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一歩踏み込んだスーパーフォーミュラ開幕戦6つのポイント。「自分のプライドを投げ捨ててもいいと思える相手」と山本尚貴

4/21(金) 20:54配信

オートスポーツweb

 いよいよ今週末の鈴鹿で2017年シーズンを迎えるスーパーフォーミュラ。話題の超大型新人に、新コンセプトとなったヨコハマタイヤ、そして注目ドライバーに、見逃せない戦い、決勝の懸念などなど、さまざまな視点で一歩踏み込んだ開幕戦鈴鹿の見どころをまとめた。

【写真】チームスタッフも2度のテストでその才能の高さを認めるピエール・ガスリー

■タイト日程で時差ボケ中のガスリー

 F2第1戦バーレーン大会に顔を見せ、その後のF1バーレーンテストにレッドブルから参加したピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)。

「この1週間はとても忙しい日々だったね。先週の木金とレッドブルのシミュレーターで2日間過ごして、土曜からバーレーンに行って(F1/F2を見て)、月曜から水曜はバーレーンでF1テストに参加して、木曜の朝にバーレーンを発って、昨日の夜9時にこっちのホテルに入ったんだ。時差ボケを解消するには時間が足りないよね(苦笑)。でも、今週末にはコンディションを整えているよ」
 F1とスーパーフォーミュラの違いは、「F1はタイヤのサイズが大きくて車体も幅広になって、パワーユニットのトルクも大きい。それでもスーパーフォーミュラのマシンはダウンフォースが大きくて、F1にステップアップするにはすごく適したクルマだし、いいカテゴリーだと思う」と答えるガスリー。

 コーナリング速度に違いには、「スーパーフォーミュラのマシンでバーレーンを走っていないからね(笑)」と明言を避けつつも、「やっぱりF1の方がダウンフォースが大きくてグリップも高いよね」とその違いを述べた。

 バーレーンで見た今年のF2と、鈴鹿、富士の2回の合同テストを経てのスーパーフォーミュラとの違いにもコメント。

「いちばんの違いはタイヤだね。バーレーンのF2は特にデグラデーションが大きかったけど、スーパーフォーミュラのヨコハマタイヤはグリップが安定している。シャシーはスーパーフォーミュラの方がダウンフォースが大きくて、エンジンはスーパーフォーミュラの方が遅いけど、トラクションが良くて最終的にはF2と同じレベル。その中でも一番違うのは、スーパーフォーミュラは毎周プッシュできるけど、F2はタイヤをマネジメントしなきゃいけないところだね」

 金曜日の走行はコンディション変化や、小さなトラブルがあったようで13番手でセッションを終えたが、その表情からは焦りや不安は感じられなかった。

■公式テストとまったく異なるコンディション

 ガスリーも「テストとコンディションと大きく違ったので今日のセッションは苦労したけど、明日には改善するよ」と話すように、スーパーフォーミュラ第1戦の金曜日走行は3月に行われた合同テストとコンディションが大きく異なった。3月の鈴鹿ではアンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)が1分35秒163のトップタイムをマークして、自身が2014年に記録した1分36秒996のコースレコードを更新する速さをみせたが、この日のトップタイムは同じトムスの中嶋一貴が記録した1分37秒292。テスト時とのタイム差は2秒にもなった。

 上位に入った多くのドライバーが「コンディションがテストと全然違って、フィーリングが良くなかったのに順位がよかった」と声をそろえるように、まだまだセットアップは詰まっていない様子。だが、それでも「レコードタイムは厳しい」との意見も一致しており、3月との気温の変化は今週末のドライバーとエンジニアを大きく悩ましそうだ。

 また、今季のヨコハマタイヤも昨年とはコンパウンドは同じながらも構造を変えているとのことで、ドライバーからは「昨年とは違ってタイヤが動く」とのインプレションでほぼ一致。昨年は開幕戦鈴鹿のスプーンで飛び出すマシンが多かったように、コーナリング限界域でのコントロールが難しい面があったようだが、今年のタイヤはその部分が改善されているという。タイヤの性能アップとともに、ドライバーが昨年よりも攻め易くなっているようだ。

■ひさびさ復帰の大嶋、悩む

 先日のスーパーGTでは2位表彰台を獲得し、トヨタのエース格の一角を担う存在になりつつある大嶋和也(SUNOCO TEAM LEMANS)。満を持して今季スーパーフォーミュラに復帰を果たしたが、これまでの2回の合同テストでは上位に名を残せず、苦戦が続いている。スーパーGTの活躍を見ると、このスーパーフォーミュラでの低迷は不思議だ。

「僕が乗っていた頃より、今のスーパーフォーミュラは数秒速いですよね。もちろん、クルマにはもう慣れていますよ。僕もそれなりに経験が多いですので(苦笑)。ヨコハマタイヤに乗るのもF3以来ですけど違和感はありません。ただ、クルマの最後の仕上げのセットアップが難しい。去年のチームの成績のとおり速いクルマのデータがあるわけではないですし、今年はメンバーも大きく替わってほとんどゼロからのスタート。自分も久しぶりに乗って勉強しながらなので、そこが非常に難しいです。時間を掛けたくないけど、まだ時間が足りない」と悩める大嶋。

 それでも「僕が引っ張っていかなきゃいけない」と強い責任感を見せるところに、大嶋のこれまでとの違いを見せる。新しいチームメイトのフェリックス・ローゼンクビストはまだ大嶋とのタイム差が大きく、大嶋とチームルマンの復活には、もう少し時間が掛かりそうな気配だ。

■ホンダの制御系トラブルは解決したのか?

 スーパーGT岡山では予選で1台、決勝で4台と、NSX-GT5台すべてにエンジンの制御系のトラブルを発生してしまったホンダ陣営。スーパーGTとスーパーフォーミュラは同じエンジンのHR-417Eを使用しており、このスーパーフォーミュラでのトラブルが心配されたが、金曜走行は無事に終えることができた。

 GT岡山でのトラブルの原因は、「部品の断線でした」と話すホンダの佐伯昌浩プロジェクトリーダー。トラブルが起きた部品は同じロットだったとのことで、今回は「ひとつ前のロット、過去に実績のあるロットを組み合わせてやりくりして持ってきました」と話すように、その対策がこの金曜日には奏功。予選、決勝も順調に走行できそうな気配だ。

■チャンピオン争い以上に注目の山本vsガスリー

 開幕前のテストでは鈴鹿、富士ともに首位を奪ったトムス陣営。金曜日の走行も一貴がトップに立ち、開幕前から早くも「トムス包囲網」でチャンピオン争いが展開しそうな雰囲気だが、今年のスーパーフォーミュラでもっとも注目したいポイントのひとつが、TEAM MUGENの山本尚貴vsピエール・ガスリーの対決。

 スーパーフォーミュラのチャンピオンを獲得したホンダのエースと、今をときめくレッドブルの次期F1ドライバー、ガスリーがどのような戦いをみせるのか。鈴鹿、富士のテストではガスリーがホンダ陣営トップのタイムを常に記録していたが、山本も負けじとタイムは大きくは離されてはいなかった。

 ホンダの佐伯プロジェクトリーダーもガスリーを最大限に評価。「鈴鹿、富士の合同テストを見て、初めてのクルマ、初めてのサーキット、そして初めてのヨコハマタイヤ、それを自分のものにするのがすごく早かったですよね。それにヨコハマタイヤのニュータイヤを2セットくらいしか使っていないのに、あの上位のポジションで走れるというのは、ちょっと、次元が違うなと感じました。ストフェル(バンドーン)とも同じ感じですが、ストフェル(25歳)より年齢が断然若い(ガスリー21歳)ですからね。ガスリーが25歳になったら、どんなドライバーになっているのだろう。メンタル、技量ともにすごいなと思いました」と、佐伯リーダーもそのパフォーマンスに舌を巻く。

 その一方、佐伯リーダの今季の山本尚貴への期待も高い。「このウインターテストでは山本の方には実は小さなトラブルがいくつか出ていたのですが、山本は全然、ガスリーと互角に戦えると思いますよ」と佐伯リーダー。

 当の山本尚貴も、ガスリーの実力をこれまでのどのチームメイトよりも認めている。

「非常に頭がいいドライバーですよね。才能プラス、努力するポイントが的確で、何をしたら速く走れる、何をしないと速くならないのかが頭でわかっていて、それをきちんと実行できる。ミスもないし、とにかく効率がいい。今まで僕も努力をしていなかった訳じゃないけど、彼のその姿を見て、僕ももっとやらなきゃいけないなと。逆に、もっとやれば伸びしろもあるなと感じた」と、とにかくガスリーから刺激を受けている様子の山本。

「当然、ここでやっている年数を考えると僕の方が断然長いし、年齢も上だし、プライドがないわけじゃないけど、そういうのを投げ捨ててでも彼から得られるものは全部奪いとって自分のプラスにしたい。自分がレベルアップできるなら、自分のプライドを投げ捨ててもいいと思える相手」と、チームメイトを最大級に評価している。

「これがドライバーとして求めていた2台体制の理想の姿だなと思いますね。彼はF1にいける選手だと思うし、逸材です。そんな選手と組んで負けたら自分の評価が下がるわけですけど、自分を高められるシーズンにできると思うと、今までの年にはない楽しみがあります。そういうチームメイトに巡り会えたのは大きい」と、今年は試金石となる1年になることを山本も覚悟している。

 日本のトップドライバーと、世界のトップドライバーの同チーム内の対決は、もしかしたらチャンピオン争い以上に、今年の国内モータースポーツの最大の注目点になるかもしれない。

■決勝タイヤ1本以上交換義務に関する現場の懸念

 山本とガスリーのしびれるバトルが楽しみな反面、今週末のレースで懸念されているのが決勝レースでの「タイヤ1本以上のタイヤ交換」が義務付けされること。

 200kmのレースならそもそもタイヤ無交換での走破が可能な上での義務付けとなり、スプリントの特性上、できるだけリスクを避けるため、ほぼ全車が4本や2本ではなく、『1輪のみ』のタイヤ交換になると予想されている。

 しかも、セーフティカーのリスクを避けるためにスタート直後からピットインして義務を消化するマシンがほとんどと予想され、コース上での追い抜きが簡単ではないスーパーフォーミュラの現状を考えると、そのタイヤ交換を終えた順位でレースが決まってしまうことになりかねない。

 すでにチーム側からは、「鈴鹿で4輪の1本を変えるなら、どのタイヤを変えるべきか」と言った声や、「スーパーフォーミュラはパン食い競争でいいのか」との声も聞こえている。もちろん、そんな懸念をよそに、1回20秒間、エンジンが約60馬力増となるオーバーテイクシステム(5回使用可能)の効力が発揮されるなど、今季開幕戦の鈴鹿が魅力あるレースになることを祈るばかりだ。

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