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漆と明治期の蔵が共鳴 金沢美大・田中教授、珠洲で制作準備

4/23(日) 1:49配信

北國新聞社

 9、10月に珠洲市で開催される奥能登国際芸術祭(北國新聞社特別協力)に向け、金沢美大教授の漆芸家田中信行さん(57)は22日、同市野々江町の蔵で制作準備を始めた。明治初期に建てられた蔵と、屋内のアート作品が共鳴する空間に仕上げる。建築と漆の質感を組み合わせた作品の制作は、田中さんの長年の夢だった。田中さんは「漆と人間の関係の原点を示したい」と意気込んでいる。

 田中さんの作品は9月3日~10月22日の芸術祭期間中、野々江町にある広さ90・5平方メートルの蔵の1階部分で展示する。

 田中さんは「広すぎず、狭すぎない。奥能登の地域性を生かして、自然と人間、物質と精神の関係を掘り下げたい」と話す。作品のイメージは少しずつ固まってきているといい、5月中に制作を始める予定である。

 東京生まれで、2000年から金沢美大に勤務する田中さんは、人間の皮膚を思わせるしなやかな質感を持った漆のオブジェで定評がある。国内のほか、米国や中国で作品を発表し、12年には一線級の美術作家を顕彰するMOA岡田茂吉賞を受けている。昨年4~7月に石川県内では初となる個展(本社後援)を金沢市の金沢アートグミで開いた。招待され、芸術祭参加を決めた。

 田中さんはかねて建築と自身の漆造形との関係に興味を持ち、鈴木大拙館内に禅の哲学に呼応する漆の空間を造れないか金沢市に働きかけたこともある。「珠洲市の皆さんが探してくださった場所であり、建築空間との関係を考える第一歩としたい」と語った。

 22日は、田中さんや金沢美大の学生、野々江町の住民、芸術祭事務局のスタッフら約15人が手分けして作品の「舞台」となる蔵の清掃に取り組んだ。

 蔵を所有する元教員、橋元繁幸さん(62)によると、明治初期に建てられたといい、昭和40年代まではみそや漬物を保存するために使われていた。橋元さんは「近いうちに取り壊そうと思っていた蔵が、展示空間として生まれ変わるのはうれしい」と歓迎している。

 芸術祭は現段階で10カ国・地域の31人のアーティストが参加予定で、今後、アーティストによる制作準備が本格化する。

北國新聞社

最終更新:4/23(日) 1:49
北國新聞社