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財政赤字を強く懸念する人はトランプ政権を批判できないはず

4/24(月) 11:30配信

ZUU online

シンカー:対外収支が持続不可能な「無責任」な運営になっていれば、通貨価値が大きく下落し、それが大幅なインフレにつながる。財政収支が持続不可能な「無責任」な運営になっていれば、総供給に対する需要超過幅が大きくなり、それが大幅なインフレにつながる。言い換えれば、「無責任」な運営になっているのかは物価が目安である。インフレが問題化していないばかりか、逆にデフレ完全脱却を目指す政府・日銀の方針の中で、財政赤字を過度に懸念し、財政収支の黒字化による「リカーディアン型」の安定化を拙速に推進することは非合理的である。現状では、財政収支に対する考え方と、対外収支に対する考え方が、ダブルスタンダードになっているような論調が多くみられる。米国の貿易赤字と日本の財政赤字ともにいまのところ強い懸念は必要ないというのが、シングルスタンダードな回答であろう。日本の財政赤字を強く懸念するのであれば、貿易赤字を問題視するトランプ政権の方針を、経済の本質がわかっていないなどと、批判したり嘲笑したりはできないだろう。貿易赤字を強く懸念し保護主義が強まれば、生産性低下によりインフレが悪化することになる。財政赤字を強く懸念し財政緊縮主義が強まれば、総需要の不足によりデフレが悪化することになる。両者とも経済パフォーマンスの悪化が対外・財政収支の悪化に結局つながってしまうことになる。

公的債務は、将来の増税や歳出削減によって返済する方針を持っている政府は「リカーディアン型」である。

一方、将来の増税や歳出削減だけではなく、中央銀行のシニョレッジ(通貨発行益)、インフレ、名目GDPの拡大によって、実質的な公的債務の負担を無くしていこうとする方針を持っている政府は「非リカーディアン型」である。

注目されている物価水準の財政理論(FTPL)は「非リカーディアン型」の財政運営とインフレの関係を説明した理論ということになる。

「非リカーディアン型」は「無責任」な財政運営につながるとして、FTPLに対する拒否反応は大きいようだ。

同じことが対外収支に関しても言えるのか考えてみた。

対外債務は、将来の国際経常収支の黒字で返済する形になっていれば「リカーディアン型」である。

一方、将来の国際経常収支の黒字だけではなく、中央銀行のシニョレッジ、または海外からの持続的な借り入れによって、実質的な対外債務の負担を安定化する形になっていれば「非リカーディアン型」である。

通貨が固定相場制となっていれば前者となるしかなく、変動相場制であれば一般的には後者となる。

米国は恒常的に経常収支は赤字であり、対外債務を積み上げ続けているが、これは基軸通貨としてのドルの供給を意味し、そのシニョレッジにより安定していることはよく知られた事実だ。

この一般的な後者の形は「非リカーディアン型」でありFTPLと実質的には同じであるが、「無責任」な対外収支運営であるとして、拒否反応が起こることはないようだ。

逆に、経常収支の一部である貿易赤字を問題化し、その削減を目指すトランプ政権の方針に対する批判が大きい。

対外収支が持続不可能な「無責任」な運営になっていれば、通貨価値が大きく下落し、それが大幅なインフレにつながる。

財政収支が持続不可能な「無責任」な運営になっていれば、総供給に対する需要超過幅が大きくなり、それが大幅なインフレにつながる。

両者とも、金利が高騰することも共通である。

言い換えれば、「無責任」な運営になっているのかは物価が目安である。

日本の場合、1990年代から企業貯蓄率は恒常的なプラスの異常な状態となっており、企業のデレバレッジや弱いリスクテイク力、そしてリストラが、企業と家計の資金の連鎖からドロップアウトしてしまう過剰貯蓄として、総需要を破壊する力となり、内需低迷とデフレの長期化の原因になっていると考えられる。

インフレが問題化していないばかりか、逆にデフレ完全脱却を目指す政府・日銀の方針の中で、財政赤字を過度に懸念し、財政収支の黒字化による「リカーディアン型」の安定化を拙速に推進することは非合理的である。

企業貯蓄により財政ファイナスは容易であるばかりか、しっかりとした財政赤字がなければ、総需要の不足とマネーの縮小により、デフレはスパイラル化するリスクが大きくなる。

現状では、財政収支に対する考え方と、対外収支に対する考え方が、ダブルスタンダードになっているような論調が多くみられる。

米国の貿易赤字と日本の財政赤字ともにいまのところ強い懸念は必要ないというのが、シングルスタンダードな回答であろう。

日本の財政赤字を強く懸念するのであれば、トランプ政権の方針を、経済の本質がわかっていないなどと、批判したり嘲笑したりはできないだろう。

米国の貿易赤字を強く懸念し保護主義が強まれば、生産性低下によりインフレが悪化することになる。

日本の財政赤字を強く懸念し財政緊縮主義が強まれば、総需要の不足によりデフレが悪化することになる。

両者とも経済パフォーマンスの悪化が対外・財政収支の悪化に結局つながってしまうことになる。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

最終更新:4/24(月) 11:30
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