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テロ準備罪 国際連携へ試金石 先進国9割が整備済み きょうから実質審議入り

産経新聞 4/19(水) 7:55配信

 各国でテロに対峙(たいじ)する国際組織犯罪防止条約(TOC条約・パレルモ条約)締結に必要とされる「テロ等準備罪」をめぐり、野党などから新たな法整備は不要との声が上がっている。現行法でも一部の重大犯罪については「共謀罪」などの規定があるためだが、外務省幹部は「担保法を整備しなければ、条約の義務を果たすことはできない」と主張する。条約締結に担保法は必要か否か。19日から始まる衆院法務委員会での実質審議を前に検証した。(大竹直樹)

 ◆35カ国中32カ国

 TOC条約はすでに北朝鮮を含む187の国・地域が締結している。国連加盟国で締結に至っていないのはイランやソマリア、南スーダンなど11カ国にすぎない。日本もその一つだ。

 TOC条約を締結するためには、長期4年以上の懲役・禁錮刑に当たる重大な犯罪について、犯罪の合意(計画)段階から処罰できる「共謀罪」か、組織的な犯罪集団の活動に参加することを処罰する「参加罪」のいずれかが必要となる。

 経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のうち、条約締結に当たり、共謀罪を新たに設けたのはノルウェーのみで、参加罪の新設は、オーストリアとカナダ、ニュージーランドの3カ国。このうちカナダとニュージーランドは、既存の共謀罪に加え参加罪を新設している。

 「合意罪(共謀罪)や参加罪を新たに整備した国は少ないと報道されているが、先進国をみれば、ほとんどの国がすでに整備していたというのが正しい」

 外務省の幹部はこう指摘する。実際、米国や韓国など32カ国が共謀罪か参加罪のいずれかをすでに備えていた。これは実にOECD加盟国の約91%に当たる。

 ◆処罰対象を限定

 日本では、条約締結のため自国の法制度に照らして共謀罪が選択されたが、過去3度廃案になった。

 今回のテロ等準備罪では、長期4年以上の懲役・禁錮刑に当たる犯罪との条件を当てはめれば共謀罪を新設する対象犯罪は676に上るが、「対象が多すぎる」といった懸念もあり、対象犯罪が限定された。

 まず、事前に犯罪を計画できない業務上過失致死罪などの犯罪が除外され、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものに限定し、最終的には277の罪となった。

 別の外務省の幹部は「条約は原則として、重大な犯罪の合意を犯罪とするよう求めているが、日本では『内心が処罰の対象となる』といった懸念にも最大限応えるため、条約の2つのオプションを使うことで、できるだけ処罰対象を限定した」と振り返る。

 条約では、国内法上求められれば(1)合意(計画)内容を推進するための行為を伴う場合(重大犯罪を実行するための準備行為)(2)「組織的な犯罪集団」が関与する場合-に限定することを認めている。

 この「2つのオプション」を活用することで、テロ等準備罪は構成要件がより厳格化されたのだ。

 ◆現行法は不十分

 「現行法で条約を批准できるのではないか」。野党や日本弁護士連合会などはこう主張している。

 新たに国内担保法を整備せずに、条約を締結できる可能性はないのか。外務省幹部は「できたとして、それは虚偽の契約にすぎない」と断言する。

 現行でも内乱など約60の重大な犯罪については共謀罪や陰謀罪、予備罪、準備罪が設けられており、実行前に取り締まることができる。だが、「共謀・謀議段階での身柄拘束には高いハードルがある」(検察幹部)のが現状だ。

 組織的犯罪集団の関与が想定される詐欺や人身売買に関する犯罪などには現行法上、共謀罪や予備罪の規定はない。売春組織が人身売買を計画しても処罰できない。2020年東京五輪・パラリンピックを控え、今回の法案成立は国際連携の輪に加わるための最低条件といえる。

最終更新:4/19(水) 8:09

産経新聞