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<認知症>施策に本人視点 会議に参加、意見交換

毎日新聞 4/21(金) 14:00配信

 認知症の人が、自治体の認知症施策を決める会議に、委員として参加する動きが出てきた。これまで家族や支援者が出席して本人の思いを代弁するのが大半だったが、介護する側の視点に偏りがちになる弊害があった。政策も「本人重視」に変わってきている。

 全国初の本人向けの冊子「認知症ケアパス」。医療・介護で必要となる情報を一覧化した手引書だ。仙台市が昨年3月に作った。「あなたに知ってほしい」「認知症になっても、できることはたくさんある」。認知症と告知され、悩む本人に語りかけるような構成が特徴だ。

 冊子作りには同市の会社員、丹野智文さん(43)が当事者委員として参加した。丹野さんは「自分が認知症と診断された直後は、欲しいと思う情報や支援が得られず、相談する先もほとんどなかった。本人が見て参考になる冊子を作りたかった」と振り返る。

 丹野さんは4年前、39歳でアルツハイマー型認知症と診断された。娘2人の父親であり家庭を支える大黒柱。大きな不安を抱え、相談に行った区役所では「介護保険は40歳以下の人は使えない」と言われただけ。役立つ情報は得られなかった。

 13人いるケアパス作成委員の多くは医療・介護の専門職。当初は「家族介護者向けの冊子を作りたい」という方針だった。しかし、丹野さんは「当事者が手に取って、相談窓口に行こうと思えるものが必要」と繰り返し訴え、実を結んだ。

 介護家族委員として参加した若生栄子さん(69)は「委員で意見交換する中、次第に丹野さんの意見が重視されるようになった」と話す。

 仙台市の担当者は「認知症の人は何も分からない、と思いがちだったが、丹野さんとの出会いはその認識を大きく変えた。新たな気づきを得ることは多く行政や専門職の意識も変化している」。

 地域単位でも変化している。名古屋市西区の認知症専門部会には今年度、当事者の山田真由美さん(57)が参加する。アルツハイマー型認知症で服がうまく着られないなどの症状があるが、認知症を正しく理解してほしいと活動する。「認知症の人が安心して暮らせる地域作りの契機にしたい」と意欲的だ。

 認知症ケアに詳しい認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子研究部長は「これまでの政策は本人抜きに作られていたが、今後は本人が必要なものを本人と共に作り出す必要がある。行政はただ意見を聞くだけでなく、施策に反映させていくことが重要だ」と話した。【細川貴代】

 ◇全国的にはまだ少数派

 政府は2015年に策定した認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で「認知症の人の視点の重視」を掲げ、施策の企画や立案に認知症の本人の関わりを進めている。

 しかし、一般財団法人「長寿社会開発センター」が16年度に全国の自治体を対象に実施した調査では、認知症施策に関する会議などに本人が参加しているのは6都道府県(12.8%)、7市区町村(0.7%)にとどまった。本人が集まって話し合う機会を設けている市区町村は5割を超えていた。

 仙台市の丹野智文さんは市と宮城県の両方の会議の委員を務めるが、全国的にみればまだ少数派だ。まず、行政や専門職が理解を深めることが求められる。

最終更新:4/21(金) 15:25

毎日新聞