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仏大統領選 メランション票がルペンに流れないか

4/28(金) 17:30配信

ニュースソクラ

自国の選挙のような興奮と警戒、ドイツのメディア

 4月24日の午後8時から、ドイツのテレビは、フランス第五共和政における11回目のフランス大統領選挙第1回投票の開票結果のなりゆきに特番を組んで取り組んだ。フランスの政治に精通する独仏のジャーナリストを総揃えにして、パリとドイツ国内各拠点を結び中継を行った。

 予想通りマリーヌ・ル・ペン氏とエマニュエル・マクロン氏が、5月7日の決選投票へ進むことになった。EU擁護派が主流を占めるドイツでは、マクロン氏が決戦投票では優勢との見方からひとまずほっとしたという空気がテレビ画面からあふれた。 

 だが、開票途上ではル・ペン氏への警戒心が噴出した。ル・ペン氏の得票数が一時的にマクロン氏を上回ったとの情報が流れると、出演者全員が凍り付き、顔色が蒼くなった場面も。特に、長年パリ特派員を務めたベテラン・ジャーナリストのヴィッケルト氏は、足元がふらつき、コメントが出てこなかったほどだ。ドイツのジャーナリズムがいかにル・ペン氏の台頭を警戒しているか、が表れている。

 結果が出た後は、第2回投票に進めないジャン=リュック・メランション氏、フランソワ・フィヨン氏、ブノワ・アモン氏が、今後、ル・ペン氏とマクロン氏のどちらを支持するかに焦点を絞り、投票結果の分析・予測に議論が白熱した。

 社会党のアモン氏、共和党のフィヨン氏は選挙結果をみて、マクロン支持を表明した。メランション氏からの支持表明はない。ル・ペン氏は反EUでは一致するメランション支持者を取り込もうと動き出したとされる。すでにメランション氏に支持を求めたとの報道もあった。ル・ペン氏は国民戦線(FN)の党首から退くと表明し、党派色を薄めようと躍起だ。

 ドイツの政治家たち、メルケル首相の率いる保守・キリスト教民主党(CDU)、連合を組む社会民主党(SPD)、リベラルな自由民主党(FDP)、緑の党、各党派は、マクロン氏が、得票率でル・ペン氏を上回った点を非常に評価している。

 よほどのスキャンダルでもでないかぎり、マクロン氏の決戦投票での当選は確実で、EUの存在持続、市場経済路線を今後も展開できると見込めるからだ。

 マクロン氏は英国のEU離脱も英国にとって非常にマイナスになるという立場。EUの加盟国の結束を維持しようとするマクロン氏は、ドイツのメルケル首相、また、対抗馬のシュルツSPD党首にとっても、引き続き信頼できるパートナーになるといえる。

 特に、SPDのマルティン・シュルツ党首は、汎EUで中道左派という点でも主張が似通う。ドイツ政界に新風を吹き込もうとする自分の存在をフランスの若いマクロン氏の姿に重ね、次期ドイツ総選挙での勝利への期待を高めている。

 ただ、マクロン氏を含むフランス国立行政学院(ENA)出身のエリートたちが、しばしば意識的に、あるいは無意識にとるフランス至上主義に、ドイツの政治家が警戒していることも否めない。第二次世界大戦後に、フランスは、EUの後ろ盾であるNATOに積極的に参加しない時期があったことを忘れてはいない。

 メルケル首相は、G20を控え、参加各国首脳のファーストレディーたちを今週からベルリンに招聘するプログラムを展開している。米国からは、トランプ大統領の娘、イヴァンカ・トランプがメルケル首相を訪問することになっている。

 メルケル政権は、昨夜のフランス大統領選挙第1回投票でマクロン首位というドイツとっては順風となるニュースにほっとしながら、イヴァンカ・トランプを通して、対米政策への和やかな雰囲気づくりにも、奔走している。

 一方で、ドイツの各界の専門家たちは、第2回投票までのこれから2週間で、マクロン氏が、フランスの社会党やその他の支持者を本当に味方につけられるかを気にしている。右翼のル・ペン氏と同様に反EUをとなえる左翼のメランション氏支持者がル・ペン氏支持に流れないかが気がかりだからだ。ロシアのプーチン大統領と近く、選挙戦資金もロシアの銀行が支援しているとされるル・ペン氏の支持拡大への警戒感はいまも、小さくはない。

 フランスの有権者が大きな政治転換を望んでいるのは間違いなく、英国EU離脱、米国のトランプ・クリントン間の大統領選にみられたような政治社会状態を大きくゆるがす結果、つまりル・ペンが当選しないかとの危機感を引き続き抱いている。

 そもそも、マクロン氏に大統領が務まるのかとの疑問もある。フランスの各政党に特に属さず、EU温存主義をとなえるマクロンは、議会を味方にできるか、微妙な情勢だ。

 問題山積みのフランスを真に改革できないとなると、米国のオバマ前大統領のように、何もできずに時をすごし、さらにフランスしいては、欧州全体の政治経済社会問題が悪化してゆくのではなかろうか、という懸念をいだくドイツ大手の民間企業のアナリストたちもかなりいる。

 マクロンの心の支えは、15歳の時に出会った、24歳年上の彼の教師であり、現在の妻、ブリジット・マクロン。5月7日まで、どのようなキャンペーンを展開するか、ドイツは、フランスの大統領選挙が、まるで自国の選挙のごとく、緊張して見守っている。

■シュヴァルツアー節子(在ミュンヘン・ジャーナリスト)
慶応大経済卒、外務省専門職として在英国大使館勤務、オックスフォード大学留学。ドイツでの日系企業勤務を経て、大手新聞の助手など務める

最終更新:4/28(金) 17:30
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