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復刻連載「北のサラムたち1」第8回 隠蔽される暗部(3) コチェビ少女たちとの交わり 石丸次郎

4/26(水) 17:35配信 有料

アジアプレス・ネットワーク

食糧支援活動の拠点にしていたのは、羅先市の中心にある南山(ナムサン)ホテルである。日本の植民地時代に建てられた旧日本軍現地司令部があったという堅牢な建物で、現在は外国人専用ホテルとなっている。

その南山ホテルの前の広場にも、4~5歳から中学生ぐらいまでの20人ほどの子どもたちが、朝から夕方まで何をするでもなしにたむろしていた。やはり「コチェビ」たちである。少し気候が緩んで花のつぼみが弾け始める季節になっているのに、男の子たちは毛糸の帽子を被り、女の子たちは薄汚れたマフラーを巻いたままで、持っている服を全部着込んでいるのか、綿入れの下に幾重にも垢に汚れた服がのぞいていた。

子どもたちは、ホテルに出入りする外国人(主に中国人)たちにまとわりついて食べ物やお金をねだる。闇市場と並んで南山ホテル前が、おこぼれにあずかれる場所だということを、子どもたちはよく知っているようだ。子どもたちは、一度飴玉をあげると、滞在が長くなった私の顔を覚えてまとわりついてきた。北朝鮮の大人たち、特に役人たちは、ボロを纏った物乞いの子どもたちが外国人に近づくのを嫌って、「しっしっ」と追い払ったり、ときにはビンタを張って追い立てたりした。

広場にたむろしている子どもたちは学校に行っていない様子だった。朝夕、隊列を組んで集団で登下校する制服姿の子どもたちが、コチェビたちの横をなんの関係もないように通り過ぎていく。そんな子どもたちの中に、ひときわみすぼらしい格好の女の子がいた。ひざの抜けたズボン。日がな一日広場の花壇に腰掛けてごわごわの髪をかきむしっている。どうもシラミにたかられているようだ。私はひそかに彼女を「シラミちゃん」と呼ぶことにした。
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