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太陽電池の技術動向最前線:結晶Si、薄膜で高出力化

4/24(月) 20:30配信

投信1

投信1編集部によるこの記事の注目点

 ・ 現在の平均セル効率は単結晶が21.5%、多結晶が19.7%。チャンピオンセルの効率は単結晶が22.0%、多結晶が20.9%だが、単結晶で24%が当面の目標となっています。
 ・ モジュール出力は単結晶が305W、多結晶が285Wだが、チャンピオンモジュールの出力は単結晶が321W、多結晶が301Wです。
 ・ 2016年のモジュール出荷トップのジンコ・ソーラー(中国)は、結晶Siの高効率技術としてPERC、n型両面受光セルなどを紹介し、今後は多結晶も検討するとされています。
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リード エグジビション ジャパン主催の「PV EXPO 2017(17年3月1~3日)」のレビュー最終回では、専門技術セミナーのトピックスを紹介する。

結晶シリコン(Si)では、ハンファQセルズ(韓国)がPERC技術を導入したQ.ANTUMの最新動向を紹介した。

Q.ANTUMは裏面反射、ローカルコンタクトにより、光吸収の増大、裏面再結合の抑制、高い安定性、費用対効果を実現している。2011年から多結晶セルへの導入を開始したが、16年から単結晶の市場投入も開始した。

p型単結晶ではボロン・酸素複合体によるLID(光誘起劣化)の問題が指摘されているが、Q.ANTUMでは、ボロン・酸素複合体を不活性化することでLIDを抑制している。一方、多結晶PERCセルでは温度上昇した際にLeLID(光・高温誘起劣化)が発生するが、Q.ANTUMは劣化がなく、発電量も安定しているという。

現在の平均セル効率は単結晶が21.5%、多結晶が19.7%、チャンピオンセルの効率は単結晶が22.0%、多結晶が20.9%だが、単結晶で24%が当面の目標だ。

モジュール出力は単結晶が305W、多結晶が285Wだが、チャンピオンモジュールの出力は単結晶が321W、多結晶が301W。今後、マルチバスバー、ハーフカットセルなどの採用でモジュール(単結晶、60セル)出力350Wを目指す。

16年のモジュール出荷トップのジンコ・ソーラー(中国)は、結晶Siの高効率技術としてPERC、n型両面受光セルなどを紹介した。同社は現在、単結晶PERCを市場投入しているが、今後は多結晶も検討する。

ヘテロ接合を組み合わせたn型両面受光セルを開発しており、セル効率24%を目指す。セルを半分にカットしたハーフカットセルも単結晶、多結晶に適用しており、モジュール出力で5Wの向上が見込めるという。

また、モジュールの高出力技術として、白色EVA、LCF(Light Capture Film)、LCR(Light Capture Ribbon)を提案している。白色EVA、LCRはすでに一部で実用化しており、裏面にテクスチャーPETを入れた光閉じ込め技術のLCFも17~18年の実用化を予定している。

パナソニックは、HITの開発動向を説明した。HITはi型アモルファスSiによる簡易で効率的なパッシベーションを実現している。PERCセルとは異なり、表面、裏面のいずれも全面でパッシベーションしているのが大きな特徴だ。

10cm角で変換効率24.7%、モジュール変換効率は23.8%だが、バックコンタクトを組み合わせたHBCセルでは25.6%を実現している。

薄膜系では、ファースト・ソーラーがCdTe、ソーラーフロンティアがCIGS、アルタ・デバイセズがGaAsの最新トピックスを紹介した。

ファースト・ソーラーは累積17GW超のCdTe太陽電池を販売。日本市場には13年に参入し、富山、石川、栃木、福島などで多くのプロジェクトを展開中だ。

同社は均一性と大面積を両立するVTD法でCdTe層を成膜している。封止材はポリオレフィンを採用しており、ARコートで反射率を低減している。ガラス基板投入からモジュール完成までは約3時間半だ。

裏面電極界面へのp型ZnTeの挿入、CdTe層高品質化によるライフタイム改善、グレーディング技術によるIR感度の向上などで、22.1%の世界最高効率を達成。量産モジュールの効率は16.8%だ。18年には、出力420Wの大型モジュール(1×2m)を市場投入する。

ソーラーフロンティアは世界60カ国でCIGS太陽電池を販売しており、累積出荷量は4GW。CIGS層はセレン化硫化法で成膜している。希釈したセレン化水素ガスを使用するため、セレン使用量の大幅削減が可能という。

CIGS層形成後、CBD法でn型高抵抗性バッファー層(Zn系)を形成し、pnヘテロ接合を形成。さらに、MOCVD法でn型透明導電膜(BZO)を成膜する。BZOは低いシート抵抗と高移動度を実現している。17年2月には30cm角でモジュール効率19.2%を達成しており、17年度中に量産モジュールで効率16%を実現する。

一方、リサイクル技術については400℃以上、500℃以下で加熱してEVAを加熱蒸発および分離する「カバーガラス分離法」を開発している。

アルタ・デバイセズは、08年の設立で、13年からGaAs太陽電池の市場開拓およびパイロット生産を開始。14年には中国のハナジーグループの傘下となり、15年から商業生産を開始している。現在の生産能力は数百kW程度だが、17年にはこれを1MWまで拡大する計画だ。

GaAsはMOCVDで成膜。GaAs成長基板上で成膜して、セレクティブエッチングで剥離することで発電素子を作製している。現在、シングル接合で28.8%、タンデム型で31.6%の変換効率を達成しており、いずれも世界最高効率である。モジュール効率は24.8%で、これも世界最高効率だが、セル接続技術の最適化で、さらなる効率向上を目指す。

一方、量子ドットが発する光ルミネッセンスを利用した集光器システムも提案している。シリコンとのタンデム型で30%超の変換効率を狙っている。

九州工業大、早稲田大、SKKU(韓国)はペロブスカイト太陽電池(PSC)の研究動向を紹介した。九州工業大は鉛フリーのスズ系PSCを開発しているが、スズ系の高効率化にはチタニア界面制御が重要と指摘。スズのみでは効率は6.4%にとどまるが、最適化で鉛系よりも高効率が狙えると説明した。

早稲田大は、高機能ホール輸送材の探索に取り組んでいる。独自調整のspiro-OMeTADと3混合カチオンを用いたPSCで効率20.3%を実現している。SKKUは、ITO代替としてグラフェンを検討しており、グラフェン/PEN基板で500時間の安定性を確認している。また、PSCのコスト低減には金のリサイクルプロセス確立が必要とし、溶液から鉛成分を除去するリサイクル技術も開発している。

資源総合システム、KIBコンサルティング、AECEAはPV市場の動向を解説した。資源総合システムは16年のPV導入量75GWに対し、17年は成長が鈍化するが、20年に向けて導入量は増加すると予測している。16年の生産量は90GWに達したが、17年は供給過剰で価格下落が加速すると指摘した。17年をいかに乗り越えるかが、18年以降の成長につながりそうだ。

KIBは米国市場の現況を紹介した。米国では、政府はITC(投資税額控除)、州レベルではRPS、ネットメタリングなどによるPVの普及が進んでいる。RPSは29の州が導入済み。米国ではすでに、ITCがなくてもPVが最安電力になっているという。ITCの継続や州レベルで導入が進んでいることから、トランプ政権下でもPVの普及拡大は継続すると分析した。

AECEAは成長著しいインド市場について、地上設置は無制限、屋根置きのポテンシャルも124GWあると説明した。入札制度の導入で価格は6セント/kWhまで下がっているが、施工品質の悪化も問題となっている。セル生産能力は2.8GW、モジュール生産能力は8GWあるが、稼働はいずれも半分程度にとどまっており、今後は国内生産が課題になると付け加えた。

電子デバイス産業新聞 記者 松永新吾

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最終更新:4/24(月) 20:30
投信1