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身内びいきで始まったトランプの「戦争」

4/19(水) 20:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

まるで、映画のような展開だった。

4月6日、トランプ米大統領とヨルダンのアブドラ国王との会見直前に、シリアで子どもを含む市民に対する化学兵器の攻撃が発覚。トランプ氏は会見で、極めて珍しいエモーショナルな声のトーンで語った。

「無実な、無垢な子ども……無実な、愛らしい赤ん坊まで……攻撃された。シリアとアサド政権への考え方が変わった。いくつもの一線を超えてしまった」。幼い子どもたちの動かない肢体が写った写真が、トランプ氏をしんみりとさせた。それから24時間も経たずに、 化学兵器の備蓄があるとされるシリア空軍基地を米軍が、ミサイル攻撃し、全世界にショックを与えた。

「やっと、トランプがガッツを見せた」。と話すのは、ニューヨークに住むアパート経営者のトランプ支持者、ホゼ。「でもミサイル攻撃で、民間人が巻き込まれる可能性もあった」と指摘すると、きっとなってこう反論した。

「いや、トランプはオバマ(前大統領)が放置していた、当然破壊すべき化学兵器を取り除いただけだ。オバマがシリア問題で何も手を下さなかったから、子どもたちが犠牲になった。子どもたちが死んでいくのは、見過ごせない。トランプは心ある人間として、当然のことをしたまでだ」

サウスカロライナ州元知事で、新たに国連大使に就任したニッキー・ヘイリー氏も、テレビ番組でこう強調した 。

「(ミサイル攻撃は)世界中で、成功したとみられている。アサド大統領を用心深くさせるには、十分だっただろう。化学兵器を使おうとする、あるいは無実な人々を攻撃しようとする人物がいれば、今後は二の足を踏むだろう。そうなるべきです」。強硬派が勢いを得たことをうかがわせる場面で、世界の独裁国家を監視する「警察国家」に、アメリカが返り咲いたような発言だ。

一貫性のないトランプ・ドクトリン

このミサイル攻撃で一部の米メディアは、トランプ氏の外交政策を「トランプ・ドクトリン」と呼び始めた。しかし、中身は極めて不透明だ。

「ドクトリンにとらわれるな、というのが、トランプ・ドクトリンのようだ」(ニューヨーク・タイムズ)

「トランプ氏は、単に柔軟性があるんだと説明するのだろう」(AP通信)

子どもや赤ん坊に同情を寄せたものの、確かに一貫性はない。 トランプ氏は、主にシリアなど中東からの難民が、「テロリストとしてアメリカを攻撃する」として、イスラム圏諸国からの旅行者・難民の入国を禁止する大統領令に二度も署名している。化学兵器による市民攻撃には今回制裁を加えたが、難民は救済しないという矛盾がある。トランプ支持者も、「難民はアメリカにテロと伝染病を撒き散らす」というオルタナティブ右翼系サイトのフェイク・ニュースを信じているものの、シリア攻撃は歓迎し、論理性にも欠ける。

アサドが暴れれば、トランプが制裁する ーー 。いきなり映画のようなシナリオがどうやって、実現したのか。それは、就任から約80日経っても、ホワイトハウスの中の混乱状態を収めきれない新人政治家トランプ氏を取り巻くドタバタぶりを反映している。

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最終更新:4/19(水) 20:10
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