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<釜石津波訴訟>原告控訴へ「162人の命の重み考えて」

毎日新聞 4/21(金) 21:39配信

 東日本大震災の津波で住民ら162人が犠牲になったとされる岩手県釜石市の鵜住居(うのすまい)地区防災センターを巡り、女性2人の遺族が市に計約1億8400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、盛岡地裁は21日、請求を棄却した。市が震災前、センターが正しい避難場所ではないことを十分周知していたかが最大の争点だったが、小川理津子裁判長(中村恭裁判長代読)は「市が住民を誤解させたとは言えない」として市の過失を否定した。

        ◇

 請求棄却が言い渡されると、犠牲になった幼稚園臨時職員の女性の父は法廷で天を仰ぎ、母と夫はじっと裁判長を見据えた。「亡くなった162人の命の重みを考えない不当な判決だ」。判決後、3人は代理人を通じてコメントを出した。3人は控訴する方針。

 盛岡市内で記者会見した遺族側の上山直也弁護士は「到底承服しがたい。証拠を精査することもなく、こちらの主張を一方的に排斥した」と批判。学識者らの調査委員会報告が市の行政責任を認めていたことを挙げ「200人近く避難しているのに、『住民に誤解させなかった』というのは常識的に考えてありえない。有識者や弁護士らの知見と聞き取りに基づく事実が、こうも簡単に否定されていることは怒りを覚える」と憤った。

 一方、釜石市の野田武則市長も盛岡市内で記者会見し「主張は認められたが、センターで多くの方々が亡くなったのは事実。今から見るとさまざまな対応のまずさがあった。二度と悲劇を繰り返さないよう街づくりを進めたい」と述べた。ただ「3月11日より前の状況では、(巨大津波を)想定するのは非常に難しかった」と話し、法的責任はないとの見解を改めて強調した。【小鍜冶孝志、佐藤慶】

 ◇今後は責任免れない

 米村滋人・東大大学院准教授(民法)の話 判決は、釜石市が住民に避難場所を誤解させたかどうかが証明されていないとして請求を棄却しており、市の対応に問題があったかどうかには触れていない。ただし、巨大津波を経験していない震災前の認識に基づいて法的責任の有無を判断しているので、今後同じようなことがあれば行政の責任は免れないだろう。自治体には避難場所周知に万全の対策が求められる。同時に、住民側もしっかりと確認することが必要だ。

最終更新:4/22(土) 5:27

毎日新聞