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今、小・中高で知財教育が活溌化している理由

4/27(木) 11:16配信

ニュースイッチ

遊んでいるオモチャは洗練され過ぎて、他者の創作物に対する配慮は生まれない

 科学技術やモノづくりにおいてイノベーションを起こすことが科学技術立国である日本にとって重要で、特許や意匠など知的財産に関する知識は必須であると言える。当然、教育機関での知財教育の重要性も増している。知財を教える大学院などの高等教育機関だけでなく、小中学校からの知財教育が活発になっている。

 発明協会は小・中学生向けにモノづくりに対する関心を高めることを目的に「少年少女発明クラブ」を提唱し活動を支援している。

 同クラブは政府の「知的財産推進計画2016」の提言のうち、「知財教育・知財人材育成の充実」の中で、地域・社会との協働の今後の方向性の例として、その活性化が明示されている。

 クラブでは自分で課題を設定しそれを解決するためにモノづくりをするという過程を踏んでいる。クラブでの活動の中で、子供たちは主体的に考えモノづくりに対する意識を育んでいく。

 子供たちを取り巻く環境は大きく変化した。青少年創造性グループの前野士郎課長は「プラモデルの製作どころか、風船を膨らませたことすらない子供もいる」と危機感を強くする。

 今、子供が遊んでいるオモチャはある意味で洗練され過ぎており、子供が工夫する余地がなくなっている。こうした環境では「工夫や達成感がなく、さらに他者の創作物に対する配慮は生まれない」(前野課長)と強調する。

  モノづくりの体験を通じ、自分自身の創作に対する誇りや、他人の創作物に対する尊敬の気持ちを持たせることは知的財産の概念の習得につながっていくだろう。

 現在、全国213カ所で約9000人の子供たちが参加。最大規模の愛知県豊田市のクラブは800人を超える。同クラブの考えに賛同した企業や自治体、個人などが運営し、企業の技術者や教員の現役・OBが次世代の人材を指導する。

 同クラブでの取り組みは1974年にソニーの創業者であり発明協会の当時の会長であった井深大氏が提唱。これに呼応し千葉市と愛知県刈谷市で最初のクラブが設立された。モノづくりの幼児教育に熱心だった井深氏は千葉市とともにクラブの設立を熱望していた。

<親子でのモノづくりの意識を高める>

 子供たちの夏休みの宿題も知財教育のきっかけとなる。クラブでの取り組みを形にするため、発明協会では年に1度、「全日本学生児童発明くふう展」を開催している。

 工作や自由研究などの課題において全国から応募される創作物を表彰。全国から700件を超える応募がある。実際にこの展示会で賞を取った作品の中には特許や意匠などを取得した作品もあるという。

 さらに優秀作品は、アジアを中心に世界十数カ国・地域が参加する「世界青少年発明工夫展」への参加資格を得られる。参加する子供たちはたくましく、「海外に行った際に現地で作品が壊れることがあるが、慌てずにさっと直してしまう」(前野課長)という。海外の人々とのふれあいの中で、知財だけでなく国際感覚を養う意味でも大きな教育効果が期待できるだろう。

 展示会での作品を見てきた経験から前野課長は「良い作品を作る子供の家庭では、親子でモノづくりの会話がしっかり行われている場合が多い」と分析する。実際のモノづくり、ひいては知的財産に関する意識教育は家庭での教育が重要であるといえる。

 親子でのモノづくりの意識を高めるため、親子で会員になることを薦めるクラブもある。また製造業の社員を親に持つ子供がクラブに入っている場合、その親にクラブの指導員になってもらうなど親子での参加を呼びかけ、クラブの質の向上を図っている。

 児童・生徒への知財教育が続くことで、イノベーションを生み出す人材の育成が期待される。

最終更新:4/27(木) 11:16
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