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話題性より大事なのは狂気的な熱量...宇多丸が語る「タマフル」の10年

BuzzFeed Japan 4/21(金) 19:00配信

番組初期の苦労と、最大の危機

--番組は2007年スタートですが、早い段階の2009年に「ギャラクシー賞」パーソナリティー賞を受賞。それはよかったのででしょうか。それとも呪縛になりましたか。

間違いなくよかった。番組に対するこれ以上ない評価だから。決して最初から数字が良かったわけではないので、その後ろ盾があることで生き残れたのは確実にあるんじゃないかと。もらって悪いことは一つもないです。ただ、あの時くれたんなら、その後も何回かくれてなきゃおかしいぞ、とは思ってます(笑)。だって、番組のクオリティーは確実に上がっているのだから。でもまぁ、先物買いというか、これから頑張れよも込みの受賞だったとは思うので。実際、そのおかげで今も続けられているというのもありますよ。本当にあれは大きかった。なにせ最初は数字も金もついてきていないので。

--やはり最初がきつかった?

最初というか、数年は。このままだとホントに番組が終わっちゃうよってことで、「SAVE THE TAMFLE」という、番組を聴いてくれる人を増やすにはどうすればいいかリスナーにアイディアを募ったり。数字より金だ!とか言い出して(笑)、某ゲームメーカーのスポンサーをとるための勝手にヨイショ企画をやったりとか、いろいろやってました。もちろん、数字とりたいも金ほしいも事実だけど、そこもネタにする、みたいなスタンスで。

--番組には危機もあった?

一番危機感を感じたのは、番組立ち上げプロデューサーの橋本吉史が、異動で離れることになったときですね。橋本さんありきの番組だとすら思ってたから、これから成り立っていくのか?くらいの感じはありました。でも、後になって橋本さんとよく話すのは、あそこで橋本さんありきの体制から脱したのが結果的にとってもよかった。メンバーの入れ替えが可能になったことで、風通しがよくなって、番組の寿命は確実に延びた。

「バシッと決まるフレーズ、概念を思いつけたときはうれしい」

--「サタデーナイト・ラボ」で、個人としてやれてよかった企画はありますか。

絞るのは難しいけど、高橋芳朗の「ア(↑)コガレ」特集とかは、ほかの番組では「何それ?」で終わっちゃいそうな話がうちでは人気企画、みたいな部分で、「らしい」かもしれませんね。「ア(↑)コガレ」ってイントネーションを変えただけで、すごいフックになる、みたいなところもそうですし。なにかバシッと決まるフレーズ、概念を思いつけたときはうれしいですね。「疎遠になった友達=元トモ」とか。

あと、画家の黒田清輝特集は相当自信あるかもしれない。ま、僕じゃなくて東京国立博物館研究員の松嶋雅人さんが偉いんですけど(笑)。黒田清輝っていう、多くの人が「知ってるつもり」だし、評価も固定しているような人を、これまでとは違う角度から改めて見ることで、これからは黒田清輝の絵を涙なしには見れない!くらいまで、考え方が変わるっていう。ああいうのが僕は好きですね。

--逆に失敗した企画はありますか。

もちろん。前原猛(カメラマン、風呂特集に登場)が思った以上にしゃべらねぇなぁとか(笑)。でもまぁ“ちゃんたけ”は、そういう困った人感も含めて面白い、ってことなので、僕ら的にはあれはあれでありなんだけど。

あと、ライムスターがアルバム「POP LIFE」を出した時の「日本語ラップ通気取り講座」。あれは毒っ気が強すぎたのかわからないですけど、特にライムスターファンには本当に不評な特集でしたねぇ(笑)。本気で怒ってる人もいたもんなぁ。まぁ、10年もやっていれば、そりゃ当たり外れもありますよ。ハズレがなければ当たりもないわけだから。

--漫画家・今日マチ子さんとの雑誌「ユリイカ」の対談で、佐々木士郎と宇多丸は人格が違うから楽だと話されていました。ラジオパーソナリティーとしての宇多丸もまた、人格は違いますか。

人と会話する時って、距離を測りながら話すじゃないですか。でも、オープニングトークもそうですし、「ムービーウォッチメン」は特にそうですけど、あんなふうに自分の考えだけを一人で30分間しゃべり続けるなんて、普通はしない。
当然、佐々木士郎ではあり得ないですよね。素の状態で聞くと「よくしゃべるな、この人」とは思いますね。

--自分で自分のラジオを聞き返したりするんですか。

そこまで習慣化してるわけじゃないけど、酔っぱらったときとかたまに昔の放送聞いてゲラゲラ笑ってたりしてますよ(笑)。「マイゲーム・マイライフ」(タマフル後に放送される宇多丸の新番組で)を聞くと、この人よくしゃべるな、でもちょっと早口じゃない? ゲストの話にかぶっちゃってるよ、だめじゃん、とか思ったり。

でも、早口すぎるとか前のめりすぎるとかは自分でもわかってるんだけど、映画評でもたまに言っている通り、じゃあそういう欠点を完全に直せばいいのかっていうと、ヘタすると当初あったはずの良さまで消えてしまう、みたいなことって本当によくあることで。いびつさとかはあまり整えすぎないほうがいい、というのは、しゃべりだけじゃなく、創作全体に言えることだと思うんですけど。

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最終更新:4/21(金) 19:00

BuzzFeed Japan