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「選考方式より強化策が大事」 日本マラソン界に疑問の声

日刊ゲンダイDIGITAL 4/20(木) 9:26配信

「画竜点睛を欠く」というより、餡このないアンパンだった。

 日本陸上競技連盟(以下陸連)は18日、2020年東京五輪に向けたマラソン日本代表(男女各3人)の選考方針を発表した。柱は、19年9月以降に開催予定の選考会「マラソングランドチャンピオンレース」(MGCレース=仮称)で男女各2人の代表を決めること。そのレースの出場権を得るための予選にあたる「MGCシリーズ」(17年8月~19年3月)では基準タイムや順位を設定する。

 また、「ワイルドカード」として、17年8月1日~19年4月30日までに開催される国内外の公認大会で基準タイムをクリアした選手及び、17年世界陸上8位入賞以内、18年アジア大会で3位以内などの選手もMGCレースの切符を得る。

 残る代表1人は、19年秋から20年春までの国内指定大会(ファイナルチャレンジ)で日本陸連の派遣設定記録を突破した選手で、記録最上位者を選出する。陸連のマラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦氏(60)は、「(選考会は)一本化という話も当然ありました」と認めつつ、「強化として選びたかったという選手が救われないのではないか」という意見もあって「完全一本化」は断念したという。しかし「ファイナルチャレンジ」は、五輪直前に注目度が低下する国内レースのスポンサーに配慮した結果だろう。

■選手強化は「決まっていない」

 陸上ジャーナリストの菅原勲氏は「選考会が完全一本化にならなかったのは残念だが、異なる条件のレース成績を比較していたこれまでの選考方法より基準も明確で、はるかにいい。今の時期に公表したのもマラソンで代表を目指す選手にとってはよかった」と評価する一方で、肝心要の選手強化について具体的な話がなかったことには首をかしげた。

 会見で瀬古リーダーは、強化方法について記者から質問されると「ちゃんとしたものはまだ決まっていない」と答え、河野匡長距離・マラソンディレクター(56)も、「2018年6月から8月が思い切った強化ができる時期。泥臭い、きつい練習を瀬古リーダーが考えてくれるだろう」とのんきなコメントだ。

「代表選びより大事なことは、具体的な選手強化策です。ナショナルチームを結成するのかしないのか、暑さに耐えるトレーニングはどうするのか、強化を主導するのは誰なのか、最後まで所属チームの監督に任せるのかなど、どれも代表を目指す選手はもちろん、我々も知りたいことです。五輪の代表選考は毎回、揉めてきた。東京五輪の代表選考は、これまで以上に注目される。批判されないように選考方法はかなり研究したことがうかがえますが、一刻も早く実施しなければならないのは選手強化です。今もって曖昧というのはどういうことなのか」と、前出の菅原氏は呆れ顔だ。

 瀬古リーダーは「今は一日一日がもったいない」と時間がないことは承知している。ならば、その一日を無駄にしないためにも、強化戦略プロジェクトリーダーとしてやるべきことはいくらでもあるはずだ。

■初マラソンで3位の大迫は米国留学中

 くしくもこの日、5000メートルの日本記録(13分08秒40)保持者・大迫傑(25)が初マラソンで、2時間10分28秒で3位に入った。ボストンマラソンで日本人が表彰台に上がるのは、87年優勝の瀬古リーダー以来だ。

 早大卒業後、実業団の日清食品グループに入った大迫は15年3月に退社。スポーツメーカーのナイキが運営する「ナイキ・オレゴン・プロジェクト」に所属し、東京五輪のマラソンで金メダルを取るために力を蓄えている。大迫がリスクの高い米国留学を決断した背景には、充実した環境やスタッフが魅力だったこともあるが、「指導者が勉強不足の日本にいても未来はない」との強い思いからだといわれている。

 大迫だけじゃない。リオ五輪の惨敗後に退任した宗猛・前男子マラソン部長の強化方針などに反発していた選手や指導者は少なくなかったが、早くも瀬古氏のリーダーシップに不安の声も上がっている。

 アフリカ勢が五十歩も百歩も先を行く今のマラソン界。強敵たちは、得意顔で五輪代表選びを発表した「ニッポン」を、鼻で笑っているのではないか。

最終更新:4/20(木) 9:26

日刊ゲンダイDIGITAL