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東大の産学連携ベンチャーが土壌センサー発売、農業改革に挑む

アスキー 4/20(木) 11:00配信

東大発の産学連携ベンチャーがプリンテッド・エレクトロニクスとIoTを組み合わせた農業管理サービスを発表。データーによるハイテク農業を目指す。

 SenSproutは4月20日、IoTを活用した農業向けセンサー「SenSprout Pro」を農業法人や農業従事者、研究機関向けに発売すると発表した。SenSprout Proは「土壌センサー」「ゲートウェイ」「クラウドサービス」がセットになったパッケージで、直販価格は19万9600円。土壌センサーとゲートウェイは単体販売もあり、それぞれ直販価格は9万9800円。いずれも5月上旬から順次出荷開始する。クラウドサービスは、ベータ版キャンペーンとして、10月まで無料で提供される。
 
 土壌センサーは深さ10cmあるいは20cmのセンサー部分が触れている土壌水分量と地表付近の気温を測定。ボタンを押して電源を入れるだけで計測を開始する。手で挿し込むだけで土壌に密着しやすい板型構造になっており、土壌の複数深度を1台で計測できる。単三電池2本で最大約1年間継続運転し、ゲートウェイとの接続は配線不要で作物の影響を受けにくい920Mhz帯無線通信。ゲートウェイは電源に接続するだけでセンサーとの通信を開始し、半径約150mの範囲内に最大99台までのセンサー設置/接続が可能という。収集したデータはグラフ化されたものがリアルタイムで表示され、露地やハウスのデータをグループで共有もできる。設定した数値を外れた際や異常発生時にはメールで通知する。
 
 SenSproutのクラウドサービスでは、センサーから取得したデータを解析し、リアルタイムでの確認ができる。生産管理者の多い大規模環境でもスムーズにデータ共有する「メンバー招待機能」や、自動で土壌の変化を検知してお知らせする「通知機能」などがある。土壌環境チェックが遠隔化できるため見回り回数が減らせるという。計測した数値は測定期間を指定したグラフ解析が可能で、CSV形式でのダウンロードにも対応する。
 
東大の印刷回路研究による産学連携
 SenSproutは東京大学発の産学連携ベンチャー企業で、電子回路を印刷生産する「プリンテッド・エレクトロニクス」を用いた、土壌センサー及びソリューションを企画・開発している。
 
 農産物生産は水やりや施肥の頻度・量が作物の品質を大きく左右するが、栽培ノウハウが確立されている日本においても、水やりや施肥の効果は目に見える土壌や作物の状態といった経験則でしか判断できなかったと同社は指摘。これをデータに基づく栽培管理に転換することで、収穫量や品質が向上し、圃場が保っている水分や養分が長期的に安定するとしている。
 
 また、これまで各農家独自の栽培知識をデータ化して次世代に継承することは、日本の農業における喫緊の課題の一つであると同社は主張する。日本における農業従事者の高齢化・減少が深刻化している中で、過去のデータに基づくきめ細やかな栽培により、作業者の経験年数によらない農作物の増産と高品質化を同社は目指している。
 
 これらの課題を見据えた上でSenSprout Proが開発されたと同社は語る。作物ごとに異なる幅広いデータ収集のために、測定器とセンサー部分は交換可能な分離式で設計されており、多様なセンサーの小ロット・低コスト生産をプリンテッド・エレクトロニクス技術が支えているとする。
 
 SenSprout Proは2015年から試作開発を開始。国内20箇所以上農業生産法人や個人農家、研究機関の露地やハウスに、累計約300台の土壌センサーを設置して実証実験を重ねた。対象作物も水菜や春菊などの葉物野菜のほか、長芋などの根菜類、トマトなど果菜類、ブドウやミカンなどの果樹類と、多様な品種にわたる。これまで、ハウスごとに異なっていた収穫量や品質の差に対するデータによる裏付や、水はけ条件の異なる環境の灌水効果測定などに成功している。
 
 同社では今後、深度や測定点数、測定項目が異なる様々なセンサーの提供を予定しているという。
 
 
文● 天野透/ASCII

最終更新:4/20(木) 11:00

アスキー