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『月刊ムー』編集長が八咫烏や陰陽五行の伝説を語る! 『ArcheAge』レイドボス“リーウー”は古代の信仰と密接につながっていた!?

4/26(水) 17:02配信

ファミ通.com

文・取材:ライター ぱんちょ、撮影:編集部 ミス・ユースケ

●未確認生物のエキスパートが石元Pと対談
 ゲームオンが運営する『Archeage』は、壮大な世界観とコンテンツの中でプレイヤーが思い思いの生活を送れるPC用MMORPG。2017年4月26日にアップデート“Archeage3.0 蒼翼”が実施され、新たなレイドボスとして3本足の巨大怪鳥“リーウー”が登場した。

 謎多き巨大な“未確認生物”の到来を受けて、ゲームオンは緊急記者会見を開催。未確認生物や超常現象の専門誌『月刊ムー』の編集長を務める三上丈晴氏をゲストに、『ArcheAge』日本運営プロデューサー・石元一輝氏との対談からリーウーの手がかりとなりそうな伝説、伝承を紐解くこととなった。

 三上編集長ならではの奥深いテーマが続々と飛び出した対談の模様をお伝えしていこう。

●古代より続く3足鳥“ヤタガラス”伝説
石元一輝氏(以下、石元) 本日はリーウーの正体解明にご協力いただきありがとうございます!
 早速なんですが、リーウーの大きな特徴として、3本足の鳥という点が挙げられます。三上さんは、3本足の生物と聞いて思い浮かぶものはありますか?

三上丈晴編集長(以下、三上) 3本足の生物と言えば、やはり日本神話、日本建国において大きな役割を果たす霊長“ヤタガラス”でしょう。これは3本足をもつカラスで、日本サッカー協会のエンブレムにも使われています。

石元 有名な生きものなんですか?

三上 日本のシンボルといっても過言ではありません。日本の国旗、日の丸は太陽を表していることからわかるように、日本はもともと太陽の国なんですね。そして、日本神話における太陽の神様、天照大神の子孫が天皇家であると伝えられています。
 その天皇家の初代、神武天皇は九州でお生まれになって、東で大和朝廷を開くことになるのですが、瀬戸内海を通って畿内に入るには“長髄彦(ながすねひこ)”という地元の豪族が障害となったのです。そこで、紀伊半島、いまの熊野あたりから迂回して大和を目指すのですが、密林と山の険しさで道に迷ってしまう。
 そのときに天照大神の使いとして颯爽と現れた巨大なカラスこそがヤタガラスなんです。

石元 ヤタガラス自体もリーウーのように巨大なんですね。

三上 巨大です。ヤタガラスの“ヤタ”というのは“八咫”と書いて、長さを表します。八尺と同じ意味で、それほど大きなカラスであったと。同様に大きな鏡として“八咫の鏡”という神器もありますね。
 ともあれ、そのヤタガラスが道案内をすることで、神武天皇が畿内に入ることができたんです。そして最後の戦いで勝利して、大和朝廷を開くと。

石元 そんなエピソードあるんですね。カラスというからには、やはり黒い姿なのでしょうか?

三上 そうですね。日本神話は古事記や日本書紀に記されていますが、霊鳥としてのカラスは日本のみならず、東アジア全域に古くから語られています。“淮南子(えなんじ)”や、“山海経(さんがいきょう)”という中国の古文書に登場する3本足のカラスが代表的でしょうか。
 中国で“金烏(きんう)”と呼ばれるこのカラスは、太陽の中にたくさん住んでいると記されています。恐らくですが、太陽を観測したときに見えた黒点をカラスに見立てたのでしょう。

石元 そんな古くから太陽の黒点が観測されていたんですか!?

三上 水の中にスミを入れて、そこに写った太陽を観測する、といった方法で、古くから黒点の存在は知られていました。また、“太陽”の対となる“太陰”とされていた月にはウサギやカエルが住んでいると言われていました。同じように太陽にもカラスがいると信じられていたのですね。

石元 なるほど、太陽に関連するとなれば、天照大神の使いに抜擢されるのも納得です。黒い動物ってなかなかいないですもんね。

三上 太陽とヤタガラスのエピソードをもうひとつ。古代中国の世界観では、太陽が昇る大地の東の果てに“扶桑”という巨大な樹木がそびえていました。扶桑にはカラスが10羽止まっており、それぞれが1日に1回背中に太陽を乗せて天空をめぐることで昼夜が移り変わったそうです。つまり、太陽はカラスが背負って運んでいるという思想があったんですね。
 カラスの数に合わせて太陽も10個あったんですが、古い中国の皇帝、“堯(ぎょう)帝”の時代に異変が起きて、10個の太陽が一度に昇ってしまったんです。夜がなくなって、大地は灼熱地獄となりました。
 そこで、堯帝は“?(げい)”という弓の名手に命じて、9つの太陽を射落とさせたんです。これで太陽は現在のようにひとつになったと。そして、このとき射落としたカラスを確認したところ、足が3本あったといわれています。

石元 ここでも3本足のカラスが登場するわけですね。ちなみに、10個という太陽の数に何か意味はあるのでしょうか?

三上 これは当時の暦の考えかたに基づきます。1ヵ月はほぼ30日。これを初旬、中旬、下旬という3つの旬に区切る思想があったんです。30日を3旬で割ると10日ですから、昇る太陽も10個になるわけです。10進法にも関連しているようですね。
 また、3本の足は、中国の思想の根幹にある陰陽五行説と関係があります。この世界は光と闇、プラスとマイナス、男と女のように、すべて陽と陰に分かれていると。先に紹介した太陽と太陰も当てはまりますね。
 そして、陰陽は数字にも存在しており、奇数が陽、偶数が陰とされています。太“陽”の中に住むカラスが“陰”の2本足だと具合が悪くなってしまうから、3本足になったわけです。この金烏の伝承が日本に入ってきた結果、ヤタガラスも3本足になったのでしょう。

石元 中国ということは、仏教における思想がヤタガラスの大元なのでしょうか?

三上 仏教の始まりは6世紀ですが、それ以前から中国にある道教の思想になります。さらにヤタガラスのルーツをさかのぼると、紀元前4世紀のアレキサンダー大王伝説にたどり着きます。神武天皇の道案内のエピソードと同じような話がアレキサンダー大王伝説にも残っているんです。
 エジプトを征服したアレキサンダー大王はファラオとして認められるべく、砂漠のオアシスにあるシバのアモン神殿へ向かいます。そのときに砂嵐に巻き込まれて道に迷うのですが、ここでもカラスが現れるんですよ。
 ほかにも、旧約聖書に出てくるノアの方舟がアララト山の山頂に漂着したときに、預言者のノアが最初に放ったのがカラスだった……なんて話も残っています。

●日本祭祀にまつわる鳥の一族
石元 中東から中国に渡り、日本に伝来したというのは何だか壮大ですね。現実的な話になりますが、そんなに昔から情報を伝達する人やものがあることに感心します。

三上 かなり古い段階から大陸の渡来人が波状的に日本に来ていますから。その中にも祭司がいたのでしょう。
 日本では鬼道という原始的なシャーマニズムを卑弥呼が行っていましたが、道教的、陰陽思想も渡来人によって徐々に浸透していきました。その中でも奈良時代から平安時代にかけて支持されていたものが、安倍晴明で有名な陰陽道です。
 晴明の師匠を排出した賀茂氏という陰陽家の氏族があるのですが、賀茂氏の始祖である神“建角身命(たけつぬみのみこと)”の別名がヤタガラスなんです。建国神話では動物のヤタガラスが神武天皇の道案内をしたということですが、実際は人間の神様であったと。その子孫である賀茂氏も、代々天皇家にお仕えしているのです。

石元 そうなんですか!? 天皇家は天照大神の子孫と言われていますから、その対となる影の存在が続いていることもうなずけますが……。

三上 神道と言われる日本独自の宗教では、天照大神の祀られた伊勢神宮がトップのように思われがちなんですが、実質的なトップは京都にある賀茂神社なんです。下鴨神社、上賀茂神社とありますが、これらの社司の方は基本的に賀茂氏の末裔なんですね。
 賀茂神社は京都三大祭りにも挙げられる葵祭が有名です。源氏物語においても“祭りといえば葵祭”とまで評されていました。なぜなら、葵祭は天皇の皇女が賀茂神社に巫女として奉祀されるという、非常に大きな神事が元となっているからです。
 つまり、古代より続く天皇家の祭祀を現代にいたるまで取り仕切っているわけで、神道における賀茂氏の重要性がうかがえるでしょう。
 なお、神道で儀式を執り行う賀茂氏は“鴨族”と呼ばれています。古事記や日本書紀をよくよく紐解くと、鳥の名前が付く一族や氏族は、いずれも祭祀に非常に密接に関わっていることがわかります。

●吉兆の象徴としての鳥
石元 僕はヤタガラスという存在自体は以前から知っていたんです。妖怪のような認識で。霊鳥となるともっと格が高いイメージですし、お聞きしたエピソードも壮大だったので、かなりギャップを感じました。

三上 それも間違いではありませんよ。もともと妖怪というのは、柳田国男の著作にあるように、かつては神様だったものが零落したものなんです。
 たとえば、有名な“一つ目小僧”はかつて“天目一箇神(あまのまひとつのかみ)”という一つ目の山の神様であったという説があります。ヤタガラスもかつては神の使いだったものが、妖怪や精霊として伝わるようになったと。

石元 時代を経たことによる伝承の移り変わりも影響しているのかな。ハクタクなんかも中国の王と同格の生き物と聞いていましたが、百鬼夜行では妖怪として出てきますよね。

三上 中国における神獣としての白沢(ハクタク)は、瑞兆、吉兆の象徴でもあります。徳の高い皇帝が現れるとハクタクとか麒麟(キリン)とか、そういった神獣が現れる。先に紹介した金烏も瑞兆のひとつです。
 また、金烏が止まっていた扶桑の天辺には1羽のニワトリがいて、“天鶏”と称されます。夜中の0時にコケコッコーと鳴くことで、それに呼応した地上のあらゆる鶏が朝を告げる鳴き声を出すそうです。その影響を受けてか、日本では3本足のニワトリという言い伝えもありますね。
 栃木県足利市の鶏足寺では、その昔、平将門が反乱を起こした折に、将門討伐を祈願した僧侶の夢に3本足のニワトリが出てきたそうです。その後に将門が討ち取られたことから、瑞兆として見られているようですね。

石元 “天恵を得る”の天恵とも関係あるんですか? 同じ読みですし、意味も似通ってますよね。

三上 日本では、天鶏ではなく、金鶏といわれていますから、関係性は薄いかもしれません。ほかにも金鶏は、地中に埋まっていて、鳴き声が聞こえた場所には財宝が埋まっているという、いわゆる埋蔵金伝説にも登場します(笑)。

●ヤタガラスと天狗の意外な関係
三上 太陽を呼ぶ天鶏といえば、天照大神が天岩屋にこもったときにも、岩戸の前に“常世之長鳴鳥(とこよのながなきどり)”というニワトリを集めて長く鳴かせて岩戸を開かせようとしたシーンも浮かびますね。

石元 “天鈿女命(アメノウズメ)”が来る前にはそんな試みがあったんですか。

三上 岩戸開きのシーンでは祭祀にまつわる一族の祖神がたくさん出てきて、いずれも鳥が関連しています。忌部(いんべ)一族の祖神である“天日鷲神(あめのひわしのかみ)”がわかりやすいですね。“天富命(あめのとみのみこと)”というの神も出てきます。“とみ”というのはトビのことです。
 さらに、天日鷲命は、天鈿女命の夫である“猿田毘古神(さるたひこのかみ)”であるという説もあります。天鈿女命の子孫、“猿女君(さるめのきみ)”が祭祀に関わっていることからも、猿田毘古が天日鷲命、ひいては忌部一族に関連していることがうかがえますね。

石元 その数ある鳥の一族でも、天照大神の対となる存在はヤタガラスだけなんですね、。

三上 じつは、猿田毘古もヤタガラスと同様のエピソードがあります。天照大神の孫にあたる、“瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)”という神が九州の高千穂へ渡る、天孫降臨というシーンが日本神話にありまして、そこで瓊瓊杵尊を道案内したのが猿田毘古なんです。また、猿田毘古は祭祀において神霊が乗るお神輿の行列においても、先頭に立って案内役を務めます。見たことないですか? 鼻が長く突き出ていて……。

石元 もしかして、天狗ですか?

三上 そう、天狗なんです。しかしですね、鼻の長い赤ら顔の有名な天狗は首領だけで、配下の者はみんな鳥頭をしているんです。これを烏天狗と呼び、ヤタガラスの別名なんです。
 さらに、鞍馬天狗という天狗もいます。鞍馬というのは京都の北にある地名です。その蔵馬の一帯は全部鴨族、賀茂神社の領域なんですよ。つまり、鞍馬天狗、烏天狗として語られる一族は、じつは鴨族なんです。しかも古代から連綿と天皇を支える秘密組織として実在している。この組織の名前もヤタガラスなんです!

●“リーウー”命名の由来を探る
石元 聞けば聞くほど話が広がっていきますね。月刊ムー編集長ならではの知識量にあらためて感服しました!
 ところで、リーウーは大空を飛び回るモンスターということで、戦うプレイヤーたちも戦闘中は自由に空を飛べるようになります。『ArcheAge』にとっては“奇跡”的な試みなのですが、ヤタガラスの起こした奇跡にまつわるエピソードがあればお聞かせください。

三上 ヤタガラスの奇跡といえば、変身が挙げられますね。先ほど紹介した神武天皇に道案内をするエピソードには続きがあるんです。神武天皇が大和に入ったとき、長髄彦の軍勢と戦って苦戦してしまうんです。
 しかし、最後の最後に天空から光るトビがやってきて、神武天皇の弓矢の先に止まる。この神の威光ともいえるまばゆい光に恐れをなして、長髄彦の軍勢は総崩れになってしまう。勲章のモチーフなどに使わる“金鵄(きんし)”の逸話で、これもヤタガラスの化身なんですよ。

石元 戦意を喪失する強さという点ではリーウーも同じかもしれません(笑)。全方位バリアなど、ユニークなスキルも数多く使ってくる相手なので。今回お聞きしたヤタガラスのエピソードも、機会があればリーウーへ反映させたいですね。

三上 ちなみに、このリーウーという名前はどこからきているんですか?

石元 本作は韓国で開発、先行サービスされているタイトルでして、韓国で今回のネームドモンスターが実装されたときの名称が直訳で“三足鳥”だったんです。日本にローカライズするなら“ヤタガラス”かなと思ったのですが、モンスターのデザインがカラスというより、ドラゴンに近い印象だったので、違和感が出てしまうと判断しました。
 いろいろ模索した結果、ヤタガラスに関連する単語に“リーウー”があったので、名付けた次第です。

三上 なるほど、韓国でもほかのアジア圏同様に三足烏の伝承が伝わっています。韓国の古い古墳に残る壁画には、太陽の近くに三本足の鳥が描かれていたりとかね。そこから“霊鳥の烏→霊烏→リーウー”とつけたのかなと思っていました。
 ちなみに、昔の韓国にはカラスの名を持った神様がいて、日本列島に渡ってしまったことで太陽が失われ、国が真っ暗になってしまった、なんて伝説も残っています。ここでもやはり、カラスと太陽が密接に関わっていますね。

石元 おお、そういう解釈もおもしろいですね!

●朱雀や始祖鳥にも通じるリーウーの姿に驚愕
 興味深い話をたくさん聞けたところで、三上編集長にリーウーの姿をゲームで確認してもらうことに。リーウーとの戦闘の流れは先行体験レポートにて詳細に紹介しているので、そちらも参考にしてほしい。

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MMORPGなのにシューティング!? 『ArcheAge』巨大ボス“リーウー”との対決を先行体験!

 プレイと並行して、石元プロデューサーからリーウーのバックストーリーを中心とした解説が挿入された。

 リーウーにはかつて高い魔力を備えて主人がいたが、とある敵に倒されてしまう。リーウーは数千年にもわたって主人の姿を求めて彷徨い、その末に主人を倒した敵と巡り合う。
 復讐を挑んだものの、返り討ちにあったリーウーは、今回の戦いの舞台であるリードランドで休息することに。そこからさらに2000年後、リーウーは強大な力を得る機会に恵まれるのだが、そこで力が暴走してしまい、大陸全土を崩壊に導いたという。
 そして、完全に傷が癒えたいま、レイドボスとしてプレイヤーたちの前に姿を現したということだ。ボスとしての実力も非常に凶悪で、50人ほどのプレイヤーが一丸となって立ち向かわなければ討伐は難しい。そのぶん、討伐時には“奇跡”とも言えるお宝アイテムが入手できるそうだ。

 最後に、三上編集長に実際にリーウーを目撃した感想をうかがった。

三上 想像していたよりずっと大きくて驚きました! 見た目はヤタガラスより金鵄のほうが近い印象ですね。長い体躯は、ヤタガラス同様に“陽”の鳥として位置する朱雀や鳳凰にも通じるところはあるかもしれません。こちらも太陽にまつわるものですので、3本足として伝わっているところもあるそうです。
 また、始祖鳥のような印象も受けますね。始祖鳥の学名は“アーケオプテリクス”というのですが、『ArcheAge』というタイトルに似通う点があるのはおもしろい偶然です。本日はありがとうございました!

 これを受けて、石元プロデューサーも「貴重な話がどんどん出てきて、すごく楽しかったです! 個人的にも大好きなテーマなので、今後の配信で絶対に感想言おう(笑)」とコメントを残し、大盛りあがりのうちに記者会見は幕を閉じた。

 未確認生物のエキスパートである月刊ムー編集長もうなる3本足の巨鳥リーウー。大空を駆ける壮大な戦闘を、ぜひゲームでもたしかめてほしい。

最終更新:4/26(水) 17:02
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