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待機児童問題、ママ医師だって悩みます…育休中に解雇され泣き寝入りも

読売新聞(ヨミドクター) 4/20(木) 12:50配信

産婦人科医 宋 美玄

 先週末、広島で開かれた日本産科婦人科学会の学術講演に行きました。今年は、演題は出していなかったのですが、専門医の資格更新には学会への出席が必要なので、参加してきました。日帰りとはいえ、HPVワクチンのセッションなどを聴講でき、勉強になりました。

 子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するHPVワクチンについては、ワクチン接種の有効性がリスクを大きく上回るという意見が、学術的にも疫学的にも一致していることが分かりました。一部に反対意見もありますが、このまま接種の推奨を再開しないでいると、子宮頸がんが日本でだけ減らないままとなり、厚労省がその責任を問われることにもなりそうです。

 学会場では、たくさんの友人や同期の医師たちと再会し、近況を報告し合いました。私と同じくらいの世代の医師たちは小さな子供がいたり、妊娠したりしていることが多いのですが、子持ちの女性医師の生活や労働環境がかなり過酷だということを改めて痛感しました。

 まず、ご多分に漏れず保育園に子供を入れられません。その上、勤め先から突然、期限を言い渡され、「復帰できない場合は、他の人に雇用枠を譲るために退職するように」と、育休中に解雇されることがまかり通っているのです。

 法令順守から程遠いのですが、医療業界はこうした観点にとても疎いようです。労働基準監督署に相談する女性もいますが、泣き寝入りする場合が多いとのことでした。

 中には、病院長自ら自治体に「地域の周産期医療を保つためにはこの女性医師の子供が保育園に入れることが必須です」と陳情書を書いてくれたにもかかわらず、入園がかなわかった例もあったと聞きました。他の業種同様に、子供が保育園に入れないことが女性の医師たちが働き続けられない原因となっているのです。

「子供を産むと働かなくなる」「やる気がない」などと批判され…

 一度退職すると、あとで預け先が見つかったところで、なかなか常勤勤務には戻れません。生活のためにパートタイムで勤める女性医師はとても多いのですが、それまでに身につけた周産期管理や手術などの専門的技能を生かせない内容がほとんどです。また、大きな病院に勤務していても、9~17時の定時勤務や時短勤務だと重要な仕事は任されない、という悩みもよく聞きます。孤軍奮闘のワンオペ育児をしている人がとても多く、同じ医師なのに、男性とは全く違う働き方をしています。実家に頼れたり、夫が時間に融通の利く仕事に就いていたりするなど、どこか恵まれた条件がないとバリバリ働くのは難しいのです。私の場合は、一人目は無認可保育園、二人目はシッターさんにお願いしたあと、無認可保育園に入れることができました。

 女性医師は「子供を産むと働かなくなる」「やる気がない」などと批判されがちですが、産み育てながらそれまでと同様に働くには、本人のやる気や努力だけでは無理な面があります。雇用者側にはせめて法令を順守し、人材を大切にしてほしいと思います。医師不足や子育て中の医師が抱える問題の解決が叫ばれてから、もうかなりの年月がたつのですから。

宋 美玄

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

最終更新:4/20(木) 12:50

読売新聞(ヨミドクター)