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<パリ・4人死傷>仏厳戒下、テロ防げず 大統領選に影響も

毎日新聞 4/21(金) 22:51配信

 パリが再び、テロの標的となった。フランス大統領選を目前に控えた厳戒態勢下で20日、パリ随一の観光名所シャンゼリゼ通りで警察官が殺害された。選挙運動を中止する大統領選候補者も出た。イスラム過激思想に傾倒した男の関与が疑われ、排他主義の伸長も懸念されるなか、フランス国民の“選択”にどう影響するのか。【パリ賀有勇】

 「我が国にとって重要な民主的なプロセスを何ものにも妨害させてはならない」。フランスのカズヌーブ首相は21日、仏大統領府で開かれた治安対策を巡る閣僚会議後にこう述べ、23日に迫った大統領選の第1回投票を延期する考えはないことを明らかにした。

 カズヌーブ氏は、投票日には警察官や憲兵などの治安要員を5万人以上動員し、テロに備えると強調。だが、仏内務省によると、仏本土だけでも投票所は6万7000カ所に上り、有権者の不安を完全に払拭(ふっしょく)するのは困難だ。

 北・西アフリカの旧植民地国から移民を受け入れてきたフランスでは、人口の7%以上をイスラム教徒が占め、割合は西欧で最多。英国やドイツと比べ、公共の場から宗教色を排除する政教分離の原則を徹底しており、イスラム教徒の中には一定の反発もある。イスラム過激派はこういった反発を利用してイスラム教徒の若者らに浸透、テロによってフランス社会とイスラム教徒の分断を狙っているとも指摘される。

 仏政府は2015年11月のパリ同時多発テロ後に出された非常事態宣言をこれまでに5回延長。大統領選や6月の下院総選挙での安全を確保するため7月15日まで延長して治安対策を強化している。

 捜査当局は16年11月、シャンゼリゼ通りなどで複数のテロを計画した疑いで5人を拘束。容疑者は過激派組織戦闘員と携帯電話で連絡を取り合っていた。今年2月には南部モンペリエ周辺でテロを計画していた男女4人を拘束したが、容疑者はインターネット上でテロ実行をほのめかしていた。両事件では容疑者の動きが捜査の網にかかりやすかったため、テロを未然に防げた可能性がある。

 南部マルセイユで18日、大統領候補を狙ったテロを計画したとして男2人が逮捕された。2人とも捜査当局の監視対象者で摘発の端緒は容疑者に近い人物からの情報提供だったという。

 今回の事件の容疑者も監視対象者だったとされるが、具体的なテロ計画の内容や脅威の緊急性などを、事前に何らかの方法で把握できなければ、全てのテロを防ぐのは極めて困難だ。

 ◇排他主義、伸長の恐れ 4氏激戦…23日第1回投票

 事件当時、23日に迫った大統領選に出馬する候補者はテレビのインタビュー番組に出演しており、全員が事件に言及した。

 「国民を守るために何もなされてこなかったことに怒りを感じる」。警察官と憲兵の計1万5000人増員などの治安対策を積極的に訴えてきた極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首(48)は真剣な面持ちで訴えた。

 ルペン氏と中道・右派候補の共和党、フランソワ・フィヨン元首相(63)は、事件を受けて21日の選挙運動の中止を表明するなど即座に反応した。テロに関与した二重国籍者の仏国籍を剥奪して強制退去させるなど治安対策の必要性を繰り返し訴えてきた両氏には追い風につなげたい思惑があるとみられる。

 過去にテロ事件が大統領選に影響を与えた例はある。2002年の大統領選では、ルペン氏の父でFN創設者のジャンマリ氏が予想を覆して決選投票に駒を進めた。前年に起きた米同時多発テロが、移民やイスラム教徒に排他的な姿勢を持つジャンマリ氏の躍進につながったと指摘された。

 ルペン氏は初出馬した12年大統領選の第1回投票で敗れたものの、父の得票率を上回る18%を得票。直前に南部トゥールーズで起きた移民系住民によるユダヤ人学校などの襲撃事件が影響したと言われた。

 大統領選の第1回投票は23日に行われる。11候補が立候補し、「反EU(欧州連合)」「反移民」を掲げるルペン氏が決選投票に進むかに耳目が集まっている。

 ルペン氏は、独立系候補のエマニュエル・マクロン前経済相(39)とともに選挙戦をリードしてきたが、終盤に行われたテレビ討論で他候補から移民政策などを巡って批判を浴び、勢いが鈍化。フィヨン氏と急進左派候補、左翼党のジャンリュック・メランション元共同党首(65)を含めた4者入り乱れる「前例のない五里霧中の選挙」(レゼコー紙)となっている。

 調査会社IFOPが20日公表した支持率世論調査では、マクロン氏24%▽ルペン氏22.5%▽フィヨン氏19.5%▽メランション氏18.5%--だった。

最終更新:4/22(土) 5:40

毎日新聞