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こんな先生に教えてほしい!一人ひとりのコミュニケーションを重視する英語の授業

4/25(火) 16:00配信

ベネッセ 教育情報サイト

毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ています。そして、先生方から授業への想いを聞いています。小学生から高校生、そして、先生や保護者のかたに役立つ教育番組を制作するためです。その中で、「こんな先生に教えてほしい」と思った先生方のことを書かせていただきます。

京都市のA先生は、小学5年生の英語活動の一環として、市内の小学校を回り、授業を行っています。子どもたちとは初対面に近い状態です。A先生の目標は、たくさんの英語を聞き、恥ずかしがらずに大きな声で話すことです。それが、小学校英語の第一歩と考えています。今回は、人と人とがコミュニケーションする時に欠かせない言葉の「お願いしますPlease(プリーズ)」と「ありがとうThank you.(サンキュー)」を軸にした授業です。ポイントは、ゲーム感覚で取り組みながら、随所に、「Please」や「Thank you.」を使う場面が設定されていることです。

授業は、まず、子どもたちの名前をアルファベットで書いた名札を配ることから始まりました。ここで、先生は、名札を一人ひとりに手渡していきます。これはなぜだかわかりますか?

先生は、渡しながら、子どもたちの反応を見ています。大きな声で、「Thank you.」と言えるかどうかを確かめているのです。先生は、「Thank you.」と声が出るまでは名札を渡しません。もじもじする子には、先生は、ジェスチャーで「何か言うことあるでしょ」と可愛らしく、ユーモラスさを加えて伝えます。この楽しげな雰囲気を生み出せるのは、A先生ならではの持ち味なのでしょう。恥ずかしがって言葉が出ない子もやがて声に出します。

また、元気がなさそうな子には「How are you today?(今日の気分は?)」と尋ねます。そして、心配するだけでなく、「ちょっと大丈夫?」という感じで、ほっぺを触るなどのスキンシップがセットになっています。これを自然にできるのも先生の技量です。そして、これは、教室に安心感を生み出していました。

子どもたちは、敏感なので、わざとらしいと、すぐにわかってしまいます。

授業の達人の条件のひとつに、自分のキャラを生かしているというのがあると思います。
先生は、この作業をしながら、恥ずかしがって言葉が出ない子や目を見てハッキリ答える子など、反応の違いを確かめながら、個性を生かす方法を探っています。ちなみに、翌日に行われた授業では、教室の前で子どもたちを迎え入れる時、名前を呼びながら迎え入れていました。もしかしたら、子どもたちの名前と顔を早く一致させる作業だったのかもしれません。

名札を配ったあとは、そこに書かれたアルファベットを使った授業が始まります。名前にHがつく人は? Aがつく人は? Iは? Mは? Kは? と聞きながら、HAIMKNRSTW の文字を選び、黒板に貼ります。そして、「何個ある?」と聞きながら、みんなで、英語で数えます。10枚あります。

次の指示は、「Close your eyes.(目を閉じて)」
でも、子どもたちには通じません。すると、先生は、これをジェスチャー付きで、連呼します。わからない子には、そばまで行って、「Close your eyes.」と繰り返します。繰り返すうちに子どもたちが、友達の様子を見て、気付き、まねをし、体で理解するのがねらいです。

そして、今度は、「Open your eyes.(目を開けて)」。セットで言葉を伝えることで、強く印象に残るようになります。目を開けて、黒板の文字を数えると9枚になっています。そう、先生が1枚隠したのです。そして、隠した文字をあてます

再び「Close your eyes.」と「Open your eyes.」を繰り返し、さらに、今度は2枚隠します。「One, easy.(1枚は簡単)」「Two, easy.(2枚は簡単)」「Three, OK?(3枚はどう?)」 「Challenge!Three.(挑戦して!3枚)」。子どもたちは、状況をなんとなく察して、自然と言葉を理解していきます。

英語を聞く姿勢ができたところで、続いては、ジャンケンゲームです。ルールは、1人2枚のカードを持って、教室内を歩き、出会ったら向き合って、お互いにHelloとあいさつして、ジャンケン。勝ったら1枚もらう。大事なのは、この後です。もし、カードが無くなったら先生の所にもらいに行きます。つまり、このゲームには、「Please」や「Thank you.」を言うきっかけが仕組まれているのです。

ここで、A先生がうまいのは、カードがなくなった時の指示の仕方です。先生に「Cards please.(カードください)」と言って、みんなで練習した後、「Cardくれやー」はNGと伝えるのです。このNGの例をセットで伝えることで、指示は、より明確化されます。そして、「Cards please.」と言ってカードがもらえたら、「Thank you.」というのが決まりとなります。この2つの言葉が自然と出てくるようになるまで授業が続きます。

そして、「How many cards did you get?(何枚カードを持っている?)」と数えてみます。自然と英語で数え方、数字の読み方が身に付いていきます。

使う場面を何度も何度も用意し、意識して使うことで、暮らしの中にも「お願いします」や「ありがとう」というひと言があることを大切に感じることが、先生のねらいなのです。教え込まれてではなく、自分たちで体験することで吸収する授業は、見ていて楽しく、受けている子どもたちは、もっと楽しいだろうなと感じました。

(筆者:桑山裕明)

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