ここから本文です

【連載】“破天荒Bリーガー”川村卓也の「意趣タク逸」Vol.03 女子バレー選手、佐藤あり紗と対談

4/27(木) 18:40配信

バスケットボールキング

日本人初となる高卒のトップリーグ選手で、リンク栃木ブレックス(現栃木ブレックス)時代には3度の得点王に輝き“オフェンスマシーン”の異名を取る。2005年、10代で日本代表に初選出され、以降日の丸を背負って長年活躍。バスケット界に身を捧げてきた川村卓也とはいったいどんな男なのか。直言居士な彼の言葉からすべてを解き明かしていく。連載第3回目は、リオデジャネイロ・オリンピックに出場したバレーボール女子日本代表の佐藤あり紗(日立リヴァーレ)との対談。出会いのきっかけや、互いの印象、両競技の交流など様々なテーマについてトークを展開した。

インタビュー=安田勇斗
写真=山口剛生、Getty Images

――Twitterで知り合って、会うのは今日が初めてと聞きました。ファーストコンタクトはどういう形だったのでしょうか?
川村 バレーボールの日本代表戦の時期に、友人のつながりでTwitterのタイムラインに出てきて、「がんばってください」とコメントしたのがきっかけです。確かリオに行くちょっと前だったと思うんですけど、何の大会だっけ(笑)?
佐藤 確かワールドグランプリ(FIVBワールドグランプリ2016)だったかな?
川村 そう、たぶんそれ。それが最初です。

――そこからどういうコミュニケーションを取っていったんでしょうか?
佐藤 Twitterの投稿を見て、私がコメントしたり、逆に返してもらったり。
川村 それぐらいですね。

――特に憶えている出来事はありますか?
佐藤 うーん……ハイタッチ?
川村 ああ、僕がチームメートにハイタッチを求めに行って、返してくれなかったっていう動画があったんですよ。それに対してコメントをもらいました。あと、ちょっとした共通点があって、僕は中学校まで仙台だったんです。で、彼女も仙台出身で、同じ宮城出身、宮城育ちなんです。僕は五橋中学校というところで、彼女は富沢中学校というところでエリアもだいたい一緒なんですよね。だから彼女が地元の写真を上げると、懐かしいなって思いながら見てます。

――ここからお互いの競技についてお聞きします。川村選手はバレーボールを見て、気になるところなどはありますか?
川村 ブロックする時によく突き指をしないなと。ブロックって真上に手を上げるのではなく落としてますよね。素人目に見たら突き指しそうなもんですけど。
佐藤 よくしますし、骨折することもあります(笑)。
川村 そうなんだ。いずれにしても、ブロックに行く時の飛ぶタイミングとか、手を出すタイミングとか、細かいところを見てるとやっぱりバスケットとは違いますよね。バレーボールって対面で向かい合うスポーツですけど、バスケットはコンタクトが多いスポーツですし。バスケだと、相手の動きを見ながら場面場面で判断するんですけど、バレーの場合は常にプレーを予測する、先読みのスポーツなのかなと思いますね。
佐藤 そうですね。例えばブロックはタイミングと先読みが大事です。ボールと人を見て、というのは普段から練習で意識してやっています。

――では佐藤選手は、バスケットにどんな印象を持っていますか?
佐藤 川村さんが言ったようにバスケは接触が多いスポーツで見ていてヒヤヒヤします。私たちは接触があっても味方同士で軽くぶつかるぐらいで、それでも結構一大事なんですけど(笑)。あとはあんなに小さいゴールにポンポン、シュートが入るのはやっぱりすごいなと。でも男子は片手でシュートを打ちますよね。両手の方が正確に打てそうなんですけど、何かカッコつけてるみたいなイメージがあります(笑)。両手で打ってもいいんですよね?
川村 両手で打ってもいいし、女子だと両手で打つ選手も多い。まあ男女の違いで言えば、男子の方がパワーがあるから片手で打とうとする。実際、片手の方が意外と力加減をコントロールしやすくて。小さい時に指導者から、両手の方がパワーはあるけど、片手の方が距離感をつかみやすいって教わってそのとおりなのかなと。でもそれが2割で、後の8割はカッコつけなんだけど(笑)。
佐藤 (笑)。

――佐藤選手はBリーグを観戦したことはありますか?
佐藤 茨城県に住んでいて、茨城ロボッツの試合を2回見ました。あと地元の仙台89ERSと富山(グラウジーズ)の試合も行きました。休みが平日なのでなかなか見に行けないんですけど。

――Bリーグを観戦して、バレーボールの試合との違いなどは感じましたか?
佐藤 演出が違いますね。見に行った試合もすごかったですけど、他の試合では会場が暗くなるところもあると聞いたので。自分たちはそういう演出を決勝戦でしか味わえないのでうらやましいです。あとフリースローの時のブーイングも経験がないので新鮮でした。
川村 確かにバレーボールはブーイングがないね。
佐藤 はい、そういう応援は世界大会ぐらいで。海外のアウェイで試合をする時はたまにあるんですけど、国内のチーム同士の試合ではないです。だからああいうブーイングがある中で、普通は気が散ると思うんですけど集中していてすごいなと。
川村 僕はブーイングがあった方が逆に士気が高まりますね。静かなところでボールやバッシュの音だけっていうより、演出や音楽、声援などで騒がしい方が気持ちが乗るので。でもバレーでも代表戦の応援はすごいよね?
佐藤 そうですね。隣にいる選手に声が届かないぐらいなので。でも私は、ああいう応援があった方ががんばれるタイプなのでありがたいです。結構自分からも声を出してやってる方が気持ちが上がってくるので。
川村 確かにテレビを見てても、声を出したり盛りあげたりしている印象がありますね。

――お互いに聞いてみたいことはありますか?
川村 そうですね……そういえばカメラにハマってるんですよね?
佐藤 はい、好きです。(撮影カメラマンのカメラを指差し)さっきから、そのカメラいいなって(笑)。中学生の頃から撮るようになって、そういうのは持ってないですけど、写真を撮るのは大好きです。

――どんなものを撮るんですか?
佐藤 個人ブログを始めようと思っていて、人だったり風景だったり、あと食べ物を撮ったり。せっかくブログに載せるのでケータイで撮るよりも、ちゃんとしたカメラで撮った方がキレイに写るのでいいかなと。
川村 そうそう、写真でいうとオフの日の投稿で、テーピングを切ってるのを見たんですよ。
佐藤 結構前ですね(笑)。
川村 オフの日もバレーボールに時間を費やしてて感心しました。
佐藤 割とオンとオフははっきり切り分けるタイプですけど、あの日はテーピングのまとめ切りをしてました(笑)。

――では佐藤選手から川村選手へ質問はありますか?
佐藤 周りからは「破天荒」だと言われたりしてますけど(笑)、バスケットに対してはすごくアツいなと。実際に会って本当にアツい人なんだなと思いました。

――……質問ですか(笑)?
川村 変わってるって言われない(笑)?
佐藤 「バカ」とは言われます(笑)。
川村 チームではどんなキャラクター?
佐藤 結構言われるのは、見た目と中身が違うって。あとプレーしてる時と普段の雰囲気も違うって言われますね。
川村 イジられキャラ?
佐藤 基本的にイジられます。で、私がツッコむと「あいつに言われたら終わりだね」みたいな(笑)。
川村 バレーボール選手の中で小さい方だし、キャラ的にも妹的な存在なのかね。
佐藤 みんなにかわいがってもらってます(笑)。

――チーム内では年齢的に下の方なんですか?
佐藤 上です(笑)。
川村 人徳ですね。上の人なのにイジられるって、愛されてるってことだと思いますよ。年下でかわいがられるのは当たり前で、年下からそうやって接してもらえるのはそれだけ慕われているからだと。
佐藤 だといいんですけど(笑)。
川村 ちなみにリベロを始めたのはいつから?
佐藤 大学3年の後半です。もともとスパイカーで、小さい頃からスパイカーをメインにやってきました。自分で点数を取りにいくポジションから、レシーバーになったきっかけは、自分の中で何かが変わって。自分のプレーを見直した時に、レシーブだったら一番になれるんじゃないかと思ったんです。その時の監督が、私のことをリベロにしようと考えてくれていて、私自身もスパイク練習をしないでレシーバーにしてほしいとアピールしました。そしたら監督もその方がいいと言ってくれて、やるようになりました。
川村 その指導者の方がすごいよね。自分に置き換えると「お前点数を取らないでいいからパスを出せ」って言われるのと同じで、でも実際レシーバーになって最終的には日本代表に入って。そのきっかけを作った監督はすごいと思う。もちろん本人のがんばりが一番だけど、進路が決まってくる大学3年というタイミングでポジションを変えたのは本当にすごいなと。

――実際ポジションを変えて、キャリアが右肩上がりになった実感はありますか?
佐藤 そうですね。それから選抜や代表にも呼んでいただけるようになったので。監督には本当に感謝しています。
川村 もう一つ聞いていいですか? リベロだと1人だけユニフォームの色が違うけど、それはうれしい? それともみんなと一緒がいい?
佐藤 調子がいい時はユニフォームが違う方がいいですけど、悪い時は同じ方がいいですね(笑)。
川村 自分も目立つのが好きなので、いいなって思いますね。コートも大きくなくてすごく目立つから。
佐藤 私もどちらかと言うと、違うユニフォームを着てみんなに見つけてほしいって思ってます。全然抵抗はないですし、むしろ家族や友達も見つけやすいのでいいなって。でもたまに、試合直前までみんなと同じ色のユニフォームを着て、違うよって指摘されることがあります(笑)。
川村 (笑)。代表だと今は何色ある?
佐藤 白、青、赤の3種類です。メインの色はどれを着るか指示が出るんですけど、リベロはそれ以外のどちらでも良くて、自分たちで選んでます。

――佐藤選手からプレー面で聞きたいことはありますか?
佐藤 さっき接触プレーの話をしましたけど、激しく当たってケンカになったりはしないんですか? バレーボールではネットを挟んで言い合って、たまにイエローカードが出ますけど、バスケットは接触がすごく多いので。
川村 よくありますよ。やっぱり人間だから単純に仲が悪いとかもあるし(笑)、仲が良くてもヒートアップしてやり合うことがある。日本人選手もあるけど、外国籍選手は特にバチバチやり合ったりするかな。だけど終わればもちろんお互いを称え合う。自分もいろいろ言われますね。我慢してやらないといけないけど、相手の術中にハマってリズムを崩す日もある(笑)。ちなみにネット越しではどんなことを言うの?
佐藤 うーん、まあ暴言ですね(笑)。あとガッツポーズを相手に向けてやったらダメなんですよ。
川村 女子の世界って男子とはやっぱり違うよね。
佐藤 そうですね。結構気が強い子も多いし(笑)。「次ここ上がってくるよ」とか、「絶対ここ来るよ」とか挑発するようなことも言います。
川村 メンタルを削るんだね。リベロでも言うの?
佐藤 私はネットから離れてて、言っても相手選手じゃなく審判に聞こえちゃうので後ろで聞いてます(笑)。
川村 あともう一つだけ。レシーブの時に、ボールの着地点を読んで手を入れるのがすごいなと思うんだけど、結構ギリギリのところで手の甲を出して拾ったりするよね。あれは何て言う技なの?
佐藤 「パンケーキ」って言われてます。結構練習しないとできないんですよ。で、来る球によって手の平でいくか、甲でいくかを判断して。
川村 テレビで見るとボールが床に落ちてるように見えるんですよ。でもよく見ると手が入ってて。あれは本当にすごいですね。

――ではここで話を変えます。これからBリーグとVリーグを盛りあげていくには何が必要だと思いますか?
川村 男子のバスケットで言えば、まずオリンピックに出ること。結果を出して知ってもらい、がんばっている姿を見てもらうことが大事だと思います。ただオリンピックは3年後なので、それまでにやるべきこととしてリーグを巻きこんで選手やチームの露出を増やしていきたい。点を取れる選手、パスがうまい選手、めちゃくちゃ速い選手、それぞれのカラーを押しだしながら広めていきたいですね。SNSもそうだし、リーグの働きかけからテレビでの露出も増やして、ファンに根付かせていくことがまず必要かと。もちろん、そのためには選手自身も個性を全面に出していかないといけないですけど。
佐藤 私はスポーツというと野球のイメージが強いんです。それは毎日のようにテレビで試合が放送されているからだと思います。川村さんが言ったようにバレーもバスケットも、野球と同じようにもっとテレビ中継されるようになれば変わってくるはずですし、そのためには私たち選手がもっとがんばらないといけないと思います。
川村 こういう対談はすごく意味のあることだと思うんですよ。バレー選手もそうですし、野球やサッカーの選手もそう。いろいろなスポーツと関わって、競技を超えた交流を図ることでまず互いのファンが関心を持つようになりますし、両競技の発展につながっていく第一歩になると思います。だから、今日は来ていただいて本当にありがたかったです。例えばバスケットとバレーであれば、同じアリーナスポーツなので同日にクリニックを開催してもいいかもしれないですね。2面あったら1面はバスケ、もう1面はバレーみたいな感じで。参加した人にとっては一度に2つのスポーツを楽しめるし、両競技の魅力を伝える上でもいいかなと。
佐藤 私もいろいろなイベントを一緒にできたらいいなと思います。Vリーグは昨シーズン50周年で、オールスターゲームをやったり、ファンも参加できる大運動会というのをやったりしたんですけど、そういったイベントを他の競技の方たちとできたらより盛りあがりますし、いろいろな人に知ってもらうためにもぜひやってみたいですね。

――最後に今日対談していかがでしたか?
佐藤 知り合いの女子バスケット選手と連絡を取ったり、試合見に来てって言っていただいたりしていたんですけど、自分の試合と重なって行けなかったんです。こういう機会が今までなかったので、実際に対談できてうれしかったです。
川村 バスケットの選手とバレーボールの選手の対談って今までほとんどなかったと思うし、さっきも言ったように何かのきっかけにしたいですね。今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました。

取材協力=利休庵

BASKETBALL KING