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<トルコ国民投票>「不正動画」ネットで拡散 深まる不信感

毎日新聞 4/19(水) 17:47配信

 【イスタンブール大治朋子】トルコで16日に実施された大統領権限拡大のための憲法改正案に対する国民投票で、予備の投票用紙に「不正に公印を押す男性」だとする動画がインターネット上で拡散され、注目を集めている。最大都市イスタンブールなどでは「不正」を批判する若者らがデモ抗議。全欧安保協力機構(OSCE)などで作る選挙監視団は、反対派に関する「公平な報道がなされなかった」と指摘し、トルコ政府が猛反発するなど投票をめぐり不信感が深まっている。

 動画は約30秒で、真偽は不明。男性の一人が次々と押印し、「とっとと終わらせて、行こう」との男性の声が入り、撮影者らしい女性の言葉が続く。「議長、私、あなたを撮っていますよ。あなたは押印のない投票用紙にスタンプを押して、有効(な投票用紙)にしようとしている。犯罪ですよ」。だが男性は黙って押印を続ける。

 地元メディアによると、動画は首都アンカラの投票所で撮影された可能性が高い。投票所には各党の支持者が「監視役」として派遣される。女性の言う「議長」とは、そのトップとみられるという。

 16日昼ごろにインターネットに投稿され、数十万回は視聴された。最大野党・共和人民党(CHP)は18日、公式な押印を装い「有効」な投票用紙が勝手に作られたとして、高等選挙委員会に国民投票そのものの無効を訴えた。ロイター通信によると、OSCE監視団メンバーの一人は、最大250万票が不正操作された疑いがあると指摘する。「押印」に絡むものが含まれるかは不明。半国営アナトリア通信によると、暫定開票結果は賛成51.4%、反対48.6%で、差は約138万票だった。

 最大都市イスタンブールに住む写真家のムラトジャンさん(27)は、「投票日の夜、動画を見て怒った人々が鍋をたたきながら行進しているのを見てデモに参加した。政府が市民をだまし、不正が無視されるトルコに未来を感じられず、嫌気がさしている」と話す。

 イスタンブールや首都アンカラ、イズミルなど大都市では、16日夜以降、数百人から1000人規模のデモが相次ぎ、一部は治安当局と衝突。イスタンブール中心部でカフェを営むサンジャクさん(38)もデモに参加した。「メディアで取り上げられるのは賛成派の意見ばかりで、反対派の声はほとんど聞かれなかった」と怒る。

 トルコ政府は、政府に批判的なメディア幹部らを「テロリスト」などとして逮捕。今回の国民投票でも、反対派の主張はほとんど報じられず、欧州連合(EU)はトルコ政府に「透明性ある(事実関係の)調査」を求めた。エルドアン大統領は17日、「投票は西側諸国より民主的だった」と強く反論した。

 一方、イスタンブールで最も保守的な地域の一つとされるファティ地区の商店街には「賛成票を投じた人は全品2割引き」などの「祝勝」ポスターが目についた。少数民族クルド系で服装店を営むムラト・ギュネシュさん(36)も賛成票を投じた。「若者がデモをやれるぐらい自由な社会ということだ」と語る。

 治安当局は、政府に批判的なクルド系政党党首や国会議員を「テロリスト」として逮捕しているが、「理由がある。今の政権は交通機関をたくさん作り、生活を便利にしてくれた。クルド系政党は批判ばかりで、何もしてくれない」。

 別の会社役員、ムスタファ・スナさん(68)は「デモをやっても結果は変わらないし、変えるべきではない。動画は偽造だ。政府がやることは正しい」と語った。

最終更新:4/20(木) 0:23

毎日新聞