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“西のつくば”けいはんな学研都市、長期停滞脱し30周年 研究施設相次ぐ

日刊工業新聞電子版 4/19(水) 14:05配信

 関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)が、1987年の関西文化学術研究都市建設促進法の公布・施行から30周年を迎えた。官主導の筑波研究学園都市に対し、けいはんなは民間主導。バブル崩壊など不況を乗り越え、企業の研究所など130超の施設が立地する。研究機関の集積を生かしたオープンイノベーションの推進、研究成果の事業化などが期待される。関西文化学術研究都市推進機構(京都府精華町、柏原康夫理事長、0774・95・5105)を中心に、都市建設は現在も継続中だ。(京都・水田武詞)

研究開発型企業の進出

【アクセス改善】
 けいはんな学研都市は京都、大阪、奈良の3府県にまたがる丘陵地を切り開いて整備された。東西、南北にそれぞれ約20キロメートル、総面積は1億5000万平方メートル。文化学術研究地区の面積は3600万平方メートルで、約6割が整備済みだ。
 学研地区には3月末で133の企業、研究機関が進出した。研究者、職員数は16年4月時点で約8500人。道路や鉄道の整備も進み域外とのアクセスも改善した。3月には、北陸新幹線の新駅が学研都市エリアの北側の松井山手付近(京都府京田辺市)に新設されることも決まった。
【にぎわい出る】
 もともと学研都市には研究施設や大学関係の施設しか立地できなかった。しかしバブル崩壊後の不況で研究機関の立地は伸び悩む。そこで京都府、大阪府は03年以降、工場立地も可能にする規制緩和に動いた結果、研究開発型の中小企業の進出が進んだ。現在では133のうち半分の65施設が研究開発型企業。進出を望む企業が相次いでおり、今後も新たな用地の整備が自治体により進められる。

知の集積、“化学反応”促す

 関西文化学術研究都市推進機構の柏原理事長は「企業進出が進み都市ににぎわいが出てくると、多くの企業が研究所を作ろうかとなる」と手応えを話す。実際、15年にサントリーワールドリサーチセンターが開所し、16年には京都大学大学院農学研究科付属農場が開場。18年には三菱東京UFJ銀行事務センター、日本電産生産技術研究所が開所予定となるなど、最近も大型の立地が続いている。
【「超快適」研究】
 けいはんなの今後の課題は、これらの研究機関の集積をどうやって生かすか。その一つが「けいはんなリサーチコンプレックス(RC)」事業。「『超快適』スマート社会の創出」を目指し、3月にスタートしたばかり。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、オムロン、京セラ、京都銀行、サントリーホールディングス、島津製作所、大和ハウス工業、パナソニック、京大、阪大、同志社大など、2研究機関、8大学・高専、16社が参加する。
 脳・人間科学技術と人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)などを中核技術として「ココロの豊かさ」につながる技術開発と事業化に取り組む。けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK、京都府精華町)に実験施設「メタコンフォート・ラボ」を整備中で、6月には完成予定だ。
 実験では照明や空調、映像、香りなどを制御し、心の状態を推定したり、生体情報をセンシングしたりする。ヒトの心理、行動、生体情報のビッグテータを解析し「超快適」のデータベースを構築する。色温度や色そのものを変更できる照明、外の景色が変化する疑似窓などによって、人への影響を調べる。
 例えば会議で新しいアイデアが出るのは、どのような時か。同施設では左右に同じ部屋を設けて、AIにより制御。左右の部屋で設定を変えるなどして比較する。情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センターの對馬淑亮研究員は「(会議の生産性を上げるために)AIが会議中に休憩を提案するようなパッケージとして、世に出す事業化は考えられる」という。

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最終更新:4/19(水) 14:05

日刊工業新聞電子版