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オラクルCEOのハード氏、SaaS事業、AI、そしてAWSを語る

アスキー 4/21(金) 7:00配信

米国で開催されたオラクルのHCM/ERPイベントにおいて、同社CEOのマーク・ハード氏が記者会見を行い、クラウド事業の現状からAIへの取り組み、そしてAWSなど競合他社について語った。
 データベースベンダーのオラクルが、主に買収によって業務アプリケーション群を取りそろえ、「Oracle Fusion Applications」として発表したのは2011年のことだった。そして現在、オラクルはこのアプリケーションスイートをクラウドで提供するSaaS事業へと歩を進めている。
 
 そのクラウドソリューションのうち、ERPやHCM(Human Capital Management)を中心に紹介するイベント「Modern Finance Experience」「Oracle HCM World」が、4月11日から3日間、米ボストンで同時開催された。イベントに出席したオラクルCEOのマーク・ハード(Mark Hurd)氏は、クラウド事業に関する記者向けの説明会を開催し、SaaSを中心としてクラウド事業の現状を報告した。
 

オラクルのクラウド事業は年50億ドル規模に、SaaS顧客は1万7000社
 開口一番、ハード氏は「オラクルの戦略という点で、新しいものはない」と述べた。「ここしばらくの間、戦略も戦略的方向性も変えていない。やっていることは(戦略の)実行と、それを顧客に届け、事例を増やすことだ」という。
 
 では、その「変わらない戦略」とはどんなものか。それは「市場で最も包括的なクラウドアプリケーションのセットを提供する」ことだ。そして、オラクルの業績を見るかぎり、その戦略は軌道に乗っているようだ。
 
 ハード氏が紹介した直近の業績(2017会計年度第3四半期、2016年12月~2017年2月期)によると、クラウド全体の売上高は前年同期比71%増の13億ドルで、SaaSとPaaSの部分だけを見ると成長率は86%に達している。年換算すると、クラウド事業の売上高は50億ドルに達する計算で、ハード氏は「オラクルは最も急成長しているクラウドカンパニーだ」と胸を張る。
 
 「Oracle Cloud」のサービスポートフォリオは、業務アプリケーションのSaaS、PaaS、そしてIaaSで構成される。当初はSaaSにフォーカスしてスタートしたオラクルのクラウド事業だが、最近ではIaaSに大きく注力している。
 
 共同創業者で現会長/CTOのラリー・エリソン氏が象徴的だが、オラクルは自社の事業について、競合他社と比較して語ることを好む企業だ。クラウド事業を本格化させたこの2年ほどは「SAP、IBMはライバルではない(眼中にない)」として、アマゾンウェブサービス(AWS)、ワークデイ、セールスフォース・ドットコムなどと自社とを好んで比較してきた。
 
 案に違わずこの日のハード氏も、自ら進んでクラウド市場におけるライバルたちとオラクルを比較し、競合優位性をアピールしてみせた。「AWSはオラクルよりもスケールでは勝るが、成長のペースははるかに遅い。オラクルはスケールしながら、最も成長しているクラウドカンパニーだ」。
 
 SaaS事業においては、前四半期だけで1100社の新規顧客を獲得。合計の顧客数は1万3000社を超え、2016年に買収したネットスイートの顧客を含めると2万5000社の顧客ベースになるという。
 
 クラウド市場では決して「先行者」ではないオラクルだが、ハード氏は「5年前、クラウドの売り上げはゼロだった。5年間でこの成長だ。このレベルで事業は拡張している」と、出遅れたものの事業は着実に伸びていることをアピールする。
 
 この日のイベントテーマであるHCM、ERPに絞り込んだビジネスアップデートも行った。前四半期は、HCMの売上が前年同期比106%増と2倍に成長、さらにERPに至っては280%増と4倍以上の成長を見せた。先述した1100社の新規SaaS顧客のうち、HCMが206社、ERPが564社を占める。合計顧客数はHCMが5200社、ERPが3700社となり、「ERP顧客数はワークデイの10倍」だという。
 
 オラクルSaaSの顧客には、ヒルトン、フォード、ルフトハンザといった歴史ある大企業の名もあるが、ハード氏はライドシェアリングサービスの新興企業、リフト(Lyft)を取り上げた。「リフトはデータセンターを持っていない。“CIOは誰?”と尋ねても、誰も手を挙げない。ビジネスも業務も、すべてをインターネット上で行っている」。こうした企業は増えており、Oracle Cloudを活用して急ピッチでビジネスをスケールさせているという。
 
オラクル版AIの差別化ポイントは「アプリケーションへの統合」
 オラクルは昨年秋のイベント「Oracle Open World」において、AI戦略「Oracle Adaptive Intelligent Applications(AIA)」を発表している。登場は今年と言われているが、詳細は今回も明らかにされなかった。
 
 AIに関する質問に対してハード氏は、Oracle HCMへの機械学習実装による活用例を紹介した。
 
 オラクルでは過去5年間、グローバルで毎年2万人のペースで人材採用を行ってきた。ここにコグニティブ、パターンマッチングなどの技術を適用し、出身校、前職、地域などの属性、あるいはどんなスキルを持っている/いないか、どんなオラクルのトレーニングを受けた/受けなかったか、(上司となる)幹部は誰か、開発サイクルにおける役割は何か、といったさまざまなデータをもとに、採用した人物がオラクルで成功するかどうかがわかるという。
 
 「いわゆる『良い人材』と言われる人が、自社にとっても良い人材、自社に適した人材だとは限らない。機械学習によって、自社に適したタイプとはどんな人材かを定義し、どの地区で雇用すべきか、誰を雇うべきではないか、といった助言が(AIから)得られる」
 
 こうした判断は従来、多くの人間が詳細なデータを持ち寄り、話し合って決めていたことだ。「それでもこれだ、という明確な解答は出せなかった。機械学習によって、この作業が自動化できる」。この仕組みが生産性や業績の改善、リテンションの改善につながったかどうか、今後数値化して検証していくという。また、人事分野では雇用だけでなく、キャリア開発、トレーニング、報酬など幅広い場面で活用でき、ERPにも適用できるだろう。
 
 AIAの発表時に、オラクルは「アプリケーションに統合され、提供される」点を差別化ポイントとして挙げていたが、この日のハード氏も「ポイントは機械学習そのものではなく、日々利用するアプリケーションに統合されており、ビジネスや業務をより洞察的にして、より良い意思決定を迅速に行うことだ」と述べた。
 
「データベースの移行は簡単ではない」とAWSを攻撃
 最後に、アプリケーション領域に進出するAWSについてコメントを求められたハード氏は、「(IaaSとSaaSは)まったく異なる市場だ」と述べた。「歴史を振り返ると、コンシューマー分野では、マイクロソフトやアップルといったソフトウェア企業がインフラ(ハードウェア)に移行した例はうまく行っている。IP(知的所有権)を最適化するという目的で、IPに適したインフラを構築できる。われわれも、Exadataで同じような戦略をとっている」。
 
 しかし、その逆は真ではない、というのがハード氏の主張のようだ。「アプリケーションの定義にもよるが、もしもAWSが『Microsoft Office』のようなアプリケーションを開発するつもりならば――『まあ、頑張って』とでも言おうか。アプリケーションの開発は実に難しい」。
 
 さらにハード氏は、それはデータベースの開発でも同じことだとしたうえで、AWS独自のデータベースサービスである「Amazon Aurora」や「Amazon Redshift」を攻撃した。
 
 「AuroraやRedshiftが『(Microsoft)SQL Server』からどれくらいのシェアを奪っているか――わたしの予想ではほとんどゼロだ。1(%)くらいかもしれないが。データベース市場3位の『(IBM)DB2』のシェアですら16%程度ある。(DB2は)25年前に終わっているにもかかわらず」
 
 この発言の根底にあるのは、データベースのリプレースや移行はそう簡単ではない、という見方だ。「(データベースと連携する)たくさんのプログラムとストアドプロシージャがあり、経済的に移行させるには、動かすものを制限しなければならない」「リプレースが簡単ならば、DB2のシェアはとっくの昔にゼロになっているだろう」。
 
 さらに、Redshiftはプロプライエタリなサービスであり、オンプレミスへの移行が難しいと非難したうえで、オラクルならばオンプレミス/クラウド間で双方向に移行ができるとアピールした。ここで言うクラウドにはOracle CloudだけでなくAzureやAWSも含まれており、「ライセンスさえあればどこにでも動かせる」と強調した。
 
 
文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

最終更新:4/21(金) 7:00

アスキー