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「冷たい目で見る」韓国人に戸惑い 脱北アーティストの作品に注目集まる

西日本新聞 4/19(水) 8:10配信

 ソウルに住む北朝鮮脱出住民(脱北者)の若手アーティスト、姜春革(カンチュンヒョク)さん(31)が、北朝鮮体制の矛盾や南北統一への思いを込めた絵画や歌を発表し、注目を集めている。「同じ民族なのに韓国人は北朝鮮を遠い国と感じている」。作品に込められたメッセージはどこか、切ない。姜さんは複雑な南北問題の実態を日本人にも伝えようと、日本での個展も計画している。

⇒【画像】北朝鮮の故郷を描いた作品。背景は炭鉱の「ボタ山」だという

 「ベトナム、ラオス、カンボジア、タイを通じてついに大韓民国/生まれ変わって韓国男児/やっとたどり着いた新しいすみか/新しい人生/歯を食いしばって生きていく」-。

韓国人の姿に戸惑い

 2016年11月に発表したラップ「For The Freedom」は、姜さんの激動の半生がテーマだ。北朝鮮の圧政から逃れるため、12歳で家族とともに中国に渡った。16歳の時、約80日かけて東南アジア各国を経由して韓国入り。憧れの地だったが、「(同一民族である)われわれを外国人のように冷たい目で見る」韓国人の姿に戸惑った。分断から約70年。韓国は想像以上に違う社会だった。

 韓国の政府機関で適応教育を受けた際、支援の人権団体から絵の才能を見いだされた。しばらくは生活のために絵を描いていたが、団体の助けもあり、検定試験を経て韓国有数の芸術教育機関、弘益大(ソウル)の美術科に入学し、本格的に絵を学んだ。

「こんな作品を作るのは早くやめたい」

 3月初めにソウルで初めての個展を開いた。出展した代表作は縦1・5メートル、横1メートルの油彩画。大きな男性の顔の右目は韓国、左目は北朝鮮の国旗。悩ましげな表情は「自分がどちらの国の人間なのか、混乱している『脱北者の自画像』」だ。姜さん自身、サッカーの国際大会で韓国と北朝鮮の試合があると、「どちらを応援すればいいか迷う」と打ち明ける。

 姜さんは他に、北朝鮮に暮らしていた頃に見た風景や北朝鮮政権を批判する風刺画も手掛ける。幼い頃に実際に見た公開処刑や拷問など悲惨な人権問題も絵で告発する。生々しい描写から漫画のようなタッチまで多様な作品は、「韓国で関心が薄れつつある北朝鮮の実態を伝える」ための工夫だ。姜さんは大阪府に親族がおり、日本での展覧会も準備しているという。

 「本音を言えば、こんな作品を作るのは早くやめたい」。歌や絵を通して南北の住民が心を通じ合い、統一の実現を近づけたい。近くて遠い祖国の友人や親戚に向けて、姜さんのラップはこう締めくくられる。

 「分かれた地では終わらない/このストーリーはまだ続くんだ」

西日本新聞社

最終更新:4/19(水) 8:10

西日本新聞