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<若年性認知症>「働きたい」 カギは職場の病気理解

毎日新聞 4/20(木) 12:31配信

 若年性認知症と診断された人たちが働く場を求め、模索を続けている。大半は退職を余儀なくされるが、近年、働き方を変えて就労を継続する人も出始めている。26~29日、京都市で開催される認知症に関する世界最大の大会「第32回国際アルツハイマー病協会(ADI)国際会議」でも認知症の人の社会参加が大きなテーマの一つになっている。

 徳島市内の会社の喫煙所で、高倉敬治さん(60)=同市=が手慣れた様子で吸い殻を処理していた。昨年7月から、人材派遣会社の用務員としてトイレの清掃や植木の水やりをこなす。上着のポケットには、若年性認知症の高倉さんが仕事の内容を忘れないよう業務の一覧表がある。

 配管工だった4年前、上司の勧めで医師を訪ね、アルツハイマー型の若年性認知症と診断された。時間通りに仕事が終わらず、同じ場所で何度も頭をぶつけることがあった。職場に居づらくなり、間もなく退職。何もやる気が起きず約1年、家にこもった。

 失業保険が切れ、家のローンが残るが、仕事はなかなか見つからない。障害者向けの事業所に通ったが収入は月約1万円。ハローワークでは求人票を次々はねられた。

 診断から約3年、ようやく障害者雇用枠の契約社員として人材派遣会社に雇われた。社員が気付かない場所を整理して感謝されるとやりがいを感じる。だが、給料は配管工になる前の営業マン当時の3分の1。それでも「現状維持し、この仕事を続けたい」という。

 東京都町田市のデイサービス「DAYS BLG!」には認知症の人が通い、利用者は「メンバー」と呼ばれている。メンバーは近隣の自動車販売店の洗車や青果問屋の野菜配達など、地域の「仕事」を請け負い、依頼先から謝礼も受け取る。「認知症になっても社会の一員として働きたい」というメンバーの思いを実現したものだが、雇用契約はなく、「有償ボランティア」の立場だ。

 国は認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で、若年性認知症施策の強化をうたい、就労支援にも力を入れる。ただ、いったん退職すると、再就職するのは難しい。企業にとって認知症の人の雇用は、労災や会社の損害につながるリスクもあり、理解が進んでいないのが実情だ。

 「東京都若年性認知症総合支援センター」の駒井由起子センター長(55)は「(認知症の人の雇用を増やすには)職場で病気への理解があると就業継続しやすい。日ごろから研修したり、社員の健康状態を把握したりするなど備えることが重要だ」と話している。【野口由紀、細川貴代】

 ◇発症で9割が退職

 18歳以上65歳未満で発症する若年性認知症の人は、2009年の厚生労働省研究班の推計で全国に3万7800人。経済的負担が大きい「現役世代」だが、各種調査では退職する割合は80~90%に上る。

 就労継続や再就職の希望者には、ハローワークを中心としたチーム支援が受けられ、職場適応を手助けする「ジョブコーチ」が利用できる。障害者手帳を取得すると、企業の障害者雇用の対象となり、国から企業に助成金が支給される。ただ、こうした支援策の利用が十分に進まない面もあり、厚労省は16年度から、各都道府県に「若年性認知症支援コーディネーター」を設置し、当事者の要望や相談に一括対応する事業を進めている。【野口由紀】

最終更新:4/20(木) 12:41

毎日新聞