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英総選挙の前倒し、知っておきたい5つのこと

ウォール・ストリート・ジャーナル 4/19(水) 12:07配信

 英国のテリーザ・メイ首相は18日、総選挙を6月8日に実施することで議会の承認を求める意向を明らかにした。予定されていた総選挙(2020年5月)よりも3年早い実施で、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る交渉がEUとの間で本格化する直前に行われることになる。

 英総選挙について知っておきたい5つのことをまとめた。

1. 英国の統治システム

 英国は二院制の議会制度をとっている。下院で行われる総選挙では、有権者はおおむね、自ら支持する政党の地元代表者を選ぶ。最も多い議席を獲得した党のリーダー(党首)が政権を担い、首相に就任する。全650議席が争われ、メイ首相はブレグジットの条件をめぐるEUとの交渉での自らの立場に対する国民の支持を強固にしたい考えだ。

2. 獲得議席数の算段

 英国下院の「単純小選挙区制(多数得票制)」では、最も多くの票を勝ち取った政党に大多数の議席が与えられる傾向がある。全体的な得票率の差がわずかであってもそうだ。

 例えば2015年の前回総選挙では、保守党(現在はメイ氏が党首)の得票率は投票総数の36.9%にとどまったが、下院定数の過半数の331議席を確保した。最大野党・労働党の得票率は30.2%だったが、獲得議席数は232議席だった。

 この制度の「勝者総取り」的な性質は、弱小政党が関係しているときに一層鮮明になる。英国独立党(UKIP)は多くの選挙区で2位だったが、獲得した議席数はわずか1議席だった。スコットランド民族党(SNP)の得票率は英国全体では5%にも満たなかったが、獲得議席数は56議席に達した。これはSNPへの支持が(スコットランドという)一つの地域に集中したからだ。

 結局のところ、メイ氏は世論調査でライバルの各政党を大きくリードしており、半数を相当大きく上回る議席を獲得する可能性がある。総議席数の半分(325議席)を100議席あるいはそれ以上、上回るかもしれない。

 ただし、アナリストからは懐疑的な声も出ている。スコットランドでのSNPの躍進の結果、2大政党(保守党と労働党)のいずれかが、マーガレット・サッチャー元首相やトニー・ブレア元首相のように過半数をさらに100議席上回るほどの議席を勝ち取ることが、以前よりもはるかに難しくなっているというのだ。

3. 固定任期議会法

 メイ首相の総選挙要求は、英国で古くから続く議会システムに組み入れられた比較的新しい特色、すなわち2011年に制定された固定任期議会法の最初の試金石になるだろう。同法は、議会の統治期間を5年間として確立したもので、2010年から15年までデービッド・キャメロン前首相の下で実現した異例の連立政権を安定させる一助となるように作成された法律だった。

 同法の定めによれば、次回総選挙の実施は2020年だ。しかしメイ首相は、「下院の3分の2の支持があれば早期(前倒し)総選挙を認める」とした同法の条項を使おうとしている。

 労働党は前倒し総選挙を支持すると述べている。総選挙実施の可否を巡る19日の採決で、メイ首相は必要とする3分の2の支持を得られる公算が大きい。

4. なぜ今か?

 メイ氏が与党・保守党党首(そして首相)になったのは昨年7月だった。ブレグジットに反対だったキャメロン前首相が前月の国民投票での敗北を受けて辞任したため、そのあとを引き継いだ。総選挙で勝利すれば、メイ首相は自身への批判を黙らせることができるだろう。メイ氏は不戦勝で党首になったのだから国民の負託を得ていないとの批判を受けてきた。

 もっと大きな要因は、与党は下院の安定多数をわずか17議席しか上回っていない現状だ。その結果、保守党の造反議員が議会の採決で野党議員と手を組めば、同氏は主要な争点で敗北しかねない状況にある。

 メイ氏は18日、総選挙で議会のブレグジット反対派を一掃し、対EUでの自身の交渉力を強めると述べた。

 投票日が6月8日ということは、欧州の指導者たちが英国との交渉を本格化させる前に優先順位を討議している最中に総選挙を実施することを意味する。

 エコノミストたちは、総選挙の前倒しは時宜を得ているとみている。英国経済は底堅いものの、鈍化の兆しを示し始めており、そうした鈍化傾向が今後強まる公算が大きいからだという。

5. 世論調査の結果は?

 世論調査では、メイ氏が総選挙で楽に勝利することが示唆されている。例えば世論調査機関YouGov(ユーガブ)の4月の調査では、保守党支持率が44%で、労働党の23%を大きく上回っている。

 メイ氏の個人的な人気度も、労働党ベテラン左派であるジェレミー・コービン党首をはるかにしのいでいる。同じくYouGovの調査では、メイ氏のほうがコービン氏よりも有能な首相になると回答した人が全体の50%を占めた。反対に、コービン氏のほうが有能な首相になるとの回答は14%にとどまった。

 また世論調査によれば、スコットランドの英国からの分離独立を支持しているSNPがスコットランド地方で再び最大の議席を確保する見通しだ。そうなれば、独立に関する住民投票を再度求める圧力が増すことになる。

By Jason Douglas

最終更新:4/19(水) 14:15

ウォール・ストリート・ジャーナル