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巨人V奪回の鍵握る“サカチョー”コンビ明暗 長野、不振の原因は? 相方・坂本は絶好調なのに…

夕刊フジ 4/20(木) 16:56配信

 【柏英樹の勝負球】

 巨人の選手会長、長野久義外野手(32)がかつてない不振にあえいでいる。17日現在、打率・152、本塁打と打点はゼロ。最近2試合はスタメンを外れた。対照的に、その長野と“サカチョー”コンビを形成する主将の坂本勇人内野手(28)はリーグトップタイの打率・375をマークし絶好調だが、コンビの相乗効果なくして、首位広島に3ゲーム差の3位・巨人の浮上も、3年ぶりのV奪回もない。フリージャーナリストの柏英樹氏が迫った。

 まず、長野本人に聞いてみる。

 --どうなっちゃたの?

 「練習ではいい感じなのに、試合になると…」

 --江藤打撃コーチは技術的なものではなく、打ちたい打ちたいと焦っているのではないかとみているけど

 「それもあるでしょう。とにかくこんなに打てないのは初めて。みんなに迷惑をかけているので、なんとかしないとですね」

 長野は一昨年オフ、右ひじと右膝を手術した。チーム内ではその後遺症を指摘する声がある一方、公にはしていないが、右の首筋を痛めているとも聞く。32歳の肉体は曲がり角を迎えているのかもしれない。

 一方、坂本はリーグトップタイの打率・375(17日現在)。この2人は仲が良い。

 2012年のチーム最終戦(対横浜DeNA)。坂本がこの日3本目の安打を右前に放ち、リーグ最多の173安打を放っていた長野に並んだ。

 「長野、どうする?」。打席に向かう長野に、当時の原辰徳監督が聞いた。この打席に入ってヒットを打てば単独でのタイトル獲得という名誉が手に入るのだ。

 しかし長野は「引っ込みます」と即答。坂本との同時受賞を選んだ。ベンチに戻った長野が、二塁ベース上にいる坂本に両腕を突き上げて喜びを表したシーンは、いまだに語り草だ。

 ドラフトで2度も他球団に指名されながら巨人入りの意志を貫くなど、男気あふれる長野だが、この仲良しコンビの活躍で同年チームはリーグ優勝、さらに日本一に耀いた。“サカチョーコンビ”と呼ばれ、巨人打線の核となったのもこのころからだ。

 今季の巨人打線は、坂本が順調にヒットを積み重ね、阿部が驚異的な打棒を振るいなんとか持っているが、いまひとつ爆発力に欠けるのは長野の不振の影響が大きい。

 チーム内に力が拮抗したライバルがいると、相乗効果が生まれることが多い。巨人のV9時代の“ON”が典型例。お互い刺激し切磋琢磨して、より高みにのぼった。当時の宮崎キャンプでこんな話があった。

 夜の素振りで宿舎の駐車場に降りてきた2人は、壁を挟んで振り始めた。熱のこもったスイングを続け小一時間たった頃、「ミスターはもう終わったかな」と王貞治氏(現ソフトバンク球団会長)が手を休めて壁越しにのぞくと、長嶋茂雄氏(巨人終身名誉監督)はまだ必死の形相で振っていた。

 「こっちもまだまだやめられない」と王氏は再びバットを握りしめてスイングを始めたという。

 現役時代の松井秀喜氏と高橋由伸監督にも、同じようなことがあった。2人は東京ドームでの試合後には、必ず室内練習場でティー打撃に取り組んだ。ひとたび始まると、どちらも先にはやめようとしない。ナイターの後はいつも深夜におよび、武上四郎コーチ(故人)の「お前たち、いい加減にしないと日付が変わっちゃうぞ。次の1球で同時に終わりだ!」の声でバットを置く毎日だった。

 逆に、長嶋氏が現役引退した翌年(1975年)、気持ちの張りを失った王氏は精彩を欠いた。そこで76年、“安打製造機”こと張本勲氏(現評論家)をトレードで獲得し再生させたエピソードがある。

 高橋監督に「長野に、もうちょっと打ってもらいたいね?」と聞くと、「ちょっとでなく、もっともっとガンガン打ってもらいたいですよ」と強調した。コンビの相乗効果を知るだけに、その思いはひとしおだろう。

 ■長野久義(ちょうの・ひさよし) 1984年12月6日、佐賀県生まれ。筑陽学園高、日大、ホンダをへて2009年ドラフト1位で巨人入り。10年に新人王、11年に首位打者、12年に最多安打のタイトルを獲得。他にベストナイン、ゴールデングラブ賞各3回。妻はテレビ朝日アナウンサーの下平さやか。

 ■柏英樹(かしわ・ひでき) 1942年東京都生まれ。青学大時代はラグビー部主将。64年に報知新聞社に入社し、巨人担当などを務めた。ONとは41年間親交がある。99年1月からフリー。著書多数。

最終更新:4/20(木) 16:56

夕刊フジ