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社説[「天皇退位」最終報告]語るべきこと語られず

4/23(日) 10:10配信

沖縄タイムス

 天皇退位のあり方を検討してきた政府の有識者会議は、特例法による一代限りの退位に向け最終報告をまとめ、安倍晋三首相に提出した。

 退位後の呼称を「上皇」とし、象徴としての地位に基づく公的行為をすべて新天皇に譲る、ことなどを盛り込んでいる。

 なぜ皇室典範の改正ではなく、特例法なのか。一代限りとする理由は何か。最終報告は時間的制約もあって、本来、議論すべき本質論には踏み込まず、退位後の呼称や新たな事務組織、経費などの制度論に終始した。

 皇室の先細りを懸念し、速やかに対策を検討するよう求めているが、「女性宮家」創設などの具体策には触れていない。

 皇室典範が憲法の定める平等原則や男女平等の考えに反する、との指摘は以前からあった。だが、安倍政権は皇室典範の改正には当初から否定的で、有識者会議の最終報告も官邸の意向を忖度(そんたく)し、骨太の議論を避けた緊急避難的な内容になった。

 憲法は、天皇の地位を「国民の総意に基づく」と規定する一方、憲法の定める国事行為のみを行い、「国政に関する権能を有しない」と定めている。

 ここから生じる重要な問題は二つ。「国民の総意」をどのように実現するのか、という点と、憲法に規定されていない「公的行為」をどう位置づけるか、という点である。 国会では将来の皇室典範改正も視野に、象徴天皇のあり方について、掘り下げて議論してもらいたい。

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 天皇陛下の被災地訪問や戦没者への慰霊などの公的行為は、国民の高い支持を得ている。だが、政権の側からの天皇の政治利用については、不思議なことに、今回もほとんど議論されていない。

 2013年4月28日、サンフランシスコ講和条約が発効して61年にあたる日、政府は天皇、皇后両陛下出席の下、「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」を開いた。

 4月28日は、敗戦国日本が沖縄を米国の統治にゆだねた日、沖縄にとっては主権を喪失し軍事植民地と化した日である。安倍政権は、県民の猛烈な反対にもかかわらずあえて式典を強行した。

 式典への出席を求める政府側の事前説明に対し、陛下は「その当時、沖縄の主権はまだ回復されていません」と指摘したという(16年12月24日付毎日新聞)。

 この一件は、極めて重大な問題を含んでいる。

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 両陛下はこれまで、何度も沖縄を訪れ、さまざまな機会を利用して沖縄に心を寄せる発言を繰り返している。式典出席はそれを裏切ることを意味する。

 安倍政権は、支持基盤である保守層の意向を優先して式典を強行し、陛下を窮地に追い込んでしまったのだ。

 官邸側がこうした問題に抑制的な姿勢で臨めば問題は生じないが、国政への権能を有しない天皇が、公的行為への出席を巡る内閣の助言に逆らうのは難しい。

 求められるのは国会の監視機能の強化である。

最終更新:4/23(日) 10:10
沖縄タイムス

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