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ヤマトに宅配ビジネス見直しの着地点はあるか

4/27(木) 10:07配信

ニュースイッチ

“規模追う”モデル限界。荷物量の総量制御は難しい交渉に

 ヤマトホールディングス(HD)が「宅急便」ビジネスの見直しに着手した。インターネット通信販売の急拡大を背景に、取扱量が短期間に伸張する一方、労働需給が逼迫(ひっぱく)する状況下では、配達人員を十分に確保することが難しい。従来どおり“規模を追う”モデルは限界が訪れている。宅配ネットワークを持続成長させるには、ビジネスモデルの再設計が不可欠との考えだ。

 ヤマトホールディングスは13日、改革の基本方針を打ち出した。6月に配達時間区分を見直し、9月末をめどに、低単価・大口の顧客と荷物量制御の交渉をまとめる。27年ぶりとなる宅急便基本運賃の引き上げも決め、28日に山内雅喜社長が会見を開き、詳細を発表する予定だ。

 2017年3月期の宅急便取扱量は、前期比7・9%増の約18億6700万個。増加の最も大きな要因はネット通販の拡大だ。経済産業省が24日に発表した16年の消費者向け物販系電子商取引(EC)市場規模は、前年比10・6%増の約8兆円。今後も高レベルで成長の持続が見込まれる。

 18日、業績の下方修正を発表したヤマトHDの芝崎健一専務執行役員は「想像を超えた労働需給の逼迫、荷物の急拡大に、体制が追いつかなかった」と省みた。一方で業界からは「多くがヤマト特有の問題だ」と指摘する声も上がる。

 東京都大田区にある同社最大の物流拠点「羽田クロノゲート」。繁忙期でないこともあり、昼前の搬送ラインは荷物もまばら。ネット通販の荷物の多くが夜にかけて集荷されるためだ。夜中まとめて拠点間を輸送し、配達も翌日の夜間に集中する。

 宅配ネットワークが前提のネット通販。ライフスタイル多様化や夜型生活などが拡大を後押ししているとされる。その結果、夜間の最も遅い時間帯に配達負荷が偏重し、不在による再配達の繰り返しが、これを加速する。

 ヤマトはネット通販業者と、荷物量に応じて単価を安くする「ボリュームディスカウント」契約を結び、荷物の引受量を拡大してきた。特定大口顧客の荷物は極めて低単価。その比率が増えるほど平均単価も下落する。

 負荷変動に対応するため、配達の一部を外部委託すると、採算性は悪くなる。夜間の一定時間に負荷が集中するため、配達体制を強化しようにも必要以上に固定費がかさむ。そもそも人を確保することが難しく、しわ寄せが社員に及んだ。

 大谷友樹上級執行役員は「これまでの労働環境を抜本的に変えない限り、宅急便の事業継続性、サービス環境が維持できなくなる」と危機感をあらわにする。繁忙期の16年12月に単月の荷物量が2億3000万個を突破したことで、問題が一気に深刻さを増した。

 ヤマトは一連のビジネスモデル再設計と改革を断行し、今秋めどに新たな成長戦略を描いた中期経営計画を公表する見通しだ。宅配業界の競争下で規模拡大を進めてきた方針を転換し、適正な運賃・契約によって宅急便を再定義する。

 取り組もうとしている荷物量の総量制御は難しい交渉と見られる。持続可能な宅配事業確立のためには荷主の理解を得て、お互いに創造的な対話のテーブルにつくことが欠かせないようだ。

日刊工業新聞第ニ産業部・小林広幸

最終更新:4/27(木) 10:07
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