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給食にシカやイノシシ肉 広がる「ジビエ給食」自治体競いあい

ZUU online 4/20(木) 6:10配信

害獣駆除で捕獲されたシカやイノシシの肉を給食に出す学校が増えている。ジビエと呼ばれる野生鳥獣の肉はレストランの高級食材として人気が高まっているが、国内ではシカやイノシシが増えすぎて農林業の被害が拡大している。そこで、給食に出すことにより、子どもたちに命の尊さを教えると同時に、食材として利用しようという試みだ。

だが、狩猟に従事するハンターの数は減少し、高齢化が進んでいる。価格の高さも難点で、調理に気を使う。中山間地域の地方自治体は将来、ジビエを地域の特産品にしようと目論んでいるが、思惑通りに進むのだろうか。

■シカ肉のラザニア、カレー、イノシシ肉のボタン汁が登場

「いただきます」。伊豆半島最南端にある静岡県南伊豆町の南中小学校で2月、地元産のシカ肉を使ったラザニアが給食に登場した。ラザニアは子どもたちの人気メニュー。「食感が良い」と大喜びで、おいしそうに食べていた。

ジビエが給食の食材になったのは、この日が初めて。町内で深刻化するシカやイノシシの食害を子どもたちに理解してもらおうと、町教委が特別予算を組んで町内の小中学校5校で実施した。

町内の野生獣肉処理センターから仕入れたシカ肉は14キロ。ニンニクと赤ワインを加えて炒め、野菜やチーズとともにオーブンで焼き上げた。シカ肉はたんぱく質が豊富で、脂肪分が少ないヘルシーメニュー。町教委は「食害の現状と命の大切さを教えることも教育の一環。子どもたちには給食を通じて地元のことをもっと学んでほしい」と狙いを説明した。

和歌山県南部の古座川町では、シカ肉を使ったジビエ料理が2016年11月から毎月1回、町内の小中学校4校で給食に登場する。メニューはカレーとシチュー。調理員が硬くならないように肉だけを分けて加温するなど、手間をかけて調理している。

町もシカやイノシシの食害に悩まされているが、動物の肉を山の恵みと受け止め、命の大切さを子どもたちに知ってもらおうと給食に導入した。町教委は「2017年度も月に1回、地元の食材を給食に利用する中で、シカ肉を採り入れていく」としている。

奈良県西部の五條市では2016年度、計3回のジビエ給食が市内の幼稚園、小中学校2園13校で提供された。メニューはボタン汁、カレーライス、麻婆丼。使われた肉はいずれも五條産のイノシシ肉だ。市の食肉処理加工施設で加工された新鮮な肉を市立学校給食センターが子どもに合うようアレンジした。

市の給食にイノシシ肉が登場したのは2016年1月から。近年、イノシシやシカの食害が市内各地で発生し、農作物に大きな被害が出ている。対策を講じるのが大変なことから、離農に拍車をかける状況となっていたが、逆転の発想でこれを地域の特産に育てようと考えた。

その普及と食育を兼ねてスタートしたのが、給食への提供。1年目は年1回だったが、2年目は3回に回数を増やした。市立学校給食センターは「子どもたちの反応は上々。これからも給食に提供していきたい」と語った。

■福岡や徳島では県を挙げて商品化を推進

ジビエは狩猟で捕らえた野生鳥獣の食肉を意味するフランス語。昔は貴族ら上流階級が狩猟シーズンに食べていたが、今はフランス料理の定番の1つに定着している。日本でも中山間地を抱える自治体の多くが新たな特産品に育てようと力を入れている。

背景にあるのは、シカやイノシシを中心とした鳥獣被害の増加だ。農林水産省によると、鳥獣による2015年度の全国農作物被害は金額が176億円、被害面積8万1000ヘクタール。前年度に比べて金額で15億円、面積で300ヘクタールの減少となったが、依然として大きな被害が出ていることに変わりない。

以前は駆除した動物を山中に埋めるなどしてきたが、これを食材として活用し、地域振興を図ろうとしているわけだ。福岡県は2013年から「ふくおかジビエ研究会」を設立し、肉の解体方法講習会やジビエフェアを開き、普及に努めている。

徳島県は2012年度から県のガイドラインに則したジビエ料理を提供する飲食店を認定し、観光客らに売り出している。長野県小諸市は2016年、自前の解体加工施設を整備し、害獣として駆除したシカ肉のペットフード化を始めた。

だが、地域の特産品に育てるには消費拡大を図らなければならない。給食に相次いで導入が進む背景には、子どもたちの食育に活用するだけでなく、マスコミを通じて特産品として情報発信しようとする狙いも見える。

■安定供給に向け、ハンターの確保が必要

ジビエを特産品とするためには、安定供給が必要になる。おいしく食べるには捕獲後2時間以内に肉の加工場へ持ち込まなければならないとされ、狩りをしたうちの数%しか食用に流通していないのが実情だ。

ハンターの数も急減している。環境省によると、1970年に全国で50万人以上いたが、2010年には20万人を割り込んでしまった。高齢化も進み、7割以上を60歳以上が占める。地方の人口減少、高齢化とともに、ハンターが生業として成り立たなくなっているからだ。

給食の食材とするだけでは、地域の発展に結びつかない。こうした課題をどう克服し、ジビエを地域の産業として根づかせていくのか。中山間地域の自治体には、大きな課題が残されている。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:4/20(木) 6:10

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