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国登録文化財「平楽寺書店」、解体・抹消へ 京都市内で初

京都新聞 4/20(木) 8:30配信

 京都市中京区にある国登録有形文化財(建築物)の近代建築「平楽寺書店」の店舗が、今月から解体される。築約90年で老朽化が進み、所有者は維持改修を検討したが、費用は自前で賄う必要があり断念した。新たにマンションを併設した店舗兼住宅に建て直すことにした。解体により国の文化財登録が抹消されることになり、京都府内で2例目、京都市内では初めてとなる。
 同書店は、江戸時代から続く仏教関連書籍の出版社。登録有形文化財の店舗は、1928年頃建築の鉄筋コンクリート造り3階建てで、外観はトスカナ式の柱が特徴的な洋風建築だ。未登録の木造2階建ての住宅とつながっている。
 店舗の床はボールが転がるほど傾いている。隣にホテルを核とした複合施設が建設されるのを機に、木造住宅を含めた耐震化や改修を検討するため、所有者が市文化財保護課に昨夏、相談した。市などが認定する、歴史的建造物の保存・活用やまちづくりに関わる「京都市文化財マネージャー」の建築士らと店舗兼住宅として使い続ける方法を考えたが、費用などの課題を解決できなかった。
 登録有形文化財は、現状保存を重視する指定文化財よりも緩やかな制度。建物の外観を維持すれば内部の改装も可能だが、維持・修復に対する国の補助対象は設計監理費の一部のみで、工事費は所有者が捻出する必要がある。
 井上一社長(77)は「小規模な出版社なので、潤沢な改修資金はない。将来を総合的に考えて、建て替えることにした」と話す。現店舗の扉や看板、内装は残し、できる限り現在の雰囲気をとどめる計画だ。
 市文化財保護課は「飲食店やイベント会場などにも活用できる柔軟な制度の半面、行政は法的に取り壊しを止められない」と悩ましそうだ。
■所有者支援、充実を
 近代建築の保存活用に詳しい京都工芸繊維大の笠原一人助教(近代建築史)の話 建物の歴史的価値を残しつつ、経済的負担も少なくしながら、地域の活動拠点や商業施設などに活用するといったアイデアや情報が、所有者に日ごろから十分届いていない。所有者が折に触れ、専門知識を基に活用法を考える機会があれば、解体と違う選択もあったかもしれない。専門家による所有者支援の充実と、登録有形文化財や文化財に未指定・未登録の建物を容易に解体できないようにする仕組み作りが急務だ。

最終更新:4/20(木) 8:30

京都新聞