップ記録、用途別に振り分け記録の3モードを備えている。

 底部にはバッテリースロットがある。消費電力が高いということで、LUMIXシリーズで採用の多い「DMW-BLC12」ではなく、やや大型の「DMW-BLF19」が採用されている。

 撮影モードはMOVでもMP4でも同じだが、MOVのほうは別売のXLRマイクロホンアダプタ―「DMW-XLR1」を使用すると、ハイレゾ収録ができるという特徴がある。なお夏のファームアップでは、400Mbpsの記録に対応、All-Iによる撮影が可能になる予定だ。

 パッと見てわかるように、ビットレート150Mbpsで記録できれば、4:2:2/10bit撮影が可能になるというわけだ。ただ4K/60p撮影のみ、150Mbps記録でも4:2:0/8bit撮影となる。

 コンスタントに150Mbpsの書き込みができるSDカードとしては、接点が2列になったSDXC IIを使いたいところだ。本機はもちろんこれに対応している。

 SDカードのスピードクラスとしては、ClassやUHSといった複数の表記があるが、映像記録用としては今後はV〇〇という「ビデオスピードクラス」の表記が新設された。現在V90まで規定されており、保証スピードは90MB/s、ビットレートで言うと720Mbpsまで対応できることになる。

 すでにV90のカードも発売されているところではあるが、現時点では150Mbpsまでしか撮れないので、SDXC II UHS3 Class10のカードがあれば撮影は可能だ。V60やV90のカードも夏までには多少実勢価格が下がるかもしれないので、今慌てて買うことはないだろう。

 輝度レベルの選択は、8bitではお馴染みの「16-235」「16-255」「0-255」の3タイプが、10bitでは「0-1023」「64-940」「64-1023」となる。数値的に見慣れないので戸惑うところだが、考え方は8bitと同じだ。

 なお4KはHDMI出力からも4:2:2/10bitで出力できる。ただし4K/60pの撮影中のみ4:2:0/8bitとなる。カメラ側で録画しなければ、4K/60Pでも4:2:2/10bit出力できるので、外部レコーダを使えばすべてのモードで4:2:2/10bit収録が可能になる。今回はカメラ本体があるのみなので、4K/60pで撮影してみることにした。

■プロも納得の機能

 ではさっそく撮影してみよう。今回撮影で使用したレンズは、光学手ぶれ補正付きズームレンズとして「LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.」、単焦点レンズとして「LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 ASPH.」、「LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm / F2.8 ASPH. / MEGA O.I.S.」の計3本だ。

 撮影日は関東地方はものすごい強風で、撮影のためにしゃがんでいると風圧で倒れそうになるほどであった。したがって風音キャンセラーは「強」で撮影している。もちろんフカレはするのだが、ある程度押さえ込まれているのがわかる。

 本機ではヘッド部のマイクの他に、カメラの内部にもマイクを備えている。これによりズーム音やAF動作音を拾い、この手のカメラ内部で発生する雑音をキャンセリングすることで、S/Nのよい集音ができるようになっている。

 昨今は動画撮影用の静音レンズも出てきているが、すべてのケースで静音レンズが使えるわけではない。ボディ内部でノイズを拾う「逆ノイキャン」という考え方は、なかなかユニークだ。

 参考までに4K/60pのサンプルも用意したが、いつもの4K/30pに比べるとデータ量が多いため、圧縮ノイズが目立つエンコードとなってしまった。オリジナルの画質とはかなり違う結果であることをご了承願いたい。

 次にAF性能を見ていこう。本機では「DFD(Depth From Defocus)テクノロジー」による空間認識AFを備えている。写真撮影では約0.05秒のAF速度を誇るが、動画の場合は逆にAFが反応しすぎないよう、追従速度をコントロールできる。AF駆動速度とAF追従感度設定により、カメラ前を人が横切ってもAFが迷わないといった設定も可能だ。

 いつものように顔認識による被写体撮影を行なってみたが、60pになってもAFの追従動作はあまり変わらない。一瞬外れる瞬間もあるが、高速で追いつく様子が見て取れる。

 手ぶれ補正は、レンズ側の光学補正に加え、ボディ内の電子補正を併用することで、かなり安定した手持ち撮影が可能だ。いつものようにモデルさんと平行して歩いているが、上下の歩行感はほとんど感じられず、かといってレールに乗せたかのような強烈な補正でもなく、自然な仕上がりになっている。

 撮像素子はフィルターレスだが、今回の実写ではモアレなどのパターンノイズが発生するケースはなかった。被写体によっては発生する可能性は排除できないが、これだけキレのいい絵が楽しめるのであれば、ある程度は演出や撮影方法でカバーすればいいだろう。

 動画のプロ向け機能としては、本体モニター上に撮影時には波形モニタ―やベクタースコープが表示できる。もちろんヒストグラムも出せるが、ビデオ系技術者は波形モニタ―のほうが慣れている。残念ながらHDMI出力のほうには出せないが、本機はニーコントロールもできるので、上限のクリップ具合を波形で確認できるのは、ビデオエンジニアリングとしては大きい。

■充実の特殊撮影機能

 特殊撮影機能も充実している。まずフォトスタイルだが、「シネライクD」、「シネライクV」といった設定の次に、「709ライク」というスタイルが追加された。709とは言うまでもなくRec.709の事だが、いわゆる一般的なテレビガンマに近い特性を持っているので、ビデオ撮りのマルチカメラ収録など、他のビデオカメラを色味を近づけたい時には便利だ。

 このフォトスタイルは、撮影中でも変更できるのも大きなポイントだろう。従来はいったん録画を止めてからでないと変更できなかったが、撮影を開始してから設定間違いに気づいた場合でも、録画を止めずに合わせ込むことができる。これもマルチカメラ収録で、これだけ勝手に止められないというケースでは助かるはずだ。

 フィルターは全部で17種類搭載されている。すべて4K/60pで動作可能で、画像処理エンジンのパワーに驚かされる。

 あるポイントからポイントへフォーカスを滑らかに繋ぐ「フォーカストランジション」も搭載した。AFのポイントを画面でタッチしてもフォーカス送りは可能だが、フォーカストランジションはトランジション時間を任意に選択できるのがポイントだ。またフォーカスポイントは2点間だけでなく、3点間も自由に選んでフォーカス移動ができるのもいい。

 VFR(バリアブルフレームレート)撮影は、8bit撮影時(4K/60pを除く)のみ利用可能だ。4Kでは60p撮影/23.98p再生の40%に留まるが、HDでは180p撮影/23.98P再生の13%までハイスピード撮影が可能だ。かつてVFRといえば720p撮影になってしまっていたものだが、フルHDや4Kで普通に使えるようになると、画質劣化を気にせず使えるようになる。

■総論

 ここのところカメラメーカーの不振がニュースとして流れてきているだけに、動画カメラの行く末も心配されるこの頃ではあるが、GH5はさすがの出来で安心した。

 動画向けに多くの機能がリニューアル、または新規搭載されており、機能的にはキヤノン「EOS 5D Mark IV」に真っ向から勝負を挑む格好である。もちろん5D M4はフルサイズ、本機は4K/60pというウリの違いがある故に単純比較はできないが、特にAF関係の機能はかなり寄せてきているのを感じる。

 気になるバッテリーの保ちは、今回およそ2時間のシューティングでバッテリー残量がほぼゼロとなり、従来の4Kカメラよりもバッテリーの減りは早いと感じた。特に長回しを意識しなくても、予備バッテリーは必須だろう。

 なお動画から静止画を切り出す「6Kフォト」機能も装備するが、6KフォトはH.265なので、これを丸ごと動画素材として編集で利用するには、PC側でH.265のデコードが必要となる。標準状態でH.265が扱える動画編集ツールはまだ少ないと思われるので、今のところ6Kフォトは、本当に写真切り出しの手段として使うしかなさそうだ。

 正直マイクロフォーサーズの「写真機」としてはデカ過ぎるきらいもあるが、動画カメラとしては細かいところまでよく考えられており、メニュー操作のレスポンスも良好だ。

 動画カメラとしては文句なしに今年の台風の目となる製品だろう。

AV Watch,小寺 信良

最終更新:4/19(水) 8:10

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