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<熊本地震>追体験を 東海大阿蘇学生が語り部ツアー

毎日新聞 4/20(木) 15:29配信

 昨年4月16日の熊本地震の本震で大きな被害を受けた熊本県南阿蘇村の東海大阿蘇キャンパスで学んだ農学部生らが、地震の体験を伝える語り部ツアーを続けている。アパートが倒壊した現場などを巡り、実体験を語り継ぐことで災害を身近な問題として捉え直してもらいたいと願う。地震発生から1年を機にツアーに同行した。

 ツアーを始めたのは昨年9月。地震を直接体験した学生4人が語り部の中心となり、約1時間にわたって地震の爪痕が残る各地をたどる。インターネット上で参加希望を受け付け、これまでに20回以上実施した。

 15日午後3時ごろ、県外から来たボランティアや企業関係者ら約10人が同村河陽の旧長陽西部小学校のグラウンドに集まった。「ここに住民が避難しましたが、暗闇の中、余震の音と(携帯電話の)緊急地震速報の音が響き続きました」。代表の農学部4年、石田仁星さん(21)が本震発生直後の様子を語り始めた。グラウンドには重傷者らが次々と運ばれ、ドクターヘリで搬送されたという。

 次に、農学部4年の脇志朋弥さん(当時21歳)が犠牲となった倒壊アパートの現場に移動。隣のアパートに住んでいた農学部3年、国貞尚伸さん(20)が当時の写真を手に説明する。

 国貞さんが外に飛び出すと、脇さんのアパート1階部分がつぶれていた。その場にいた学生らと取り残された学生を助け出したが、脇さんだけ救えなかった。「もっと(自分たちでできる)救助方法の知識を持っていれば助けられたかもしれない」と後悔をにじませた。参加者で黙とうをささげた。

 阿蘇大橋の崩落現場はほぼ当時のままだ。数メートル先にあったはずの橋はなく、向こう岸の山肌はまだ茶色くえぐれている。農学部2年の井手良輔さん(20)は「一夜明けて斜面が崩れているのを見て、地震の大きさが初めて分かった」と振り返った。最後に、駐車場にいくつもの亀裂が入ったコンビニエンスストア前を訪れ、ツアーは終了した。

 ボランティアで村を訪れ、ツアーに参加した鳥取大1年の堀内夏樹さん(19)は「(昨年10月の)鳥取地震を経験したが、災害に備える意識が低かった。防災に強い地域になれるように熊本であったことを広げていきたい」と思いを語った。

 阿蘇キャンパスが使えず、村に住んでいた学生約750人は今、熊本市内のキャンパスに通うために南阿蘇を離れている。多くの学生は地震前、住民が経営するアパートに住んでおり、東海大農学部4年の広田有柚さん(22)は「大家さんはうれしいことがあれば報告するお父さんお母さんのような存在だった」と話す。石田さんは「地震の被害だけでなく、地震前の学生と住民の暮らしぶりも伝えていきたい」と話した。

 ツアーの参加希望は「阿蘇復興への道」のホームページで受け付けている。【山下俊輔】

最終更新:4/20(木) 20:15

毎日新聞