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英6月総選挙 メイ首相が地すべり大勝利に

4/27(木) 20:02配信

ニュースソクラ

権力掌握に打って出たメイ首相

 英国のメイ首相が4月18日、突如として6月8日に解散総選挙を実施するという発表を行った。翌日の下院では、労働党を含めて522票の賛成(反対はわずか13票)で6月8日に総選挙を2020年から前倒しすることを決めた。英国では議会の安定運営を目指して2011年の固定任期法により首相の解散権を原則として封じてきたが、議会による2/3以上の賛成を得られた場合は例外としている。

 メイ首相は総選挙を任期満了の2020年まで行うつもりがない、と再三言明していた。しかし、スノードン山のイースター休暇から戻った18日、解散総選挙を宣言するスピーチを行った。そのスピーチから引用すれば「EU離脱を巡って労働党が最終合意に反対すると公言して」「自由党が政府の活動を停止させると脅し」「スコットランド独立党が英国をEUメンバーに引き戻そうとして」「選挙を経ない上院が交渉のすべての段階で我々と戦う」という動きをしていると非難した。そのうえで保守党がわずか17議席のリードしかない現状を打破して「離脱に向けて強い政権を作るという唯一の手段として選挙の実施を不承不承ながら決断した」と国民に向けて説明した。

 解散総選挙に踏み切る決断をしたという表向きの理由は上記の通りだが、取ってつけたような理由ではある。3月に上下院ともメイ首相がEUとの離脱交渉することを承認している。真相は、今のタイミングなら指導力に欠く時代遅れの社会主義者であるコービン党首率いる労働党を蹴散らして、保守党が大勝することができるという読みから来ている。英国は単純小選挙区制であるので二大政党の労働党を打倒すれば保守党が大勝利を得られる。

 選挙予想に長ける調査会社YouGov(ユーガブ)では総選挙の議席予想を発表、早くも保守党の大勝利を予想している。下院650議席のうち保守党が382議席(現状328議席)、労働党が179議席(同231議席)、自由民主党が10議席(8議席)、スコットランド独立党が23議席(54議席)となっている。この予想だと、保守党は17議席のリードから114議席のリードに拡げることができる。3桁のリードを実現すればサッチャー、ブレア政権以来の快挙となる。

 メイ首相はこの地滑り的大勝利により野党の弱体化に持っていけると踏んだ。選挙の洗礼を浴びていない首相として軽く見られがちであったのが選挙の大勝利をもたらした党首として確固たる地位を築き、保守党内のEU強硬派を抑え込めるとも考えたであろう。早くも選挙での大勝利によりサッチャー、ブレアを上回る安定政権になるとの予想すら出ている。

 また英国の経済情勢をみてもポンド安による国内物価の上昇とそれに伴う消費・投資の減少傾向が強まりつつある。2020年まで待つよりも、景気の良いいまのうちに解散総選挙を打った方が得策でもある。こうした政治家としてのしたたかな読みが解散総選挙に踏み切らせたわけだ。メイ首相は、たなぼたで首相の座を射止めたと思っていたが、意外と大した度量の持ち主かもしれない。

 さらに前倒し総選挙の結果、首相任期は2020年から2022年まで延びることになる。EU離脱交渉は当初予想ほど容易ではなく、とても2年後の2019年3月までに交渉が妥結するのは不可能に近い、とメイ首相自身がわかっている。メイ首相の本音は、暫くはEUからの移民を受け入れて未払いのEU拠出金も渋々支払う一方で、暫定期間を設けてFTA交渉や移民制限に向けて円滑にブレクシットを進めたい、ということだ。そのためにも取り敢えず2年の任期延長により2022年まで国政に携わることができるのは大きなメリットである。

 ただEU側はメイ首相が政権基盤強化により国内の反発で立ち往生するような事態がなくなるのは歓迎であろうが、トゥスクEU大統領の発言にうかがわれるように解散総選挙そのものには総じて冷淡な反応である。メイ首相の対EU交渉のフリーハンドは広がっても、既にEUに対して正式に通告したEU離脱が止まる訳ではない。従ってEUとしては英国に続いてEU離脱を狙う国々を牽制するために選挙の結果にかかわらず「英国に対しては良いとこ取りをさせない」と厳しい対応を続けていくであろう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:4/27(木) 20:02
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