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エントリー向けNASキット4製品を徹底比較 読み書き速度・駆動音・バックアップ設定編

ITmedia PC USER 4/20(木) 6:10配信

 NASはセットアップが完了してPCから読み書きができるようにさえなれば、製品の違いを意識する機会はそれほど多くない。ユーザーが普段から意識するのは、むしろ読み書きの速度、さらに駆動音の騒々しさといったハードウェアにまつわる部分だろう。今回はこの2点についてチェックする。

【画像】NAS本体背面の騒音はどれくらい?

 また、データを安全に保護するための機能として重要なのがバックアップ機能だ。これについては設定のしやすさもさることながら、継続的にメンテナンスフリーでの運用が可能かどうかも大きなポイント。今回は最もスタンダードなバックアップ機能である「USB HDDへのバックアップ方法」についても比較していく。

 ←・第1回:エントリー向けNASキット4製品を徹底比較 組立・セットアップ編

●その3:読み書き速度

 前回に解説したセットアップが完了した時点で、いずれの製品も共有フォルダに対する読み書きが行える状態になっている。今回はそれら共有フォルダに対して、ベンチマークテストアプリ「CrystalDiskMark 5」(64bit)で読み書きを行った場合の速度差を比較する。

 なお、NASは1台のPCに接続して使うUSB HDDとは異なり、ネットワーク経由で他のユーザーと同時に読み書きする可能性がある。複数のユーザーが同時にアクセスした際、パフォーマンスにどの程度影響が及ぶかは、NASの性能を知る指標として重要だ。

 そこで今回は、複数のユーザーがNASに同時アクセスしている状態を疑似的に再現すべく、2台のタブレットでNAS上の動画を再生しながら読み書きテストを行い、通常時とのパフォーマンスの差をあわせてチェックしている。

 検証は、4製品を同一LAN(ギガビット環境)上に設置したのち、CrystalDiskMark 5をインストールした有線接続のノートPC(ThinkPad X1 Carbon)で行っている。NASに用いているHDDは、いずれもSeagateのEnterprise NAS HDD「ST6000VN0001」である。

Synology「DS216j」の読み書き速度

 通常時は読み書きともに100MB/秒を超えているが、同時アクセス時の読み出し速度はかなりの速度低下がみられる。ランダムアクセス時(2行目と4行目)の速度はかなり控えめで、メモリが512MBと他製品の半分以下であることが影響しているようだ。一方、読み出しに比べて書き込みが高速なのは、他製品と比べた場合の強み。5点満点で3点。

QNAP「TS-231P」の読み書き速度

 全体的な値はSynologyのDS216jと酷似しており、シーケンシャルアクセス(1行目と3行目)に比べてランダムアクセス時に速度が低下する傾向もほぼ同様だ。ただし、同時アクセス時のパフォーマンス低下はDS216jほどではなく、今回紹介する中で最も同時アクセスの影響を受けにくい製品といえる。5点満点で4点。

ASUSTOR「AS3102T」の読み書き速度

 シーケンシャルアクセス時の読み書き速度は他製品と同等で、同時アクセス時もそれほど強みはない。特筆すべきはランダムアクセス時の読み書きの速度で、他製品の10倍近い速度をたたき出すことも。プロセッサにCeleron採用、メモリ2GBというハードウェアスペックの高さが影響していると考えられる。5点満点で5点。

アイ・オー・データ機器「HDL2-AA0/E」の読み書き速度

 読み出し速度こそ他製品と同等だが、シーケンシャルアクセス時の書き込み速度が4製品の中で唯一100MB/秒を切っている。同時アクセス時はランダムアクセス時(4行目)がやや高いことを除けば全体的に低く、見るべき点は少ない。読み出しに比べて書き込みが高速なのが救いだ。5点満点で3点。

読み書き速度の総評

 各製品を採点すると、5点満点で3~5点に分布するが、全ての製品が通常時は100MB/秒前後で読み書きが行えており、どの製品も致命的に使えないわけではない。明らかにほかと違う傾向を示しているのがASUSTORのAS3102Tで、ランダムアクセスに強みを持つことから、小さいサイズのファイルを大量に保存して頻繁に書き換えを行う使い方で威力を発揮しそうだ。

●その4:動作音

 NASを家庭内もしくはオフィスに設置するにあたり、どの程度の騒音を発するかは気になるところ。今回は簡易な騒音計を用いて、本体背面にある廃熱用ファンから5センチ前後の距離で何dBの音が生じているかを測定した。

 測定はファンだけが回転している状態(通常時)と、HDDへのアクセスが発生して「ガリガリ」というシーク音が聞こえている状態(アクセス時)の音量を測定している。実環境ではNAS背面に近い距離で音を聞くことはあまりなく、また周囲の環境によっても聞こえ方は変化するので、あまり厳密な測定方法ではない点はご了承いただきたい。

Synology「DS216j」の動作音

 通常時は40dB前半と他製品に比べてやや音が大きいが、HDDへのアクセス時も50dBを超えることがなく、静かな時とそうでない時の差があまりないのが特徴。静かな部屋に設置すると動作音が気になる可能性はあるが、ある程度の生活音がある環境であれば、HDDへのアクセス時も含めて存在が気になりにくい製品といえる。5点満点で4点。

QNAP「TS-231P」の動作音

 通常時は40dB前半で、HDDへのアクセス時は50dB前半へと跳ね上がる。外部に音が響きやすい構造なのか、今回紹介している他社製品と並べると際立って騒々しく感じられる。5点満点で2点。また同社製品はビープ音がけたたましく、通常利用時でもエラー通知と誤解しかねない大きな音が鳴り響く。音に敏感なユーザーは設定でオフにするなど、対策を施したほうがいいだろう。

ASUSTOR「AS3102T」の動作音

 通常時は30dB後半と控えめだが、HDDへのアクセス時は50dB前半にまで跳ね上がる。構造的にHDDのシーク音が外部に響きやすいようで、静かな時とそうでない時の差は他製品に比べると大きい。深夜の時間帯にスケジュールバックアップを設定していると、就寝中にシーク音が耳障りに感じる場合も多そうだ。5点満点で3点。

アイ・オー・データ機器「HDL2-AA0/E」の動作音

 通常時は30dB後半で、HDDへのアクセス時も40dB前半にとどまるなど、他の製品に比べて静粛性は極めて高い。HDDの裏面を向かい合わせに本体に組み込む構造が、防音上有利に働いている可能性がある。5点満点で5点。起動時にやや騒々しいのがネック。

読み書き速度・駆動音の総評

 NASはファームウェアの更新やバックアップのスケジュール設定などで、ユーザーが操作していなくともディスクへのアクセスが発生することがある。そのため寝室に設置する場合は、不意にHDDアクセスが発生することを想定し、通常時が多少騒々しくてもアクセス時との騒音の差が少ない製品を選んだほうが気になりにくい。

 ただし、これは電源を常時オンにしておく場合の話で、利用時のみオンにする運用であれば、こうした点は考慮しなくてもよいことになる。今回の結果だけ見るとアイ・オーの製品が有利だが、それ以外の3製品からチョイスする場合は、製品の設置場所や運用方法、また省電力設定なども踏まえて判断したい。

●その5:バックアップ設定

 次にチェックするのはバックアップ方法だ。2ベイのNASであれば、RAID1もしくはそれに準ずる各社独自の冗長化機能をサポートしているため、内蔵ドライブ2台のうち1台が破損しても、もう1台から復旧できる。しかしNAS本体が故障した場合はその限りではないため、外付けのUSB HDDに定期的にデータを書き出しておくのはデータを保護するのに極めて有効な方法だ。

 ここではバックアップにまつわる具体的な設定手順と詳細な項目、さらにバックアップデータからの復元方法についてチェックする。複数のバックアップツールが用意されている場合は、バックアップ先としてUSB HDDが選択できることを条件に、なるべくデフォルトで搭載されているバックアップツールを用いてテストを行っている。

Synology「DS216j」のバックアップ設定

 「Hyper Backup」を利用してバックアップ設定を行う。設定のフロー、画面のデザインともに分かりやすく、いったん保存した設定の修正も容易だ。バージョン管理機能もサポートしており、日付を指定して過去のバージョンを復元できる。その際、バックアップローテーションを有効にすれば指定よりも古いバージョンを自動削除できるので、USB HDDの容量がいっぱいになりタスクが停止する事態を防げる。

 ファイルを復元する際は「バックアップ エクスプローラ」を表示し、ファイルもしくはフォルダを選んだのち、保存されているバージョンを選択して復元を実行する。保存先は元の場所のほか任意の場所も指定でき、単一ファイルの場合はダウンロードも可能。完成度は極めて高い。あえて他社にない機能を挙げるならば、1時間以下の頻度でのバックアップをサポートしないことくらいだろうか。5点満点で5点。

QNAP「TS-231P」のバックアップ設定

 「バックアップマネージャ」を利用してバックアップ設定を行う。スケジュール設定ではリアルタイムのほか、最短1分間隔でのスケジュールバックアップが可能だが、「毎週月曜と木曜」など2つ以上の曜日を指定できない。また複数の共有フォルダを一度に指定できないことや、フォルダの指定を間違うといったん設定を削除して再度設定しなくてはいけないなど、全体的に融通が利かない印象だ。

 なお、本アプリはバージョン管理および復元機能をサポートしない。β版として提供されているアプリ「Hybrid Backup Sync」ではこれら機能も用意されているが、今回試した限りでは復元ソースが表示されないなど、動作は不安定。メニューの日本語訳も不完全であるなど、代替として使うには時期尚早のようだ。このアプリをインストールするとバックアップマネージャを置き換えてしまうので注意したい。5点満点で3点。

ASUSTOR「AS3102T」のバックアップ設定

 「バックアップと復旧」を利用してバックアップ設定を行う。基本的な機能こそそろっているが、バックアップの最短間隔が1日1回と、他社製品のような頻繁なバックアップができないほか、ファイルごとのバックアップ状況をログで確認できない(ジョブが成功したか失敗したかのみ記録される)など、他社製品を使ったあとで本製品を使うと、物足りなさを感じる点が多い。

 また現状ではバージョン管理機能もなく、復元についてもウィザードが用意されていないなど、付加機能については他社に大きく遅れている状況だ。「スパースファイルレプリケーション」など英語を片仮名に置き換えただけの文言も多く、分かりやすさという点でも課題が残る。5点満点で3点。

アイ・オー・データ機器「HDL2-AA0/E」のバックアップ設定

 「データバックアップ」を利用してバックアップ設定を行う。一通りの機能はそろっており、Synologyと同様に複数の曜日を指定してのバックアップも可能だが、月単位でのバックアップには対応しないほか、最短間隔は1日1回となる。またバックアップおよび復元は共有フォルダ単位での指定となり、共有フォルダ内の子フォルダを指定することはできない。

 最大の問題点はインタフェースの分かりづらさで、設定画面はウィザード形式ではなく1つの画面であらゆる項目を入力する方式のため煩雑で見づらい。設定完了などを知らせる通知が小さすぎて見落としやすいなど、インタフェース周りのデザインが全体的に雑な印象だ。

 バックアップ実行中もパーセンテージや経過時間が表示されないなど、他社では当たり前にできることができないケースが多い。機能の実装よりもこちらの見直しが急務だろう。5点満点で3点。

●バックアップ設定編の総評

 基本的な機能は各社ともにカバーしているが、設定のきめ細かさとインタフェースの分かりやすさ、さらにバージョン管理の充実度でSynologyが頭1つ抜けている。QNAPは現在β版の「Hybrid Backup Sync」が使えるようになって初めてSynologyと対等に渡り合えるだろう。ASUSTORはバージョン管理と復元ウィザードの実装が急務。アイ・オーは何よりインタフェースを他社並みに分かりやすくすることが求められる。

最終更新:4/20(木) 6:10

ITmedia PC USER