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前例見ないトルコの大統領権限の強化 エルドアン独裁へ

4/24(月) 16:00配信

ニュースソクラ

憲法改正で、トルコはどう変わるか

 4月16日、エルドアン大統領の独裁政治を可能にする憲法改正に関する国民投票が行われた。

 結果は99.45%の開票段階で賛成が51.37%、反対が48.63%という僅差で大統領制の強化が決まった。しかし、イスタンブール、アンカラ、イズミックの三大都市では反対が賛成を上回る薄氷の勝利であった。

 イスタンブール市長として活躍したエルドアンがイスタンブールで敗北したのは初めてのことである。またすでに最大野党の共和人民党が不正選挙であるとの異議を訴える動きもある。

 新憲法における大統領制の強化の中身は、

(1)大統領は閣僚を含む政府幹部を直接指名できる
(2)1名ないし複数の副大統領を置くことができ、大統領がその指名権も持つ
(3)首相職を廃止する
(4)大統領が裁判官人事に介入することを認める
(5)大統領に議会解散権、戒厳令の発布権限を与えるなどである。

 これで2019年の大統領選挙後、トルコには国家元首と行政の長を兼ねる「強い大統領」が実現する。

 建国の父アタチュルクでさえ大幅に凌ぐ独裁政権となることに内外から批判の声は強い。エルドアン大統領自身は「フランスや米国の大統領制に倣ったもの」と述べているが、権力に対するチェック・アンド・バランスが全く効かないトルコ新憲法の大統領制は前例を見ないものだ。

 10年以上首相の座にあったエルドアン大統領は2014年の就任以来、大統領権限の強化を公然と狙ってきた。新憲法により2019年から29年まで大統領の座に留まることができる。さらにエルドアンが立ち上げた与党AKPの領袖として立法府も意のままにして行政、立法、司法の三権に君臨することになる。

 もっとも、現在でも実質的にエルドアンの意のままにならないことはなく、その権力基盤を追認したのが今回の憲法改正の国民投票だという見方すらある。

 内政面では国民投票でも反対派の見方を紹介するようなメディアの報道を制限し、反対集会も規制してきたように強権的な政治が続こう。昨年7月15日のクーデター未遂事件では数万人の逮捕者を出し、10万人に及ぶ軍人、警察官、教員らを追放した。今後は政府幹部、裁判官の人事権まで入手したエルドアンが、首謀者と名指しした米国亡命中のギュレン師の影響力をそぐために法曹界、役人などの締め出しを強化していくであろう。

 エルドアンが国民の幅広い支持を得てきたのはトルコ経済の高度成長にあった。今後もトルコ経済の活性化も公約しているが、その一方で中央銀行の利上げを強く牽制するなど、現在でも中銀の独立性などには全く顧慮していない。

 トルコ経済もかつての6~8%の実質成長を続けるといった高度成長から2%台の成長率に低下している。経常収支の赤字拡大に加えて二桁代のインフレに見舞われる苦境にある。格付け機関などの厳しい見方も変わらないであろう。エルドアンが今回の国民投票で60%を上回る支持を目標としていたのが果たせなかったのには国民経済の悪化がある。この立て直しが急務である。

 対外面ではEUとの関係は悪化しよう。欧州ではオランダなどが投票権を持つ在外トルコ人への情宣に努めようとした閣僚の入国を差し止めたように独裁を試みるエルドアンに対する反感は強い。

 またシリア難民をトルコで足止めさせる代わりにトルコ国民のビザなし入国を認める、さらには長年の懸案であるトルコのEU加盟交渉も棚上げされる可能性が大きい。とくにエルドアンは死刑の復活を公言しており、もしそうなればEU加盟はますます困難となろう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:4/24(月) 16:00
ニュースソクラ

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